書評 肥塚浩著『現代の半導体企業』ミネルヴァ書房、1996年。


※本稿はもともと図表を含んでいないので、この頁に全文が掲載されている。

※正誤表

当該部分

誤:「著者が後者の側面についてについて述べるとき」

正:「著者が後者の側面について述べるとき」

余談:肥塚氏には、よく色々な議論をふっかけて迷惑をかけている。だが、彼との議論の中で勉強になることはたいへん多い。例えば経営戦略論というのは、かつて私にとって雲をつかむような話であったが、彼の示唆で、現在の日本企業にとっての意味を考え始めるようになった。鉄鋼業のリストラクチャリング研究をすすめる手がかりになりそうな気がしている。
  氏のクリアーな論理を前にすると、なるほどと膝を打つ一方で、そう言い切っていいものかという気持ちが残ることも多い。このアンビバレンスの正体を何とか学問的に説明できないかと考えながら本稿の執筆に取り組んだのだが、うまくいったかどうか、読者諸氏のご批判をあおぎたい。言い尽くせなかった点も色々とあり、また氏のフレームワークの先行者である坂本和一氏や、さらに堀江英一氏の研究についてもまだまだ勉強しなければならない。大学の「経営戦略と組織」をめぐっても多忙な氏が、これからも私との議論に応じて下さることを願うばかりである。

<以下本文>

 半導体は、いまや生活と産業に深く入り込んでいる。パソコン、ワークステーションは言うに及ばず、通信機器、家電製品や自動車にも半導体は組み込まれている。

 ところが、日常的な存在と化した半導体が、どのような企業によって、どのようなシステムを通して開発・生産されているのかとなると、必ずしもわかりやすい話ではないし、経済学的・経営学的には明らかになっていない部分もある。評者にとっても、半導体は製造工程や製品の機能を理解するのに苦労する、とりつきにくい世界である。

 この度、肥塚氏が上梓された『現代の半導体企業』は、こうした半導体の世界に企業論的枠組みで挑戦したものである。構成は以下の通りである。

 はしがき

 第1章 現代半導体企業研究のフレームワーク

 第2章 半導体産業の発展と半導体企業の類型

 第3章 半導体企業の研究開発システム

 第4章 半導体企業の生産システム

 第5章 半導体企業のメモリ事業

 第6章 半導体企業のマイクロプロセッサ事業

 第7章 半導体製造装置企業の類型と競争戦略

 第8章 現代半導体企業の戦略と組織

 この構成の意味は「はしがき」に明解に述べられている。「まず半導体産業の形成過程分析から主要半導体企業を類型化し、次にその競争関係を研究開発システムと生産システム、さらにメモリ事業とマイクロプロセッサ事業において分析し、最後に半導体企業の類型毎の戦略と組織のパターンを明らかにするというものである。すなわち、現代半導体企業の組織構造を、開発・生産レベル、事業レベル、全社レベルという三層的に理解し、その上で各階層のありようを戦略との関係性で解きあかしている」。

 第1章では、こうした手法をとる理由とその理論的意味が明らかにされている。著者はまず「半導体企業の経営行動を明らかにする際に問題になるのは、数多くのタイプの企業が存在し、それらが企業間競争を繰り広げていることである」と問題を提示する。そして、この問題にアプローチする際の重要な先行研究として、岡本博公の企業類型論とM.E.ポーターの競争戦略論、坂本和一の企業構造論を検討し、その評価を通じて自らのフレームワークを構築している。著者のフレームワークとは、「半導体企業の組織階層理解を前提として、戦略と組織構造の関係を明らかにしていく展開」である。企業の組織構造を現場活動単位・事業単位・巨大企業そのものの三重の階層組織としてとらえるとともに、それぞれの階層が企業間の競争様式を体制化しているとみなす点は、企業構造論を継承している。そして、著者はこれを二つの面から動態化しようとする。第一に、競争戦略論や経営戦略論の成果を踏まえて、組織の階層ごとに異なった戦略があること、組織はこの戦略が形成される場であるが、他方で組織は戦略にしたがって形成されることを指摘するのである。第二に、企業類型論と競争戦略論の成果を踏まえ、組織階層レベルを異にする諸企業から構成されている半導体産業における、企業間競争のありようを独自にとりあげようというのである。

