update:1998年7月16日
工業経済学ゼミナール(大学院・1998年度)
川端 望
凡例:(A)とある文献・資料・論点は、Reading Assignment、もしくは課題である。「全体を通した参考文献」の中の(A)は、全員が必ず読むこと。各章の(A)については、レポーターは必ず読むか、もしくは調査して意見をまとめてくること。それ以外の資料・論点については参考にすること。レポーターは、ここで取り上げられている論点を深めても、他の論点を提出してもよい。
本学図書館などから入手困難なものは、他大学・機関からの取り寄せなどに工夫すること。レファレンスの訓練も授業の一貫である。また、川端研に相談に来てもよい。
■全体を通した参考文献
ピオリ,マイケル=J/セーブル,チャールズ=F(山之内靖・永易浩一・石田あつみ訳), 第二の産業分水嶺, 筑摩書房,
1993/03
大量生産の行き詰まりと、より柔軟な生産体制への移行を展望する、生産システム論争の一つの出発点。
大野耐一,
トヨタ生産方式, ダイヤモンド社, 1978
トヨタ生産方式を開発した当事者の証言(A)。
新郷重夫,
トヨタ生産方式のIE的考察:ノン・ストック生産への展開, 日刊工業新聞社, 1980/08
門田安弘,
新トヨタシステム, 講談社, 1991/06
トヨタ生産方式を学ぶ上で最適と鈴木が推す文献。少なくともどちらか一方を必ず読むこと。(A)
坂本清,
国際競争力と「日本的生産システム」の特質(1)(2)(3):「トヨタ生産方式」の評価にかかわって, 『経営研究』(大阪市立大学)第42巻第2号,第43巻第1号,第43巻第2号,
1991/07,1992/05,1992/07
坂本清(坂本・林正樹編著), 日本型生産システムの特徴と革新(『経営革新へのアプローチ』), 八千代出版, 1996/06
以上の二つの論文は、ある程度テキストへの批判を意識して書かれている。ME技術の位置づけがテキストと異なる。(A)
ブレイヴァマン,H(富沢賢治訳), 労働と独占資本:20世紀における労働の衰退, 岩波書店, 1978/08
資本主義下での技術発展が労働の単純化と役割の縮小をもたらすことを主張した代表的な文献。労働に注目したフレキシブル生産への注目によって、同書は批判されることになるが、なお議論の一つの極として重要。
山本潔,
日本における職場の技術・労働史:1854〜1990年, 東京大学出版会, 1994/02
鈴木が何ヶ所かでふれている、産業の技術特性による生産システムそのものやその効果の相違について、歴史的・実証的に明らかにした研究。さしあたり序章を必ず読むこと(A)。
坂本清(編), 日本企業の生産システム, 中央経済社,
1998
「日本的生産システム」がもっとも注目された石油危機からバブル崩壊までの時期について、産業別に生産システムの実態を明らかにしたもの。9月発行予定。
宗像正幸,
「日本型生産システム」論議考:その含意をさぐる, 『国民経済雑誌』(神戸大学)第174巻第1号, 1996/07
「日本型生産システム」論議は、なぜ注目を集めるのか、技術・経済・社会のどのような変化を反映しているのか、論議の基準はどのように設定されるべきか。この論議の持つ可能性と危険性は何か、など、社会科学方法論的な考察をおこなっている。
アベグレン,J.C./ストーク,G(植山周一郎訳), カイシャ, 講談社, 1986
「日本的経営」を論じた代表的な文献の一つ。
野村正實, トヨティズム:日本型生産システムの成熟と変容, ミネルヴァ書房, 1993/12
トヨティズムを労働経済学的に研究した代表的な文献の一つ。
藤本隆宏, 生産システムの進化論:トヨタ自動車にみる組織能力と創発プロセス, 有斐閣, 1997/08
トヨタ生産方式を情報と組織能力の理論によって経営学的に考察した文献。
ウォマック,ジェームズ=P・ルース,ダニエル・ジョーンズ,ダニエル=T(沢田博訳), リーン生産方式が世界の自動車産業をこう変える。, 経済界, 1990
リーン生産方式論を打ち出して欧米・日本で反響を呼んだ文献。
※本書への書評(A)
奥林康司, 鈴木良始著『日本的生産システムと企業社会』(北海道大学図書刊行会、1994年3月)(書評), 『証券経済』第189号、日本証券経済研究所, 1994/09
高橋祐吉, 鈴木良始著『日本的生産システムと企業社会』(書評), 『大原社会問題研究所雑誌』1995年4月号, 1995/04
浪江巌, 鈴木良始著『日本的生産システムと企業社会』(書評)『現代日本のホワイトカラー 社会政策学会年報第39集』), 御茶の水書房, 1995/06
