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はじめに 近世における核家族 ** 初婚年齢、教育、人的資本 ** 女性の活躍と結婚パターン ** ** 受講者のみ |
はじめにある国の人口変動パターンは、その地の経済状態を知るための目安になります。現在では飢饉などによる大量死を想定する必要がなくなったので、人口変動の考察において主に婚姻率と出生率に注目が集まります。 ところが、産業革命以前の時代にも、このような見方が通用する地域が存在しました。それは、ヨーロッパ北西部です。その地域の結婚事情について調べてみると、経済状況に合わせてある傾向が見られたというのです。 例えば、実質賃金が下降気味の経済状況下では、婚姻率が下がり、晩婚化が進みました。当然、出生率もそれに合わせて減少することになります。夫婦になった後、生計が立てられなくなる状況を避けるため、適齢期を迎えた若者らの間で合理的判断がなされていたと考えられるのです。 ジャガイモ飢饉と結婚パターン生活水準の低下に呼応して晩婚化の傾向が強まるメカニズム。それ無しでは死亡クライシスを阻止できないことがわかる有名な事例があります。19世紀半ばのアイルランドで起こったジャガイモ飢饉です。 同地域の人口は、18世紀〜19世紀前半にかけて著しく増加しました。ところが、それはアイルランド経済が好調であったことを意味したわけではありません。にもかかわらず平均初婚年齢が下がる傾向にあったのは、アメリカ大陸のジャガイモの栽培技術がアイルランド農業に採り入れられたからです。単位面積当たりの収穫量が多いジャガイモは、生産面積の小さい農家でも収量を確保できる利点がありました。収穫が安定している限り、食料供給が滞ることはなかったのです。 晩婚化に転じたのは、飢饉によって何百万人もの人々が死亡した19世紀半ば以降でした。北西ヨーロッパの地にありながら19世紀に死亡クライシスに見舞われたアイルランドは、ヨーロッパ的結婚パターンが当てはまらなかった例外的事例と言えるでしょう (Bacci:2000)。 参考文献
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