 第2章では、著者はアメリカと日本の半導体産業の発展過程を踏まえて、半導体企業の類型化を試みる。第一の類型基準は製品構成であり、企業類型は@フルライン企業(日本電気、東芝、モトローラ、TIなど)とA特定製品集中企業(インテル、AMD、三星電子など)である。第二の類型基準は企業の組織構造とそこでの半導体事業の位置であり、企業類型としてまずa)多事業統合企業の一事業部門があげられ、これはさらにa)-1.エレクトロニクス企業(日本電気、東芝、モトローラ、三星電子、松下電子工業など)とa)-2.非エレクトロニクス企業(リコー、日鉄セミコンダクターなど)にわけられる。次に、b)半導体専業企業(インテル、AMD、ロームなど)、c)半導体特定プロセス企業(アメリカのファブレス企業など)があげられる。世界において主要な半導体企業は、シリコンバレーの半導体専業企業と、日本、韓国、ヨーロッパ、シリコンバレー以外のアメリカ企業の多事業統合企業、そしてアメリカ、アジアの半導体特定プロセス企業であると鳥瞰されている。

 第3章では、研究開発システムが検討される。半導体イノベーションは、マイクロプロセッサとメモリの開発が本格的な情報化社会への扉を開くきっかけを作ったように、重要な成果をあげてきた。特に著者は、「その研究開発は、新たな製品の出現を可能にする生産工程の革新とそれに関連する材料の革新を含めて行われてきたことを見落としてはならない」ことを強調している。半導体研究開発の重要な課題は、@開発期間の短縮とコストの抑制、A性能向上に向けての個別技術の向上、B生産工程イノベーションだとされる。続いて研究開発システムが分析されるが、世代交代のはやさから時差並行研究開発システムを必要とすること、開発期間の短縮とコスト抑制のために、研究、試作、量産化のハーモナイゼーションの形成、コンカレント・エンジニアリング手法、工場パイロット制の採用がなされていることが述べられる。半導体企業においては、研究開発システムと生産システムが結びついて一つの統合的なシステムをなしているというのである。

 第4章では、生産システムが分析される。

 まず、工程の特徴が明らかにされる。その特徴とは、生産工程がたいへん複雑であること、半導体製造装置が複数工程の処理、複数の装置の連結の方向へ向かっていること、生産リードタイムが長く、平均して約3カ月を要すること、関連企業との分業関係である。

 次に、歩留り率と投資効率の向上が検討される。まず価格の急低下と、歩留り向上の重要性が指摘される。著者は「開発や少量生産を担当したラインと完全に同じプロセスを量産ラインに展開して早期に生産量を拡大しようとする」インテルのコピー・イグザクトリー思想を紹介し、その条件として開発段階で最先端技術を採用しなければならないこと、量産ラインシミュレーション能力が必要とされることを述べている。また、投資効率が1980年代後半から低下していることへの対策について、装置のマルチプロセス使用および多世代使用を実現すること、装置の標準化を図ること、過剰な使用や自動化をやめて適正化することがキーワードだと指摘している。

 さらに、フレキシブル生産システムの水準が解明される。著者は生産工程の変化の方向を、「従来のバッチ式装置を主体とした単品種大量型生産工程が、マルチプロセス化、多世代化装置を使用した多品種混合生産ラインへと発展していく」と整理している。そしてこれを実現するものとして、装置の枚葉化など生産プロセスでの対応、多数生産系列体制、生産拠点のグローバルな展開、さらに組立工程を担う協力会社との分業関係があると述べている。