■序章「日本の国際競争力の特質」の参考文献と論点
「競争力の構成システムとして日本的経営の諸特質を再構成して認識する」という接近法の有効性をどう考えればよいか。
Abanathy, Clark, Kantrowによる日米自動車生産費の比較では、部品内製率の相違はどのように処理されているのだろうか(A)。
Abanathy, W.J.,
Clark, K. B., Kantrow, A. M.(日本興業銀行調査部訳),
Industrial Renaissance: Producing a Competitive Future for America (『インダストリアル:ルネサンス:脱成熟化時代へ』), Basic
Books(TBSブリタニカ), 1983
他の産業の場合は、70-80年代に日米の競争力はどのような状態にあったのか。日本企業が優位に立っていたとすれば、その要因は何か。
鉄鋼業に関しては、以下の文献を参照。
松崎義, 日本鉄鋼産業分析, 日本評論社,
1982/03
著者は、製品多様性における日本の優位を、@ME技術とは別の次元で説明されなければならない部分と、AME技術の能力を生かしきる日本企業の何らかの特質、の二つの部分に分けている(32頁)。これは、コストや品質にはあてはまらないのか。
また前後するが、著者は、80年代におけるNC工作機械の普及率が、日・米・西独でそれほど大きく相違していないことをあげている。それでは、NC工作機械の普及は日本の加工組立産業の競争力に貢献しなかったのか。以下の文献を参照。
河邑肇, NC工作機械の発達における日本的特質:アメリカとの対比において, 『経営研究』(大阪市立大学)第46巻第3号, 1995/11
河邑肇, NC工作機械の発達を促した市場の要求:日米自動車産業における機械加工技術, 『経営研究』(大阪市立大学)第47巻第4号, 1997/02
著者は「全体として見れば日本の競争力の特質は製品技術にはない」といい、VTR、液晶表示装置などを例外的なものと見ている(23頁)。しかし、VTRや液晶表示装置、またテレビを例外とみてよいのだろうか。テレビについては以下の文献を参照
平本厚, 日本のテレビ産業:競争優位の構造, ミネルヴァ書房, 1994/10
自動車産業についても、「プロダクトを前提にした開発プロセスの効率性」(23頁)と言い切っていいのだろうか。以下の文献を参照。
藤本隆宏・クラーク,キム・B(田村明比古訳), 製品開発力:日米欧自動車メーカー20社の詳細調査, ダイヤモンド社, 1993/02
日米のFMSで製品多様化能力に差が生じたのはなぜなのか。さしあたり、引用文献の原典で調べること(A)。
Jaikumar, R.,
Postindustrial Manufacturing, Harvard Business Review, 1986/11-12(『ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス』1987年2・3月号に邦訳あり)
ME技術のフレキシビリティについて技術論的に考察した研究として、以下を参照。
渋井康弘, ME技術と「柔軟性」, 『名城商学』第43巻第4号, 1994/03
■第1章「日本的生産システムの構造」の参考文献と論点
1,2章の両方にわたる問題だが、アメリカ的大量生産方式とJIT生産方式は、どのような基準で対比されているのか、よく読むこと。
JIT生産システムとCIMの関係をどのようにとらえればよいか。この関係のとらえ方いかんによって、ME技術の位置づけがかわってこないだろうか。以下の文献のうち、最低どちらかにあたって調査せよ(A)。
, CIM構築をめざした松下電工のJIT革命, 『工場管理』第36巻第12号、日刊工業新聞社, 1990/12
平野裕之, JIT・CIMイノベーション, 日刊工業新聞社, 1991
「JIT生産システムの考え方の最大の特徴は、在庫縮減の追求」(48頁)というとらえ方について。
1)大野耐一や門田安弘、新郷重夫はどう言っているか確認せよ(A)。
2)このとらえ方ならば、フォード・システムとはどのような関係になるか。宗像正幸, 「フォーディズム」論の再興とその意味連関について, 『経済研究論集』(広島経済大学)第14巻第2号, 1991/06等を参考にせよ。
3)このとらえ方が最適かどうか考えよ。
