はじめに
消費の拡大が経済成長にとって欠かせないのは言うまでもありません。また、活発な消費には、個人による主体的選択を通じて、社会に自由の価値を定着させる社会的効果も期待されます。消費革命がいつどの国に起こったかを調べることで、そのことがよりはっきりと理解できるようになります。イギリスでは早くも17世紀前期に、市場に出回る消費財の種類が増える傾向にあったことがわかってきました (川名: 2024 ,第2章)。 2024.06.30
消費社会の誕生
年齢にかかわらず、私たちが経験する最も身近な経済行為は消費です。その場の欲求を満たすだけでなく、人生の質を決定する大事な選択を伴う経済行為でもあります。19世紀後期における経済思想史上の変化により、経済学者の目線が生産(労働価値説)から消費(効用理論)へと移行したことは広く知られています。それから約100年後、イギリス経済史の研究領域においても、供給側の変化(産業革命)から、内需の拡大へと焦点が移り、人々の購買意欲の高まりに注目が集まりました。「消費社会の誕生」、あるいは、消費革命と呼ばれることもあります(Gilboy: 1932; thirsk: 1978; McKendrick: 1989)。
消費革命が注目されるようになって以来、近世ヨーロッパ経済に対する見方も大きく変わりました。勤勉革命の発見により、プロト工業化に代表される生産の論理と消費の論理との関連性が浮き彫りになったことは、特筆に値します。最新の研究では、生活水準を維持するために、必需品だけでなく奢侈品への支出も重要であったことが強調され始めています (Humphries: 2025)。
消費革命は、良い意味でも(経済成長)、悪い意味でも(地球温暖化)経済史の分岐点になりうる画期的現象の一つです。それは、近世ヨーロッパから目が離せない理由でもあります。 2024.06.30 / 2026.0701更新
参考文献
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Bonde, B, Spliet, B., Stobart, J. (2025), 'The Consumer Revolution Comes Home:Material Inequalities in London’s Eighteenth-Century Polite Society', Journal of Interdisciplinary History,, vol.56, pp.123-155.
Gilboy, E.W. (1932)'Demand as a Factor in the Industrial Revolution', in A.H. Cole et al., eds., Facts and Factors in Economic History.Cambridge, Mass.
Humphries, J. (2025), 'Respectable standards of living: the alternative lens of maintenance costs, Britain 1270-1860', Economic History Review, vol.78., pp.613-645.
McKendrick, N. (1989), 'The consumer revolution of eighteenth-century', in N. McKendrick et al., eds., The Birth of consumption: The Commercialization of Elighteenth-Century England. Kingston.
Thirsk, J. (1978), Economic Policy and Projects: the Development of a consumption in Early Modern England. Oxford.〔訳書〕
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