Q3 経済について学ぶ際、「地理」が大事なのはどうして?
A. 生産や取引のほとんどは必ずどこかの土地で行われる.
土地の理に即して人々が暮らしている様子を学校で習います。地理といいます。国や都市、山、河、海の名称を覚えるのは、人間一人ひとり固有の名前があるように土地により異なる理がある世の成立ちを大事にしたいから。ところが、経済や社会に法則を見つけようとすると、必然的にこの理屈を軽んじるか、無視せざるをえなくなる。「場所によるでしょう」では科学にならないからです。特効薬がどの土地の人間にも効くように、地球上、どこにでも適用できる理屈があればすばらしい。でも歴史から見えるのは、場所が違えばうまくいかなかったり、不都合になったりする経済の理屈です。経済史学では、人間の暮らしが長いこと逃れたくても逃れられない「土地の理」に適応することで成り立ってきた事実を明らかにしていきます。そうすれば、全世界共通のルールを決めるのがどれほど難しいかよくわかるし、うんと背伸びをしないと何も決められない現実を直視できる。学校で習った「地理」の勉強は、実はこの現実を理解するための最初の一歩であったことにも改めて気づくことになる。
(国連の役割が問われる2017年)
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Q2 経済を知るにはその背景や文脈が大事になるのはなぜ?
A. 人も会社も国も、お金を遣う理由は様々.
肉まん一個100円、同じ価格の解熱剤一箱と一冊の本があるとします。手持ちの300円を遣うならどのような組み合わせでも300円を失うことには変わりはない。あるお客が同じ品を300円分買うなら、空腹なのか、病気なのか、それとも退屈なのか、その客の事情はなんとなく想像がつく。ところが、空腹な客が、あえて薬や本を買ったなら、なぜそのような買い物をしたのか、訳を知りたくなる。そこで、お客の真意や置かれている状況、性格などに配慮してその背景についてじっくり調べなければなりません。お客のポケットから300円がなくなることは小学生でもわかりますが、買い物の訳について深く知るには長い人生経験が必要になりますね。
この当たり前の理屈は、経済について知ろうとする際、案外大切になる。対象が一人の消費者ではなく国や地域、政府や企業の「買い物」ならば、その背後にある政治や文化、歴史に関する広い知識がどうしても必要。背景事情が見えない経済事象はおもしろみに欠ける。試しに端午の節句に屏風なしで兜を飾ってみるとその意味がよくわかる。2017.5.1.
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Q1 経済について学ぶには「経済史」が大切になるのはなぜ?
A. 時代が変われば衣替えする経済の学び方.
野球やサッカーチームの監督が交代するとスタメンの顔ぶれも変わる。どの監督にも独自の哲学や戦術があるからです。では国を治める者が変われば各分野のキープレーヤも変わるでしょうか。歴史教科書で習うビスマルクやレーニン、サッチャーが今の日本に登場したとしましょう。各人の哲学や思想は全く違うので、政策立案のために雇われる識者の好みも変わるはず。でもだからといってインフルエンザ特効薬の効き目や、航空機が飛んだりスマートフォンが機能したりする理屈は変わるわけではないので、それらの研究に携わる人たちの「二軍落ち」はありそうにない。変わりやすいのは、政治や経済など「社会」のあり方とその原理を説くリーダーたちです。
なぜなら統治者の理想に合うように政治や経済について説明しなければ、うまく国を治めることができなくなるから。そうはいっても「本当にそうかしら」と疑う人もたくさんいるはず。だからそのことを確かめるために、統治者が変わるとどのようにして政治も変化し経済の理屈も変わっていくのか、経済の歴史を丹念に調べ納得する必要がある。むしろそうしないと、経済に関する知識の「正しさ」は、薬の効き方や、飛行機やスマートフォンの機能の「正しさ」と同じだとつい勘違いしてしまう。侍ジャパンのスタメンは、誰が監督になっても変わらないと言い張る人がいればきっと恥ずかしい思いをすることになる。
(2017年WBCでの活躍に期待)
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