著者はなぜ、「U字型ライン=多工程もち」の構成要素の分析にこだわっているのだろうか(特に59-60頁)。この理由を考えよ。総じて著者は、生産システムの構成要素への分解と、その相互関係を、競争力への貢献という観点から執拗に分析しているが、この意味するところは何か。
日本的生産システムの特質をJIT生産システムと日本的労働編成とし、「自働化」を外すことの意味について
1)大野耐一や門田安弘、新郷重夫はどう言っているか。
2)こうしたとらえ方をどう評価するか考えよ。
著者は、「多能工」、現場作業員によるQC活動と改善、現場作業員の保全活動などが「日本企業の労働に特徴的なものとして輪郭を明確にした」時期を、1970年代以降と述べたり、第一次石油危機以降と述べたりしており、微妙なゆらぎがみられる。産業別、機能別に少しずつ異なるのは当然として、若干の実例にあたって検討してみる価値はある。以下を参照。
森五郎・松島静雄, 日本労務管理の現代化, 東京大学出版会, 1977
嶺学, 労働の人間化を求めて, 法政大学出版局, 1991
京谷栄二, フレキシビリティとはなにか:現代日本の労働過程, 窓社, 1993/07
田中博秀, 日本的雇用慣行を築いた人達(その二):山本恵明氏にきく(3), 『日本労働協会雑誌』第282号, 1982
川端が参加した研究会でも以下で一つの見解を打ち出している。9月に刊行予定なので参照されたい。
坂本清(編), 日本企業の生産システム, 中央経済社, 1998
自動車産業について、組立メーカーと部品メーカーの相違、前者から後者への影響に着目した以下の論文も参照。
植田浩史, 自動車産業の企業階層構造:自動車メーカーと1次部品メーカーの結合関係(1)-(3), 『季刊経済研究』(大阪市立大学)第12巻第3号・第13巻第1号・第14巻第2号, 1989/12-1991/09
植田浩史, 自動車部品メーカーにおけるフレキシビリティの形成と労使関係(1)(2):全A労働組合連合会と加盟単組の組織と活動, 『季刊経済研究』(大阪市立大学)第15巻第3号,第4号 1992/12-1992/03
アメリカ的生産方式における労働編成について、さしあたり以下の引用文献等で確認するとよい。
田中博秀, 雇用慣行の日米比較, 『日本労働協会雑誌』第229号, 1978
「JITシステムとの関係ではなくME技術との関連で現場作業者の職務範囲の拡大傾向如何を探るという議論の方向」について以下の文献で確認し、JITによる職務範囲拡大とME化によるそれとの相互関係について考えよ(A)。
奥林康司, ME技術革新下の日本的経営, 中央経済社, 1988
以下の文献も参考になる。
野村正實, 熟練と分業:日本企業とテーラー主義, 御茶ノ水書房, 1993
徳永重良・杉本典之(編), FAからCIMへ:日立の事例研究, 同文舘, 1990/02(特に第10章)
田中博秀, 解体する熟練:ME革命と労働の未来, 日本経済新聞社, 1984/07
■第2章「日本的生産システムと国際競争力」の参考文献と論点
フォード・システムにおける工程間の同期化・流れ生産の到達点について、以下の文献などを参考に調べよ(A)
渋井康弘, フォード・システム:人間の「機械化」に基づく大量生産方式, 『三田学会雑誌』(慶応大学)第84巻第1号, 1991/04
塩見治人, 現代大量生産体制論:その成立史的研究, 森山書店, 1978/11
藻利重隆, 経営管理総論(第2新訂版), 千倉書房, 1965
塩見治人(溝田誠吾・谷口明丈・宮崎信二と共著), フォード社と自動車産業(『アメリカ・ビッグビジビッグビジネス成立史』), 東洋経済新報社, 1986
「アメリカ的大量生産方式は、JITシステムと同じレベルでの流れの形成にT型車時代のフォード社において限界があるが最も近づき、その後、後退していった」というのは、興味深い歴史的仮説である。フォードに関する膨大な資料から調べてみる価値があるが、さしあたり以下を参照。
Hounshell, David A.( Shiomi, Haruhito and Wada, Kazuo
eds.), Planning and Executing ‘Automation' at Ford Motor Company, 1945-65: The
Cleveland Engine Plant and Its Consequences( Fordism Transformed: The
Development of Production Methods in the Automobile Industry), Oxford Unversity Press, 1995