 第5章ではメモリ事業の特徴が明らかにされる。著者は、メモリ市場において競争優位を獲得しようとするならば、世代交代を特徴とするイノベーション競争とそれを支える研究開発投資および設備投資を継続しうるシステムを構築する必要に迫られるという。具体的には、34章で取り上げた複数世代対応研究開発・生産システムである。そして、この研究開発・生産システムが、@研究開発投資の対売上高比率が非常に大きい、A設備投資額も増大傾向にある、Bシリコンサイクルによって設備投資額は大きく変動しているが、研究開発投資額はほぼ一貫した上昇を示している、という特徴を持っていること、さらに多大な研究開発従業員も必要であることが明らかにされる。こうした費用・人員の負担に耐えられなければ、半導体企業は半導体市場の最も重要な分野での競争を断念することになるというのである。1980年代にDRAM市場からアメリカ半導体企業が次々と撤退していったのは、こうした負担に耐えられなくなったからであり、韓国半導体企業はこうした負担に耐えながら90年代のDRAM事業における日韓逆転を実現した。著者は、「技術レベルが追いついたならば、あとは膨大な研究開発投資と設備投資をDRAM市場の拡大にあわせて適切に行いうるかが、DRAM事業での成功の鍵となる」と述べている。

 第6章では、マイクロプロセッサ事業の特徴が明らかにされる。この分野におけるインテルの市場支配について、著者は、1980年代にインテル製のマイクロプロセッサがIBMのパソコンに搭載されたことから生じたと述べている。その後パソコン市場ではIBM互換機のシェアが拡大して行くが、互換機企業もまた、ソフトウェア資産の継承のためにインテルのマイクロプロセッサを搭載したのである。また著者は、インテルの市場支配がどのように継続したかを、セカンドソース戦略を中心にして検討している。インテルなどアメリカ半導体企業は、日本の半導体企業と16ビットマイクロプロセッサのセカンドソース契約を結ぶことによって自社規格製品のシェアを拡大するとともに、膨大な開発費を回収した。しかし、このためファミリーとなった企業との競争関係が生じることになった。コスト競争力に勝る日本企業の攻勢を前にして、アメリカ半導体企業は32ビットではセカンドソース契約を拒否する戦略をとり、成功した。著者によれば、それは「インテルのマイクロプロセッサを搭載しているパソコンが世界標準になってしまうと、今度は逆に資産の継承性が重要視されるパソコン市場では、インテルのマイクロプロセッサを搭載し続ける必要がパソコン企業に生じたことを、インテルが巧みに利用したからである」。インテルは他方で、DRAM事業から撤退する決定を行ったが、その理由を著者は@EPROM市場への日本企業参入による価格低下、ADRAM技術開発の若干の遅れ、Bマイクロプロセッサ事業と両方を続けるための経営資源の不足によるものとしている。

 その後、インテル互換プロセッサの登場やワークステーション用のRISC市場の成長などによって、いわゆるウィンテル支配は変容していくが、特に著者が注目するのはマルチメディアに対応したチップの出現である。そして5章の検討とあわせて、この10年間の半導体事業ではフルライン戦略よりも集中戦略が市場で競争優位を獲得したが、IT産業全体においてネットワーク戦略やコンテンツビジネスが重要となる今後は、競争要因が変化するであろうと展望している。

 第7章では、半導体製造装置産業における企業間関係のありようが提示され、その競争力が半導体企業の競争力強化の重要な要因となっていることが明らかにされる。まず著者は、半導体生産には多くの周辺産業が関わっており、半導体産業がそれらの産業に集積されている技術に支えられていることを強調する。次に半導体製造装置企業の開発戦略について、ユーザーである半導体企業のイノベーションの方向性と速度をどのように把握するかがポイントとなっているという。そして、半導体企業と製造装置企業の間のデザイン・インが決定的になりつつあるというのである。また販売戦略については、購入先が高い技術水準を有し、技術的要求が高いため、それに対応することがポイントになるという。総じて、著者は、日本の半導体製造装置企業の競争戦略は、親産業である半導体産業の経営戦略に影響を受けると指摘している。

