近世経済史の講義では、16〜18世紀を近世と呼び、それ以前の時代を中世、その後の時代を近代とし、時代区分を定めています。もちろん、このような時代区分が常に妥当なわけではありません。しかし、イギリス経済史に関する限り違和感は少なく、研究者の間でもコンセンサスが得られやすいと言えるでしょう。 例えば、西ヨーロッパの総人口が増加に転じる時期や、宗教改革をきっかけに始まる国家形成の開始時期、また、長期のインフレーションのタイミングを踏まえれば、16世紀を近世最初の世紀と考えても不自然とはいえません。一方、18世紀後期から19世紀初めにかけて西欧は政治的にも、経済的にも変革期を迎えます。産業革命の時期でもあります。 1500年頃に西欧が工業化の中心地域になることを想像した者は誰もいなかったでしょう。しかし、1800年頃に生きた人々にとってそれは確信に変わりつつあったはずです。かくして、16〜18世紀の約300年間は、西洋経済史上、特別な時代であったと考えられるのです。2024.09.29 |