はじめに |
はじめに経済史の講義では、16〜18世紀を近世と呼び、それ以前の時代を中世、その後の時代を近代とし、時代区分を定めています。もちろん、このような時代区分が常に妥当なわけではありません。しかし、西洋経済史に関する限り違和感は少なく、研究者の間でもコンセンサスが得られやすいでしょう。 例えば、西ヨーロッパの総人口が増加に転じる時期や、宗教改革をきっかけに始まる国家形成の開始時期、また、長期のインフレーションのタイミングを踏まえれば、16世紀を近世最初の世紀と考えても不自然とはいえません。一方、18世紀後期から19世紀初めにかけて西欧は政治的にも、経済的にも変革期を迎えます。産業革命の時期でもあります。 1500年頃に西欧が工業化の中心地域になることを想像した者は誰もいなかったでしょう。しかし、1800年頃に生きた人々にとってそれは確信に変わりつつあったはずです。かくして、16〜18世紀の約300年間は、西洋経済史上、特別な時代であったと考えられるのです。2024.09.29 時代区分と歴史的連続性近世は、「初期近代」(early modern)と言い換えることもできます。主たる近代的法制度と価値観の萌芽は、近世ヨーロッパにおいてすでに確認できるからです。 さらに、法制度の面で言えば、その伝統は、中世から近代にかけて継承されていたと見る解釈も成り立ちます。例えば、著名な法制史学者のBermanによれば、国家、教会、大学などヨーロッパの基本的な諸制度は、11〜12世紀に登場したというのです。「教皇改革」と称される大変革です。(Berman:1983)。 参考文献 |