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TUPD-2021-002

表 題 Adjustment costs in dynamically optimal pricing of a network good
著 者 図斎 大

東北大学経済学研究科 准教授

P D F
要 旨

進化動学として知られる、戦略の調整過程のモデルにおいて、主体間の異質性を組み込むときには、i) 異質なタイプの種類が有限である、もしくはii)各タイプの利得関数も集計的な動学もともに社会全体の平均的な戦略にのみ依存し、分散などの分布に関する状態に左右されないという仮定が置かれてきた。他方で計量経済学に基づく実証研究では離散選択モデルなどで連続的な異質性を考えることが標準的であり、また応用研究でわざわざ異質性を考えるときには「平均」に還元されない性質に関心がある。それらに見合うよう先の二つの仮定を外してゲーム・動学それぞれで異質性を広く許容し、また「平均」に還元されない戦略分布が影響を持つようなような動学を数学的に厳密に構築するためには、連続的な確率分布の動きを描写する無限次元上の微分方程式を注意深く取り扱わなくてはならない。この論文では、まずこの問題に取り掛かり、異質性を組み込んだ進化動学一般の数学的基礎付けとして、このような微分方程式に関してどのような初期状態からも解軌道が存在するための条件を経済学的に自然な形で提示し証明した。 進化動学においてはポテンシャルゲームと呼ばれる種類のゲームが、インセンティブと集計的に整合的な進化動学全般で、すなわち社会全体での各戦略のシェアの変化がその戦略の相対的な利得と正の相関を保つだけで均衡の安定性を保証するような性質のよいゲームの代表として知られている。この論文の後半では、利得の異質性、不完備情報、主体間の影響に関する地理的・社会的な偏りによってゲームの定式化にズレが生じたとしても、ポテンシャルゲームであることは変わらず、そのために均衡の安定性がこれらのズレに頑健であることを示した。

キーワード 進化動学 Evolutionary Dynamics; 異質性 Heterogeneity; 連続空間 Continuous Space; 潜在的ゲーム Potential Games
発行年月 2021年 5月

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