本書は、国際協力事業団(JICA)とベトナム・国民経済大学(NEU)との間で行われている、ベトナム工業化戦略に関する共同研究(以下NEU-JICA共同研究と略)の、日本側メンバーによる中間的な成果をまとめたものです。共同研究の目的は、グローバリゼーションの下にあるベトナムの工業化戦略について、具体的で現実的な政策提言を行うことです。
序章「ベトナム工業化研究の経過と特徴」(大野健一・川端望)では、NEU-JICA共同研究の経過と特徴、研究チームの問題意識を解説しています。
第1章「経済協力とベトナム産業研究」(大野)では、このプロジェクトが日本の開発援助に対して持つ含意を探り、ベトナムは、日本が日本らしい経済協力関係を築くモデルになりうると主張しています。
第2章「国際統合に挑むベトナム」(大野)は、途上国であるベトナムにとってグローバリゼーションが持つ意味を考察するとともに、ベトナムがとるべき工業化戦略の基本的提言をまとめています。
第3章「工業化戦略としての直接投資誘致」(木村福成)では、東南アジア諸国連合(ASEAN)先進5カ国や中国が成長を遂げた1980年代の経験を踏まえて、かつて日本、韓国、台湾で実施された保護育成政策とは異なる、グローバリゼーション下での新たな産業政策を、直接投資の誘致を中心に論じています。
第4章「電子・電機産業――直接投資誘致の課題」(岡本由美子)では、電子・電機産業の国際動向を踏まえて、ベトナムへの直接投資が少ない理由を探り、投資拡大に向けた政策の方向性を論じています。
第5章「繊維・縫製産業――流通未発達の検証」(後藤健太)では、ベトナムの繊維・縫製製品の流通機構が未発達であることを踏まえ、生産と流通において発生するリスクを吸収するメカニズムとそのコーディネーターが存在しないために、高付加価値化が困難になっていると論じています。
第6章「鉄鋼業――輸入代替産業の現実的オプション」(川端)では、ベトナム鉄鋼業が解決すべき問題は条鋼の生産能力不均衡と鋼板の輸入代替にあるとして、これらを貿易自由化スケジュールと整合させながら解決するための政策オプションを提案しています。
補章「オートバイ産業」(植田浩史)では、オートバイ産業の発達過程とベトナム政府による輸入規制策の変遷をたどっています。特に、2002年に急浮上して日系メーカーにも深刻な影響を及ぼした部品輸入割当問題について、打開の可能を探っています。オートバイ産業に関する研究は現在も継続中であるが、問題の緊急性を鑑みて現時点での理解を表明したものです。
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