アメリカの自動車産業において、実際に部品在庫が多く持たれているのかどうか、さしあたり以下の引用文献で確認せよ。
森正勝・油井直次, アメリカ自動車産業の生産管理システム, 『工場管理』第28巻第8号, 1982/08
「習熟効果の組織的追求」を強調する西田稔の見解と含意を確認せよ。西田説は、産業組織論のフィールドで、戦略的企業行動を理解し、その政策的含意を探る努力と結びついているようである。
西田稔, 日本の技術進歩と産業組織:習熟効果による寡占市場の分析, 名古屋大学出版会, 1987
西田稔(小西唯雄編), 戦略的行動論(『産業組織論の新展開』), 名古屋大学出版会, 1990/04
西田稔(小西唯雄編), 戦略的行動論(『産業組織論の新潮流と競争政策』), 晃洋書房, 1994/04
習熟効果より広い概念であるが、経験効果の戦略的な追求を重視する以下のテキストも参照して、競争優位の構築手段としての位置づけを考えよ。
石井淳蔵・奥村昭博・加護野忠男・野中郁次郎, 経営戦略論(新版), 有斐閣, 1996
自主保全は、どこまでライン労働者ができるものなのか。さしあたり引用記事をもとに考えよ。
, , 『日経産業新聞』1990年4月9日, 1990/04
工程安定性が、より上位の工程技術水準への段階変化を容易にする前提だというのはどういうことか。引用文献からより具体的に調べよ。
増島勝, 品質を上げればコストは下がる:TDK式「新・源流管理」, ダイヤモンド社, 1992
「本章で見た生産システムの競争力要因は下請企業の生産過程にも同様に妥当する」とあるが、下請企業の規模、生産分業構造の中で占める位置によって、その程度は違わないのだろうか。また、機械工業においては、生産分業構造が、独自の競争力要因となっていないのだろうか。調べよ(A)。参考文献として、例えば以下のものを参照。
中央大学経済研究所(編), 自動車産業の国際化と生産システム, 中央大学出版部, 1990/09
植田浩史, 自動車産業の企業階層構造:自動車メーカーと1次部品メーカーの結合関係(1)-(3), 『季刊経済研究』(大阪市立大学)第12巻第3号・第13巻第1号・第14巻第2号, 1989/12-1991/09
渡辺幸男, 日本機械工業の社会的分業構造:階層構造・産業集積からの下請制把握, 有斐閣, 1997/12
野村正實, 熟練と分業:日本企業とテーラー主義, 御茶ノ水書房, 1993(127頁の引用論文は改稿されてこの本に収められている)
日本的生産システムは加工組立型産業においてもっとも競争上の威力を発揮し、装置型産業ではそうする余地が少ないとされている。また、鉄鋼業は中間的性格をもっているとされる。重要な検証課題である。また、仮に装置型産業では生産システムの違いがあらわれる余地が少ないとすれば、そこでの競争優位は何によって大きく左右されるのか。以下は、日本鉄鋼業に関する、私なりの回答なので、刊行され次第、参照されたい。
川端望(坂本清編), 高炉メーカーの生産システムと競争戦略:石油危機からバブル崩壊まで(『日本企業の生産システム』), 中央経済社, 1998
■第3章「勤労意識・勤労態度と『コーポラティズム』論」の参考文献と論点
この主題については、本章でとりあげられている調査と、ドーアの以下の文献を読むことが望ましい。
Lincoln, James R./ Kalleberg,
Arne L., Culture, Control, and Commitment. A Study of Work Organization and
Work Attitudes in the United States and Japan, Cambridge University Press, 1990
ドーア,ロナルド・P, イギリスの工場・日本の工場(上)(下):労使関係の比較社会学, 筑摩書房, 1993/05
リンカーン・コールバーグ調査の詳しい紹介について以下を参照。本書に収録されていない図表はコピーして配布せよ(A)。
鈴木良始, 日本的企業システムの『コーポラティズム』的把握と日本人労働者の勤労態度に関する覚書(上)(下), 『産研論集』(札幌大学)第8号・第9号, 1991/03-1992/03
コーポラティズム概念について調査し、それを労使関係論に適用する場合、および日本の労使関係に適用する場合の意義や問題点を考えよ。さしあたり、以下の文献は必ず読むこと(A)。
山口 定, ネオ・コーポエラティズム論における“コーポラティズム”の概念, 『思想』1982年2月号、岩波書店, 1982/02
