TUPD-2021-007
表 題 | Natural Disasters and Firm Selection: Heterogeneous Effects of Flooding Events on Manufacturing Sectors in Japan |
著 者 | 吉田 惇
九州大学工学部 助教 名古屋市立大学大学院経済学研究科 准教授 北星学園大学経済学部 教授 東北大学政策デザインラボ長 |
P D F | |
要 旨 | 近年、自然災害や異常気象が頻繁に発生している。本研究では、日本の市区町村レベルのデータを用いて、大規模洪水が長期的に製造業の製造品出荷額や事業所数にどのような影響を与えるかについて、事業所の規模や過去の洪水の経験を考慮して検討した。洪水の影響を検討した。 その結果、洪水被害のあった市区町村では洪水直後は製造品出荷額が減少するものの、長期的には被災していない市区町村よりも増加するという「build back better」効果が見られた。また、洪水後、大規模な事業所は増加し、中小規模の事業所は減少した。これらの結果は、洪水被害とその後の回復プロセスを特徴づける2つの重要なメカニズムを示唆している。第一に、大規模事業所は洪水に強く、中小規模事業所は洪水に弱い。小規模事業所の退出や大規模事業所の増加により規模の経済性が働き、事業所あたりの製造品出荷額が増加したことで「build back better」効果が見られた可能性がある。過去の洪水の経験は大規模事業所の活動に影響を与えなかった。頻繁に洪水に見舞われる市区町村では、中小規模の事業所数は回復したものの、洪水経験が少ない都市では、中小規模の事業所数は長期的に低下したままであった。これは想定外の洪水によりサプライチェーンの見直しや政府対応の遅れなどがあったことが考えられる。また、雇用も減少傾向が続いており、地域経済に大きな影響を与えた。 |
キーワード | 洪水 Flood, 気候変動 climate change, 製造業 manufacturing sectors, 事業所選択 firm selection, 過去の洪水経験 past experience of floods |
発行年月 | 2021年 9月 |