国際卓越研究大学認定校
東北大学 大学院経済学研究科・経済学部 川名 洋教授(西欧経済史)

Prof. Yoh Kawana(Ph.D. University of Leicester)

財政革命
The Financial Revolution


 

財政革命

 遊休資本をいかに効率よく経済活動に活用できるかは、金融システムの質に依存します。その意味で、17世紀初頭に株式会社として設立された東インド会社は、画期的な経営組織と言えます。なぜなら、ビジネスに必要な資金を不特定多数の投資家から集める民間金融のイノベーションに成功したからです。そのノウハウは、その後、公的使命を帯びた金融機関にも応用されるようになりました。1694年におけるイングランド銀行の設立です。

 イングランド銀行の設立以来、政府が不特定多数の投資家から資金を長期に借り入れることは当たり前になりました。しかも、国家に備わる徴税権と税収を支えにこの公的金融は、投機的な民間会社よりもリスクが小さい安定した投資先を提供することになりました。

 また、金融サービスの付随物として発行された証券は、市場で活発に取引されるようになり、新たな資産形態を形成するようになりました。これにより、証券は一般の物品と同じように、必要に応じて現金化できる流動性の高い資産として位置づけられるようになったのです(Murphy: 2009)

 こうした経緯から、現代にも通用する金融システムの雛形が、今からおよそ350年前に誕生したことがわかります。戦時下に起こる財政革命の歴史を紐解けば、競争が激しいグローバル経済の下で国力を維持し続ける条件が、その国の政治体制と経済力に深く依存していたことも明らかになります。2024.03.14【関連時事】国債

参考文献

  • Murphy, A.L.(2009), The origin of English financial markets: investment and speculatoin before the South Sea Bubble. Cambridge.

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