「日本的生産システム」イメージでもっとも主体として想定されやすい大手・中堅企業男子生産工の仕事コミットメントが、国際的にみて高くないという以下の調査結果は注目に値する。関連質問を含めて確認しておく価値がある。
ワークエスィクス調査研究委員会(編), 先進国病と労働倫理の変容に関する調査研究, 日本生産性本部労働部, 1985
リンカーン・コールバーグ調査とは逆に、日本の労働者の仕事コミットメントが高いことを示す調査結果はあるかどうか、調べるとよい。
QCサークルなど小集団活動の意義について、以下の文献も参照せよ。
野村正實, トヨティズム:日本型生産システムの成熟と変容, ミネルヴァ書房, 1993/12
■第4章「『能力主義管理』と日本の労働者
職務給・職能給/能力主義管理について、さしあたり以下の文献を参照
日経連能力主義管理研究会, 能力主義管理:その理論と実践, 日本経営者団体連盟弘報部, 1969
総評・中立労連春闘共闘委賃金専門委員会(編), 職務給:その理論と闘争, 労働旬報社, 1966
大河内一男・有泉亨・金子美雄・藻利重隆, 賃金管理:現代労働問題講座第3巻, 有斐閣, 1966/12
小池和男, 職場の労働組合と参加:労資関係の日米比較, 東洋経済新報社, 1977/02
経営側の当事者からみた労務管理の変遷の事例として
折井日向, 労務管理二十年:日本鋼管(株)にみる戦後日本の労務管理, 東洋経済新報社, 1973/09
その批判的な読解として
熊沢誠, 新編日本の労働者像, 筑摩書房, 1993/02(「職場社会の戦後史」)
絶対考課・絶対区分について、以下の文献で確認したいので、配布の上、説明せよ(A)
斉藤清一, 昇格管理基準の設定と運用実務, 『賃金実務』No.616, 1989
日本の賃金制度における能力評価を高く評価する例として以下を参照。
石田光男, 賃金の社会科学:日本とイギリス, 中央経済社, 1990
著者が「能力」概念の拡張に執拗にこだわって分析している理由は何だろうか。「能力」が使用される社会的文脈、法的権利との関係、労働者間競争との関係、などから考えてみよ。
「能力考課」「業績考課」「情意考課」がどのような関係にあると著者はみているか。丁寧によみとること。
「公式には問題にできない行為を実質的に中心的な問題行為として抽出し排除する」行為とはどのようなものか。注57に記されている以下の文献などで確認せよ。
大木一訓・愛知労働問題研究会(編), 大企業労働組合の役員選挙, 大月書店, 1986
鎌田慧, トヨタと日産, 講談社, 1992
渡辺一雄, 体験的企業別組合論(『日本的労使関係の光と陰』), 『経済評論別冊』1982年5月号, 1982/05
「能力」概念の拡張や「情意考課」の差別に対して、労働者が否定の側面を吹っ切って工程の側面に適応するありさまを、以下の文献で確認せよ。
中村章, 工場に生きる人々:内側から描かれた労働者の実像, 学陽書房, 1982
「『能力主義管理』の強制は、労働者間競争を強いることによってではなく、その前段において高い労働水準を確保する」、という著者のオリジナルな見解について、以下と対比しながら考えてみよ。この論点は、日本企業を「競争」と「参加」の契機でとらえようとする「会社主義」論への示唆とその相対化にもつながる。
労働者間競争を強調する見解として以下を参照。
黒田兼一(戦後日本経済研究会編), 競争的職場秩序と労務管理(『日本経済の分水嶺』), 文眞堂, 1988
黒田兼一(木元進一郎編著), 職能資格制度と競争的職場秩序(『激動期の日本労務管理』), 高速印刷出版事業部, 1991
黒田兼一(戦後日本経営研究会編), 戦後日本の労務管理と競争的職場秩序(『戦後日本の企業経営』), 文眞堂, 1991
会社主義論について、以下の文献を参照。提唱者による前者は「参加」の原理、後者は「競争」の原理を軸としている。
馬場宏二(東京大学社会科学研究所編), 現代世界と日本会社主義(『現代日本社会1課題と視角』), 東京大学出版会, 1991/05
渡辺治, 「豊かな社会」日本の構造, 労働旬報社, 1990/04
また、テキストの見解の背景となる、「日本の労働者はそれほど主体的に競争に埋没してはいないように思われる」という判断については、以下を参照せよ(A)。
鈴木良始, 競争主義的労働者像への反省, 『経済と経営』(札幌大学)第23巻第3号, 1992/12
