国際卓越研究大学 UREX 1
東北大学 大学院経済学研究科 川名 洋教授(西欧経済史)

Prof. Yoh Kawana(Ph.D. University of Leicester)


経済史のキーワード

法人
Corporation

 
   

はじめに

 組織の数と規模は、経済成長に呼応して拡大していきます。西洋では、こうした組織に特別な意味を付与する法人という概念が適用されました。その意味とは、組織を一人の人間と同じように権利を行使し、義務を負う主体と見なし、その前提に基づいて活動することを公式に認める法的擬制のことです。当然、組織の権利が侵害されれば、訴訟を起こすことが認められるようになる反面、間違いを犯せば、組織として責任を追及されるようになります。法人組織の権利と義務の中身は、時代によって少しずつ異なります。したがって、法人を一律に定義するのは困難です。しかし、確実なことは、そのような組織のあり方が、ルールに基づく豊かな市場経済を実現する上で極めて効果的であったということです。

 その効果は、営利組織の歴史に如実に現れました。近世前期には、モスクワ会社やレバント会社、東インド会社など複数の貿易カンパニーに法人格が付与され、18世紀における南海泡沫事件の挫折を経て、1825〜1855年には議会のイニシアチブにより、数多くの株式会社に法人格が付与されるようになったのです (Turner: 2025)。かくして法人は、今や全世界で通用する概念となりました。



参考文献

      川名 洋 (2010)『近世イギリスの「公式」と「非公式」』 創文社/講談社.
      川名 洋 (2024)『公私混在の経済社会ー近世ギリスにおける個人と都市法人』 日本経済評論社.
      Paterson, E. (2025), Bloodsuckers of the Commonwealth: Monopolies, petitioning, and the public sphere in early modern England. Manchester.
      Simmons, J. (1974), Leicester: Past and Present. Volme One: Ancient Borough. London.
      Tittler, R. (1998), The Reformation and the Towns in England. Oxford.
      Turner, J. D., 'Three centuries of corporate governance in the United Kingdom', Economic History Review, vol.78 (2025), pp.3-29.