TUPD-2025-006

表 題 Aging Farmers and the Role of Community in Adaptation to Extreme Temperature Effects on Crop Yields: Empirical Evidence from Japan
著 者 柯 宜均

公益財団法人アジア成長研究所 上級研究員
東北大学経済学研究科 客員研究員

内田 真輔

名古屋市立大学大学院経済学研究科 教授
東北大学経済学研究科 客員教授

日引 聡

東北大学経済学研究科 教授
政策デザイン研究センター センター長

P D F
要 旨

本論文では、気候変動に対する農家の適応メカニズムを探る。私たちは、農家の年齢と地域活動への関与(お互いの助け合い活動)が、異常気温下での作物生産にどのような影響を与えるかを明らかにした。2001年から2018年の日本のコメ生産に関する市町村レベルのパネルデータを用いてコメ収量関数を推計し、農家の年齢が気温とコメ収量の関係に影響を与え、逆U字型の年齢効果があることを見出した。すなわち、平均年齢が60歳の農家では異常気温による収量減少が最も小さいが、60歳を超えると、年齢が高いほど異常気象の影響は大きくなり、また、60歳を下回ると、年齢が低くなるほど小さくなることが分かった。これは、農家の年齢が60歳を超えると、認知能力の低下や体力の低下によって、異常気象に対する農家の適応能力が低下することを示唆しているものと考えられる。一方、農家が若い場合、認知能力や体力が十分にあったとしても、農業経験の不足によって、適応が十分ではなくなることを示唆している。さらには、このような年齢効果は、地域社会への積極的な関与(助け合い)がある地域では小さくなり、農家コミュニティのメンバー間のネットワークや関係を強化することによって異常気象の影響を回避することができることがわかった。

キーワード Age, Climate change, Crop yields, Extreme temperatures, Farm community engagement, Farmers’ adaptation capability, Rice
発行年月 2025年 4月

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