はじめに 経済史学では、歴史変化を導く主体が論争の的になることがよくあります。政府以外の社会集団が注目されることも少なくありません。中世ヨーロッパでは、都市政府や職能別カンパニー(ギルド)、教会や教会に属するフラタニティーが目立ちます (Rosser: 2017)。近世に入ると、東インド会社のような営利組織や種々のヴォランタリー・アソシエーション(クラブや協会)が加わることになります。とくにイギリスでは、その数と種類が著しく増加した点に、イギリス経済を支える社会の特徴が現れました。イギリス都市史が注目されるのも、中世及び近世を通じ一貫して、都市があらゆる形態のアソシエーションの主たる受け皿となっていたからです。 中間層の結束力中間層の歴史の面白さは、そこに属する人々がどのようなグループや組織を形成するのかを考察できる点にあります。一見、自立心の強い人々のように考えられますが、実は共通の価値観に基づく結束力にその特徴が現れることがわかっています。 少し矛盾するようですが、個人の選択力が試されるようになるからこそ人々の間では結束力が強まるのです。社会的流動性が高まり個々にとって将来予測が難しくなると、不安も大きくなるからです。ヨーロッパの都市史から明らかなように、中間層の人々の組織力は、古くからある農村共同体や地主エリート層のそれとは全く異なる社会原理によって高められていきます。カンパニーという用語がビジネス・コミュニーティを表すようになり、種々のアソシエーション(クラブ・協会、会社)が近世に目立つようになるのは偶然ではありません (Barry: 1994; Clark: 2000; 川名: 2024)。 とくに、イギリスではこうした現象が国家形成期に起こったという
事実は見逃せません。そのような歴史を再現する難しさを、後の世界史が証明することになるからです。
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