 第8章では、以上の分析を踏まえて、半導体企業の戦略と組織が、企業類型論的視点から改めて解明される。

 まず多事業統合企業の場合である。著者は、この類型の中でも特にエレクトロニクス巨大企業にとっては、半導体事業は、@自社の最終製品の性能を左右する中核部品を自社経営資源としてとりこんでいる点、A日本のエレクトロニクス巨大企業の収益に大きく影響している点から、戦略性をもつと指摘する。ただし、話はやや複雑である。著者は、多事業統合企業でかつフルライン企業の場合、フルライン生産は様々な半導体製品を搭載するエレクトロニクス製品を自社内で生産していることと関係しているという。しかし、一方で、現在では、こうした企業でも外販比率が高くなっており、自社の半導体を専ら自社製品に搭載しているのではないともいう。自社内消費が多いからというだけでなく、多様な半導体を必要とすることから、特定製品に半導体事業の将来をゆだねない考え方が生じるという。このほか、多事業統合企業でかつ特定製品集中企業や非エレクトロニクス企業である場合の戦略が検討される。

 続いて半導体専業企業の場合である。まず共通する戦略的特徴として集中戦略があり、その理由としてフルライン戦略を採るだけの経営資源を有しておらず、自社の得意分野においてビジネス展開を行っていることが指摘される。そして、巨額の研究開発投資や設備投資に耐えながらイノベーションを遂行するという戦略はほとんど採用されていないとして、フルライン企業との対比がなされる。専業企業かつ特定製品集中企業でありながらこの戦略を採っており、世界の上位10位企業に名を連ねているインテルは、著者によれば非常に特異な存在なのである。このほか、ニッチ企業、特定プロセス企業の戦略も紹介される。

 最後に著者は、企業類型は競争優位を即時的に決定づけるわけではないが、競争条件に対して企業類型毎に類似の対応をしていること、競争優位は、当該する市場の特性に適合的な戦略的・組織的な対応をとれるかどうかにかかっていることを改めて確認し、本書を結んでいる。

 さて、本書を読んで考えさせられたことはたいへん多いのだが、紙数の関係があるので、大きく三つに分けて述べていきたい。

 第一に、まず感じたことは議論のバランスの良さ、冷静さである。半導体企業に限らず、1980年代後半から90年代にかけて、日本人による日本企業論は、競争力の「日米逆転」宣言から「再逆転」に対する焦燥へと転換し、あるいは日本的生産システムの普遍性論からアメリカに学ぶリエンジニアリング論へと変転する傾向を見せた。こうした変わり身のはやい議論の特徴として、「一事が万事」という観察態度がある。トヨタ・システムの特徴を自動車産業全体にあてはめ、自動車産業の生産システムをすべての産業にあてはめるという態度である。本書は、このような態度とは無縁である。多様なタイプの企業が競争を繰り広げている現実を過不足なく理論化しようとする企業類型論を発展的に継承しているからである。こうして、DRAM市場における「日米逆転」とMPU市場におけるインテルの支配、そして今後の展望が整合的に、冷静に語られているのである。

 第二に、評者自身の問題関心との関わりで、開発・生産システムの特徴と課題が多面的に解明されていることに注目したい。

 まず研究開発システムと生産システムの統合的性格である。近年、研究・試作・量産のハーモナイゼーションや、開発が生産をシミュレートしていることを強調する議論が有力になっている。本書の場合、そのことが工場パイロット制やコピー・イグザクトリー思想などの事例によって具体的に、設備や場所がどうであるかといったレベルに踏み込んで統合性が示されているのである。

 次に、半導体製造装置産業・企業が独自に分析されていることである。おそらく類書にない、開拓的な意義を持つ部分だと思われる。半導体は、メカニズムを制御するシステムの核心をなしている。その半導体を製造する装置は、機械をつくる機械としての工作機械と類似の意義を持つのではないだろうか。とすれば、製造装置企業の技術が半導体企業の生産システムを支える関係にメスが入ったことはきわめて重要であろう。

