「工業経済学」から「産業発展論」への科目名変更について


掲載日:2005425

 東北大学大学院経済学研究科・経済学部の科目「工業経済学」(英文名Economics of Industry)は、2005年度より「産業発展論」(英文名Industrial Development)に変更されることになりました。この変更は、経済学研究科に会計大学院(会計専門職専攻)が設置され、既存専攻が経済経営学専攻に再編成される機会に行われるものです。変更後の名称は川端が提案し、研究科内の手続きを経て教授会で承認されました。担当も引き続き川端が行います。「工業経済学」の他にもいくつかの科目名が変更されることになっています。

 新科目名の「産業発展論」は、時間の経過に即した産業の変化を取り扱う現状分析科目です。対象は個別産業、地域や国の産業構造、国際分業を含みます。変化とは、イノベーションによる変化、比較優位構造の変化、資本主義発展の中での個別産業の位置の変化、個別産業における技術、組織、労使関係、戦略の変化など様々なものを含みます。その変化を、発展という見地からとらえることになります。発展の基準、可能性、あり方が常に問い直されることは言うまでもありません。

 「産業発展論」と「工業経済学」、また他の科目との関係は、以下のようになります。

 まず、産業発展論は、経済発展・資本主義発展との関わりで産業をとらえることで工業経済学の視点を受けつぎます。「工業経済学」はその対象によって「農業経済学」と対比されるものでしたが、「産業発展論」は「農業経済学」との対比のほかに、その視点によって「産業組織論」(Industrial Organization)と対比されるものです。産業組織論が主として産業組織を効率性の観点から研究するのに対して、産業発展論は時間に即した変化を取り扱うのです。

 次に、産業発展論は、対象を工業から産業全般に拡大します。今日の多様な企業間関係や企業内取引を取り扱うためには、工業と他産業をともに取り扱える枠組みや、工業と他産業との関係を取り扱うことができる枠組みが不可欠です。この角度から見れば、産業発展論は産業組織論と対比されるだけでなく、その研究成果を吸収すべき位置にあります。もちろんこれは工業と他産業の相違を無視することではありません。生産力体系における工業と他産業の位置の違い、製造過程と他のプロセスの違いなどは、それ自体が研究対象となるのです。

 産業発展論は、英文ではIndustrial Developmentとなり、「産業開発論」と同じになります。このことは、今日的な用語法の中では大きな意味を持ちます。すなわち、経済開発・経済発展(Economic Development)の一分野としての産業発展という位置づけが明確になります。つまり、産業発展論は、先進国の産業動態だけではなく途上国の工業化・産業化も対象とするし、開発経済学の成果も吸収すべきなのです。この数年の工業経済学ゼミにおいては、経済開発の一環としての産業発展や工業化を学びたいという留学生が増えており、この名称変更は、彼/彼女らの当然の要請に応えるものでもあります。

 こうして産業発展論は、ともすれば切り離して論じられがちな先進国産業と途上国産業を、統一的に取り扱う枠組みを探求するのです。

 産業発展論は、産業の変化を取扱い、したがって歴史的な視角をとりますが、現代産業を対象とする現状分析科目です。足元の現実を日々変化するものとしてとらえるという姿勢は、歴史家だけのものではなく現状分析家にも必要なことであり、もとより工業経済学もそのような視点を取っていました。

 このように、「産業発展論」は、「工業経済学」の問題意識と学問的達成を受け継ぎながら、産業組織論、開発経済学の視点をとりいれ、今日の経済社会と経済学の変化により適合しようとするものです。今後、担当者として研究・教育に励んでまいりますので、皆様のご指導・ご鞭撻をお願いいたします。

 

20053

 

川端 望

※この文章は、『研究調査シリーズ』No. 12に掲載されています。


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