はじめに 中世ヨーロッパには土地保有の慣習に基づき農業経済に秩序をもたらす封建制と呼ばれる制度が存在しました。その歴史的意義は、国家形成を待たずして、ルールに基づく経済社会が何世紀にもわたり維持された点にあります。そのことから、封建制は西欧において市場経済が発展するための前提条件であったと見なすことができるのです。 【参照】 マナー 封建的経済秩序の成立とはいえ、ローマ帝国崩壊後における西欧の新秩序が、主に軍事的要請によって成立したことは間違いないでしょう。為政者にとって封土が必要となったのは、騎士や装備を維持するには多額の費用を要し、その財源を捻出するため、農業経済の基盤である土地に依拠せざるを得なかったからです。こうして領主(王権)と騎士との間には、封土を媒介に独特の関係が築かれ、かかる関係は制度化され、戦乱の時代であった9〜10世紀の西欧に広く定着したと考えられています。(Postan: 1972; Northand, Wallis, and Weingast: 2009)。 封建制の歴史は一筋縄ではいかないのも確かです。例えば、封土は、行政・法的サービスの提供を条件に家臣へ分配されたという見方も示されています。また、領主と農民の間の主従関係の起源は、賦役や貢納を条件に土地の貸与を認めるローマ帝国末期の土地保有の慣行に辿ることもできるとされています (Postan: 1972)。
注目すべきは、封建制の下でやがて商業の復活と長期の経済成長、ことに自治都市の誕生が見られるようになる中世ヨーロッパの経済史です。近世における大分岐と称される世界史的トレンドを生み出す基礎となった市場経済の胎動をそこに見出すことができるからです。
【参照】 「中世の封建制について学ぶ意味は何?」
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