奴隷貿易とは言わずと知れた植民地主義にまつわる負の遺産ですが、西洋経済史の研究では論争が激しいテーマの一つです。イギリス産業革命と同じ頃(18世紀後半〜)に盛んであったことから欧米経済の成功要因と考えられがちですが、意外にも、そのルーツを辿ると、アフリカ大陸内における悪しき伝統に突き当たります。そこでは、西欧人が訪れる前から奴隷制が広まっていたのです(Allen: 2011, 97)。 一方、奴隷貿易で潤ったビジネスが産業技術のイノベーションを促したことを示す証拠はそう多くはないという論点が示されています(Koyama and Rubin: 2022)。 欧米経済が奴隷貿易によって潤ったのは確かです。しかしだからといって、マルクスの主張に端を発する近代世界システム論で示唆されるように、搾取が近代経済勃興の主要因であったと言えるかどうか。論争は続きそうです。2024.06.26 |