大分岐
19世紀に入るとイギリス産業革命の成功を他の西欧諸国とアメリカ合衆国が追いかけることになります。その結果、20世紀には欧米諸国と他の国々の所得水準が大きく開く結果となりました。大分岐と呼ばれる現象です。
西欧諸国が地理的にも近いイギリスにすぐに追いつくことができたのはわかりますが、アメリカ合衆国の成功も、貿易及び資金面ではイギリス経済に依存し続けていたことを考えればそう不思議ではないかもしれません。
ならば、そもそもどうしてイギリス経済が最初に伸びたのか、歴史的経緯について知りたくなります。重商主義の実践や財政軍事国家の形成など国をあげての対外政策が功を奏したように見えますが、これらの政策がうまくいった背景には、どこよりも安定的に伸び続けた国内経済がありました。
その象徴的現象が、産業革命に至る約300年間(16〜18世紀)に着実に進んだイギリス社会の都市化でした。消費意欲の高まり、農業生産性の向上、高賃金経済の定着など、どれも持続的都市化に伴って発生した内国経済の成長要因です。ポイントはむしろ、これらは政府が計画したものではなかったという点です。だからこそ再現が難しく、後発工業国や発展途上国の例が示すように、他の地で試そうとしても、社会は思わぬ方向へ動いてしまうのです。
「大分岐」の様子は各国間の所得水準の比較などによってまず統計的に説明されます。ところがその背後には最初の経済成長が、いつ、どの国で、どのようにして始まり、それゆえにその後の世界はどう変わったのかを示す、決して数だけでは表せない大切な真実が隠れています。それらを理解してはじめて大分岐の本当の意味に気づくことができるのです。 2024.05.29
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参考文献
Allen, R.(2011), Global economic history : a very short introduction.Oxford.〔訳書〕
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Last updated : 2024/08/15
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