ヨーロッパ的結婚パターン
人口変動は、マクロ経済について評する際の重要なテーマです。近代経済のもとでは、繰り返される大量死を想定する必要がなくなったので、人口変動の考察では主に出生率が注目されるようになりました。
実は、このような見方は、産業革命期よりも前の人口史において可能であることがわかってきました。というのも、ヨーロッパの北西部では近世において、経済状況に呼応するように、平均初婚年齢が上下する現象を確認することができるからです。食料価格が上昇し実質賃金が低下するようになると、婚姻率が下がり、晩婚化も進んだというのです。
死亡率よりも出生率の方が重要な説明要因となるこのような結婚パターンの発見は貴重です。というのも、労働力の安定供給を許さない高死亡率という足枷が、早くも近世には取り外されていたことになるからです。例えば、イギリスでは、総人口の増加が続いていたにもかかわらず、自然と出生率が下がるような結婚パターンが社会に根付いていたので、大量死を招くほどの深刻の事態は起こらなくなったと考えられるのです。
2024.10.26
関連時事 人口減少
参考文献
Hajnal, J.(1965), 'European marriage patterns in perspective', in D.V. Glass and D.E.C. Eversley, eds., Population in history.London.
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Last updated : 2024/10/26
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