「経済学部の授業に関するアンケート」(企業論)の結果に関するコメント


(経済学部生への連絡:199941)

総論

 「企業論」の講義は私にとって始めてのことであり、未熟な部分も多々あったと思う。学生諸君の意見を参考にして、今後改善をはかっていきたい。

 全体として、今回の授業の最大の問題は、内容量が多すぎたことと、学部生向けとして必ずしも適切でなかったことにあると思っている。内容が多すぎ、したがって講義速度が速すぎたことについては改めていきたい。また、何人かの教員と話してみたところ、内容が大学院修士向けのになっているのではないか、という意見が複数寄せられた。そこで私なりにもう一度考えてみると、「近代経済学、マルクス経済学、経営学の基礎理論についてある程度なじみがないとわかりにくい」という意味において、大学院修士向けであったかと反省した。例えば、修士向けであれば「イノベーション」、「絶対的剰余価値」、くらいの用語は説明せずに、その用語を使った応用理論の説明に入る。しかし、学部向けではそうはいかない。このことに気がついてから、講義でも、基礎概念についての説明をかなりおこなうようにしたつもりであるが、それによってさらに内容が増え、したがってさらにスピードを上げざるを得なくなるという矛盾が生じた。

 このようなアンケートを参考にする際に難しいのは、授業に出席している学生だけが回答していることである。したがって回答していない学生の意見は反映されていない。欠席しているのは、本人の怠慢によるのか、講義がへたくそなのかもわからない。このあたりのことは、一応、念頭に置いてコメントする。以下、個別論点に入る。

 

予習・復習について(設問2関連)

 授業中に話したように、私は、講義すべての予習・復習が必要だとは考えていない。私の心がけとしては、予習は不要な講義をおこなうつもりである。また復習は、最終的にレポートと試験の期日までにきちんとおこなえばよい、と考えている。もちろん、わからなくなったところはその都度調べることが望ましいが。

 このように考える理由は、講義よりもゼミの学習や卒業論文(演習論文)の研究に力を傾斜配分したほうが、深い勉強になるし、ものの考え方も鍛えられると判断しているからである。

 したがって、予習・復習をしていない学生が多い点については、特にコメントしない。

講義内容でわからないところがあったときの対処について(設問3関連)

 「何もしなかった」学生が19人=40.4%と多く、学部全体の平均28.4%を大幅に上回っている。この理由が知りたいが、いまのところ手がかりがない。前半では薄く広く理論を紹介し、後半ではケース・スタディをおこなったので、いずれにせよ調べにくかったということだろうか。

 「友人・先輩に尋ねた」が11人=23.4%と学部全体の42.7%を大幅に下回る一方、「教科書・参考書等で調べた」が19人=40.4%と学部全体の35.2%を上回っている。これは、私の企業論が始めてであり、かつ谷口先生の企業論と内容が異なっているので、過去の例を参考にできないこと、参考書リストを明示したので、本から調べることは比較的やりやすかったことによると思われる。参考書を明示するやり方は続けていきたい。

説明・声の聞きやすさ・板書の読みやすさ・メディアの利用について(設問47関連)

 説明については、「どちらかといえば」を含めて、「理解しやすい」、「理解しにくい」の比率がいずれも学部全体を下回り、「どちらともいえない」が21人=44.7%と学部全体の21.3%を大幅に上回っている。もう少し改善の余地があるようだ。とりあえず、分量と速度を適切にした上で、説明の仕方も工夫したい。

 声は、聞きやすいという意見の方が多いようであり、幸いだ。

 板書についても、読みやすいという意見が多く、字が下手なわりにはうまくいったかと思う。かつて高校の先生に「おまえのは字じゃない!」と罵倒されたのに比べれば長足の進歩である。ただ、授業をしながら、「こういう図で説明するといいかも」と思いついて書いてみる、ということも多く、あまり計画性はなかったかもしれない。計画的な板書に向けて努力したい。

 各種メディアの利用についても、おおむね適切と評価されているようだ。自由記述には、レジュメとホームページの活用について肯定的に評価する意見がある一方、レジュメをもっとわかりやすくせよという意見もあった。特に、第1部のレジュメが不十分だったかもしれない。今回、時間の都合でできなかったが、ケース・スタディの授業ではビデオ、写真など視覚的なメディアをもっと活用していきたい。

 なお、電子メールでのレポート提出や休講通知を求める意見があったが、まだ難しいと思う。というのは、現在のインターネットでは、電子メールの信頼性がいまいちで、時々、届かないことがあるからだ。「提出した」「もらってない」という争いは望ましくない。

講義のスピードについて(設問8

 「早すぎる」という回答が集中すると覚悟していたが、そうでもなくて少しほっとしている。ただし、4年生より3年生に「早すぎる」が多い。基礎理論を他の講義で学んでいないときつい部分が多いせいかもしれない。

 よくわからないのは、「適切」という回答比率も「早すぎる」という回答比率も学部全体より低いのだが、「わからない」という回答が11=23.4%で、学部全体の9.2%と比べてもやたらに多いことである。スピードが速いかどうか「わからない」というのはどう解釈したらいいのだろうか。

講義への理解・興味について(設問910関連)

 「理解できた」「どちらかといえば理解できた」をあわせて19人=40.4%である。回答者が、授業に出てきている積極的な学生であることを考えると、その4割しか理解できないというのは低い。また、学部全体の45.2%と比べても低い。ただ、「理解できなかった」「あまり理解できなかった」も9=19.1%で、学部全体の30.1%よりは低く、「どちらともいえない」が多い。この原因には、私の側にある部分と学生側にある部分、両者のインターフェースに関わる部分があるとは思うが、いずれにせよ無視できない問題である。私の側が「速すぎる」「多岐にわたりすぎる」というのは見当がつくが、それ以外の要因についてはもう少し考えてみたい。

 講義内容は「興味深かった」「どちらかといえば興味深かった」の合計が33=70.2%で、学部全体の58.4%を上回っている。まあ、つまらなくはなかったようだ。人間の行動や企業のあり方をイメージできる説明をしようと努力したので、その効果はあったかもしれない。ただ、それでも「具体的にイメージできない」という意見もあり、メディアの多面的活用など改良の余地はある。

その他

 教科書の出版が遅れた件について、2名から批判があった。まったくそのとおりである。ただ、2名ですんだのは、代償措置として試験時の持込み可を早い時期に公表したからかもしれない。これで持込み不可だったら非難の嵐だろう。私は、「記憶力に頼って、その場で限られた時間で論じる」というのが好きではなく、事前の勉強の成果を十分に表現できないと思っている。百万円クイズハンターを見ていてもはらはらして嫌になり、チャンネルを変えるくらいだ。そこで、持込みにして、大いに論じさせるという手法をとってみた。ただ、採点の労力がたいへんなので、聴講者が200を超えるとできないかもしれない。

 講義内容に関する意見を、多少都合よく総合すると、「話はきこえるし、少々マニアックだが眠くはない。しかし、内容が応用的で多岐にわたりすぎ、スピードも速いので追っかけられない」というところだろうか。とにかく、今度の機会ではもう少しゆっくりと説明してみて、また学生の意見をきいてみたい。

 「川端氏の知識体系は干からびている。「お勉強」だ。私は青白きインテリという言葉を想起する。アバヨ」という意見に対しては、「すれば」「じゃあね」「あなたは生き生きとしていて赤黒いのか」と思う反面、もう少し具体的に指摘してくれると、受け容れたい点や反論したい点が明確になると思う。より具体的な批判を希望する。

 


集計結果にもどる


授業・ゼミ情報へ


Ka-Bataホームページへ


経済学部ホームページへ