国際卓越研究大学 UREX 1
東北大学 大学院経済学研究科 川名 洋教授(西欧経済史)
Prof. Yoh Kawana(Ph.D. University of Leicester)


経済史のキーワード

工業化
Industrialisation

 

はじめに

プロト工業化

地域間分業 **

後発工業国の工業化 **

§参考文献§

** campus-only

はじめに

 「工業化」の意味を誤解している学生を多く見かけます。工学技術の革新により、経済の仕組みが製造業の機械化と大量生産体制に依存するようになる歴史的経緯を示す用語と考えられがちですが、西洋経済史の文脈に沿って工業化について理解するためには、そのような認識では狭すぎます。確かに西洋経済史の特徴は、高度有機経済の発展の帰結に産業革命が起こるという筋書きにありますが、機械制工業の時代よりも何世紀も前から工業生産が伸びていたことがわかっているからです。

 むろん家内工業の存在は広く知られています。しかし、肝心なのは、その生産体制が国際競争に晒されながら海外市場向けに成立していた点です。この点が、ヨーロッパ以外の地域でも見られる家内工業とは異なるからです。
2025.08.27

プロト工業化

 イギリス産業革命を植民地主義に結びつける見方があります。綿織物はインド綿の輸入代替による産物であり、マンチェスターの工場で生産されるその原料はインド及びアメリカ大陸のプランテーションから運ばれていたからです。

 しかし、生産工程の機械化と工場における大量生産のようなプロセス・イノベーションの要因を、植民地貿易に探るのは困難でしょう。プロト工業化の歴史はむしろ、産業革命がヨーロッパに内在する要因によって起こったことを示しています。

 プロト工業化の理論によれば、農村を中心に問屋制家内工業が発達したことこそ、工場における大量生産体制への経路であったというのです。そのような農村では、零細農家の農民らが安価な労働力として雇用されたので、問屋制は価格競争力の面で有利な制度でした。しかし、生産量が増えれば同制度は、収穫逓減の問題を抱えることになります。工場制への移行はそうした問題を克服する効果的手段となったのです(Clarkson:1985)
2025.05.17

参考文献

      Carus-Wilson, E. M. (1941), ‘An industrial revolution of the thirteenth century’, Economic History Review, vol. 11 , pp. 39-60.
      Clarkson, L.A. (1985),Proto-industrialization: The First Phase of Industrialization?. London.
      Di Vittorio, A. (2006), ed., An economic history of Europe from expansion to development. London.
      Gershenkron, A. (1962), Economic Backwardness in Historical Perspective.〔訳書〕 Cambridge.
      Hudson, P. (1996), 'Proto-industrialization in England', in S.C. Oglivie and M. Cerman, eds., European proto-industrialization. Cambridge.
      Hudson, P. (1989), 'The regional perspective', P. Hudson, ed., Regions and Industries: A perspective on the industrial revolution in Britain. Cambridge.
      Locke, J. (1689), Two treatises of government. 〔訳書〕.
      Smith, A. (1776), An Inquiry into the Nature and Causes of the Wealth of Nations.〔訳書〕.
      Sterns, P. N. (2017), The industrial turn in world history. New York.
      Suesse, M., and Grigoriadis, T. (2025), 'Financing Late Industrialization: Evidence from the State Bank of the Russian Empire', Journal of Economic History, vol. 85, pp.1170-1206.
      Thirsk, J. (1987), England’s Agricultural Regions and Agrarian History, 1500-1750. London.

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