 さらに、ともすれば最新鋭のイメージで語られやすい半導体企業の生産システムが、意外に同期化・標準化されていないことと、その意味が明らかにされたことである。「流れ作業組織」や「オートメーション」とはいいがたいシステムである。このような生産システムでは、開発・生産リードタイムを短縮しながら投資効率は下げないという相反する要請を満たすことに困難があって当然だろう。プロダクト・イノベーションの激しさがプロセス・イノベーションを伴わずにはいられないという状況の中で、開発・生産システムを固定することができず、技術も標準化されにくいのであろう。その結果、新製品による利益もあがるが設備投資費用も膨張していく。

 そこでさらに問題を拡張してみたい。こうした事態は、技術と市場の急速な発展局面ゆえの一時的なことなのだろうか。それとも、現代の巨大企業においては、あるいはその一定部分については、常態とみなすべきなのだろうか。仮に後者とすると、生産システムのフレキシビリティに新たな側面が生じていることになる。この場合、製品の変化に対して混流生産や平準化生産、円滑な段取り替えでは対応しきれず、生産ラインとシステムがたびたび変更されることを前提としなければならない。システムの変更をどうフレキシブルかつ低コストで行うかという、いわばメタシステムのフレキシビリティが問われてくる。そこでまた製造装置産業との関係が重要になってくるだろう。こうした問題を掘り下げるために、本書は格好の理論的基礎を提供しているのである。

 第三に、戦略・組織・行動の関係についてである。まず、企業類型論、競争戦略論、企業構造論を発展的に継承しようとする論理がクリアーであり、評者自身も共感するところが大きい。特に坂本和一の企業構造論について、企業論としてその意義と限度を正面から論じ、企業の各階層のありようを戦略との関係で解きあかすところに動態化の可能性を見いだしたところには、納得させられた。

 しかし、そのフレームワークの貫徹の度合いについては、濃淡があるように思われる。戦略はもともと不確定な未来に対する構想を含み、取捨選択を含むものである。そこから、一方では戦略策定の独自の意義があり、他方では戦略と異なる組織や企業行動が生じる。思わぬ失敗もあれば怪我の功名もあり、戦略と組織、企業行動が一致しないからこそダイナミズムが生まれる。本書でも、マイクロプロセッサ市場をめぐるインテルの戦略とその転換の巧みさなどについて、こうした性格がとらえられている。しかし、多くの箇所では、戦略と組織・行動があまりにも見事に一致している。これが半導体産業の事実だと言われればそうなのかもしれないが、著者の方法論と関わっているようにも思える。著者は第1章で、組織が戦略を生み出す場となっていることと、戦略にしたがって組織がつくられることの両面を認めており、評者もそれには同感である。しかし、具体的分析の中で著者が後者の側面についてについて述べるとき、できあがった組織から出発して、それを導いた戦略との対応を解説する場合が多い。組織をつくり、行動し、構想どおりの、あるいは思わざる結果に直面し、組織をさらに再編するという過程については述べられないのである。例えば、東芝をはじめとする日本の多事業統合企業がDRAM強化を図った際には、どのような展望に基づいて取捨選択を行ったのか、その判断は研究開発体制の構築過程にどのような特徴を刻印したか、日米逆転は戦略通りなのか幸運や怪我の功名の側面もあったのか、といった問題は取り扱われない。結果としてのDRAM強化と現在の研究開発体制が戦略に対応したものとして叙述されるのである。戦略とその結果の対応関係は、組織をつくって環境に働きかける過程の分析に媒介されてこそ、説得力を持つのではないだろうか。

 いずれにせよ、本書は、半導体企業という研究領域の開拓としても、また半導体企業を通じた現代企業の理論的解明のためにも、様々な手がかりを残してくれている。著者は、今後の展望を語ることに禁欲的であるが、パソコンの普及からマルチメディア化とネットワーク化へという情報化の進展に対応させて、集中戦略をとる企業が優位に立った時代からの転換を見通しているようである。新たな時代の解明のためにも、本書の成果は重要な基盤となるであろう。

 


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