はじめに近世に入ると、貿易が、ヨーロッパ諸国にとって重要な政策課題の一つになることは広く知られています 【参考 重商主義】。しかし、領域国家において貿易が公的な課題となるのは、その時代が初めてというわけではありません。中世イギリスでは、毛織物の原料となる羊毛の輸出が政策課題の主題となりました。羊毛輸出は、国益、都市化、地域経済にかかわる重要なビジネスだったからです。 ここに貿易商人の勢力が増す最初の歴史的フェーズを見出すことができます。ステープル商人の登場です。 王権との密接な関係近現代の政府にとって財界のリーダーとの折衝は、税制や経済政策を決定する際に欠かせない作業の一つです。その意味で、イギリスにおいて、羊毛輸出をめぐり国王政府と商人層との対話が頻繁に行われるようになる13〜14世紀という時代は注目に値します。王権にとっては関税収入の増加が見込まれ、商人の側では、公権力の下で利益を独占したいという思惑がありました。その協議はやがて、イギリスの商人が羊毛の輸出入の担い手となる方向へと傾いていきます。当時はまだ大陸出身の外国商人らの影響が強く、イギリス産羊毛の流通拠点も、大陸の諸都市に集中していたので、イギリスの商人らが王権の庇護を必要としたことは不思議ではありません。 かくして、中世におけるイギリスの貿易商人らは、この時代に国内で確固たる地位を固めるきっかけを掴むことになったのです。羊毛取引を独占することとなったこれらの商人は、ステープル商人と称されました。
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