東インド会社遠方の地域との取引が増えれば想定すべき市場圏も当然大きくなります。西洋経済史のおもしろさは、市場圏の拡大に呼応して制度と組織が着実に変化していく様を考察できる点にあります。農業におけるエンクロージャーや、政治の分野で目立つ国家形成はその好例と言えるでしょう。 17世紀におけるビジネスの世界に出現する新しいタイプの貿易会社、東インド会社が注目されるのもそのためです。香辛料や綿織物など実物経済への影響を見るのも大事ですが、株式会社設立とその後の証券市場の拡大により不動産以外の資産形成の手段が増える経済的・社会的インパクトは計り知れません。地主以外の社会層も取引のチャンスに恵まれたことを考えれば、蓄財方法の民主化を促進したといえるでしょう。また、そのようなチャンスにより家計収入の意義が格段に大きくなったと考えられます。 |