授賞式について
2023年11月2日(木)開催
植松 良公(一橋大学)
Uematsu, Y. and T. Yamagata (2023). "Estimation of sparsity-induced
weak factor models," Journal of Business & Economic Statistics,
41, 213-227.
講評
植松良公氏はスパース性に誘導される「弱い」ファクターモデルを定義し,その推定方法を提案した。ファクターモデルの「強弱」とは,モデルの分散共分散行列における固有値の発散オーダーにより定義される。選択したファクターが同様にクロスセクション次元N
のオーダーで発散するモデルが従来の「強い」ファクターモデルに対し,それぞれがN 以下のオーダーで発散するモデルが「弱い」ファクターモデルである。植松氏は「弱い」ファクターモデルの推定法としてSOFAR推定量を提案し、漸近論/非漸近論に基づく精緻な理論分析を行っている。実証分析では,シンプルな債券利回りの予測問題のほか,識別問題のため通常は難しいスパース負荷行列の解釈可能性や,ファーマ・フレンチ5
ファクターモデルにおいて説明されなかった「弱い」ファクター の観測,そして株式リターンにおけるファクターの「強弱」について考察している。従来の「強い」ファクターモデルより「弱い」ファクターモデルへの拡張は、現実の経済・金融時系列データの共分散構造に照らして、本質的な貢献である。社会科学における統計/データ科学研究の奨励を目的とする本賞にふさわしい成果である。
2023年7月6日
細谷賞選考委員会
委員長 松田安昌(東北大学)
委員 大屋幸輔(大阪大学)
委員 新谷元嗣(東京大学)
委員 照井伸彦(東京理科大学)
委員 Peter M. Robinson(London School of Economics and Political Science)
植松良公氏略歴
2007/3, 一橋大学経済学部卒業
2013/9, 博士(経済学, 一橋大学大学院経済学研究科)、
2014/4, 日本学術振興会特別研究員(DC1, PD)
2018/4, 東北大学大学院経済学研究科 講師
2022/4, 一橋大学大学院ソーシャル・データサイエンス研究科 准教授
左より小田中研究科長、植松先生、細谷先生