全学教育科目「経済と社会」 2022
　欧米諸国において持続的経済成長が可能になったのはなぜか。その秘密を探る経済史学のおもしろさについて解説してきました。「科学技術の発達」、「啓蒙思想の広がり」、「消費社会の誕生」、そして、「中間層の台頭」など、持続的経済成長の前提条件を理解するための、いくつもの入口が見えてきたと思います。どれも豊かな経済を追求することと、社会のあり方との関係性を深く認識する上で欠かせない知識となります。欧米経済史では、取引に関する証拠が残り始める中世の時代から考察を始めるとその本質を理解しやすくなることもわかってきました。古くから文書の蓄積が始まる西欧文明の特徴もそこに現れるからです。帝国主義や植民地主義をキーワードに西洋諸国が世界の国々へもたらした「影響」を批判的に見るのも大事ですが、西洋の歴史そのものを、その独特の思想や文化を含めしっかり学ばなければ、経済に対する理解は深まらないわけを納得することが大切になります。近代経済は西洋特有のカルチャーを基礎に現れる歴史的産物と言えるからです。