国際卓越研究大学 UREX 1
東北大学 大学院経済学研究科 川名 洋教授(西欧経済史)
Prof. Yoh Kawana(Ph.D. University of Leicester)


経済史のキーワード

農業革命
The Agricultural Revolution

【関連時事】耕作面積の拡大 農業法人の設立 スマート農業の普及

 
 

はじめに

農業革命の歴史的前提 **

農業生産力拡大の歴史的要因 **

§参考文献§

** campus-only

 

はじめに

 ヨーロッパの農業史を個人主義の起源から説き起こす講義は、珍しいかもしれません。しかし、近世における「高度有機経済」の成立を重く見るならば、共同体的農業を所与の条件とみなす従来の歴史観は説得力を持ちえません (Wrigley: 2016)。また、産業革命に先立って「農業革命」が起こったことを考えれば、新農法に挑んだ個々の農民の主体性に着目しないわけにはいかないでしょう (Kerridge: 1967)

 イギリスの農民が個人主義的であったとする A.Macfarlane の主張が注目されるのはそのためです (Macfarlane: 1978)。中世及び近世イギリスにおいて、自給自足的な零細農家と家父長的拡大家族は少数派であったというのです参考 家族史。また、家系の存続は、世帯主や寡婦の裁量に委ねられることも少なくありませんでした。財産の継承が遺言によって行われたからです。さらに、農民らは生涯にわたって同一の農村共同体に帰属していたわけではありません。移住はライフサイクルにおける重要な選択肢の一つだったからです。

 イギリスの封建制が、土地取引や市場向け農業といった市場経済の特徴を内包していたことは、広く知られるようになりました。また、農民層内部において早くから階層分化が進行していたことも明らかになっています 参考 社会的流動性。イギリスの農業が個人主義的であったと考えられるのは、こうした歴史的事情と全く矛盾しないからです。
2025.11.13
【参照 比較農業経済史

参考文献

      川名 洋 (2010)『近世イギリスの「公式」と「非公式」』 創文社/講談社.
      川名 洋 (2024)『公私混在の経済社会―近世イギリスにおける個人と都市法人―』 日本経済評論社.
      Kerridge, E.(1967) The Agricultural Revolution. London.
      Mingay, G. E. (1963), 'The "Agricultural Revolution" in English History: a reconsideration', Agricultural History, vol.37, pp.123-133
      Macfarlane, A. (1978) , The Origins of English Individualism: The Family, Property and Social Transition. Oxford.〔訳書
      Overton, M. (1996), Agricultural revolution in England : the transformation of the agrarian economy, 1500-1850. Cambridge.
      Wrigley, E. A. (2016), The path to sustained growth: England’s transition from an organic economy to an Industrial Revolution. Cambridge.

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