職能資格制度を中心とした「能力主義管理」は、今日、大企業経営者にどのように評価され、再編されようとしているか。以下の文献を参照して説明せよ(A)
日本経営者団体連盟新・日本的経営システム等研究プロジェクト, 新時代の「日本的経営」:挑戦すべき方向とその具体策, 日本経営者団体連盟, 1995/05
■第5章 日本型企業社会の「強制」・「自発」の管理構造と労使関係
日本的生産システム・日本的経営をめぐる論争における、日本の労働者の働きぶりの理解に関する諸論点を、注1の四つの文献、およびケニー・フロリダ論文をきっかけとして起こった『窓』誌上の論争をまとめた著作を参照して整理せよ。
Dohse, K., Jurgens, U. and Malsch T., From
'Fordism' to 'Toyotism' ?: The Social Organization of
the Labor Process In the Japanese Automobile Industry, Politics and Society,
Vol. 14 No. 2, 1985
加藤哲郎・スティーブン,ロブ(編), 日本型経営はポスト・フォーディズムか?, 窓社, 1993/10(A)
京谷栄二, フレキシビリティとはなにか:現代日本の労働過程, 窓社, 1993/07
トヨタでかつて実施されていた「生産手当」(集団的能率給)は、第4章で描かれた「能力主義管理」一般よりも、強い「働きぶり」に作用していると思われる。以下の第1章を参照。
野村正實, トヨティズム:日本型生産システムの成熟と変容, ミネルヴァ書房, 1993/12
著者が説く、集団的職場編成を基盤とする「強制」と「自発」の結合は、理論的整合性として巧みな説明であると思う。また、「強制」と「自発」を二律背反と取られる枠組みへの批判として成立している。しかし、マネジメントと職場集団がどのような関係にあるかの実証と結びつけるという課題も、本書とはまた別に存在するのではないだろうか。というのは、「専制」の不在と労働者の「自発」性を示す研究の影響力は、職場集団の自律性を実証的に示すことでなされているからである。たとえば以下の文献を参照。
小池和男, 職場の労働組合と参加:労資関係の日米比較, 東洋経済新報社, 1977/02
小池和男, 仕事の経済学, 東洋経済新報社, 1991
仁田道夫, 日本の労働者参加, 東京大学出版会, 1988/01
技能の企業特殊性をめぐる論点を以下で確認せよ。
ジャコービィ,S.M.(荒又重雄・木下順・平尾武久・森杲訳), 雇用官僚制:アメリカの内部労働市場と”良い仕事”の生成史, 北海道大学図書刊行会, 1989/03 (さしあたり、「日本語版読者への序文」を参照)
氏原正治郎, 日本労働問題研究, 東京大学出版会, 1966、に所収の「大工場労働者の性格」
尾高煌之助, 企業特殊的技能の実相, 『経済研究』(一橋大学)第42巻第4号, 1991
年功賃金の根拠が、本書ではもうひとつはっきりしないので、各自意見を述べよ(A)。最近の議論の紹介と批判として以下の文献の第5章を参照。
金子勝, 市場と制度の政治経済学, 東京大学出版会, 1997/09
本書から「一人一人の労働者にとっての内部的な選択可能性の喪失」の構造を学ぶことを前提に、次の課題として、過去のどの時点まで、どのような選択可能性があり、それがなぜ、どのように失われたかを学ぶことを勧めたい。とりあえず、以下の業績を参照。
清水慎三(編), 戦後労働組合運動史論, 日本評論社, 1981
労働争議史研究会(編), 日本の労働争議(1945〜80年), 東京大学出版会, 1991/03
■終章 日本的生産システムと労使関係
著者は、JPSが「80年代以降も引き続き内外の企業に浸透しつつある」と見ており、その変化の方向をJITを基礎にしたCIMとみている。この点について、問題としたい。
1)まず、「自動化がJPSのうえに進展するとき最も有効」であり、JITが「CIMにおける生産計画(MRP)負荷を緩和し、効率化する」というのは、どういう根拠とメカニズムによるのか。以下の引用文献その他をもとに考えよ(A)
, CIM構築をめざした松下電工のJIT革命, 『工場管理』第36巻第12号、日刊工業新聞社, 1990/12
平野裕之, JIT・CIMイノベーション, 日刊工業新聞社, 1991
伊藤秀男, CIM構築のためのかんばん方式とMRPシステムとの統合, 『経済科学』(名古屋大学)第38巻第2号, 1991
2)バブル崩壊後、生産方式に新たな動きが出ている。これをどう考えればよいか。動向を整理し、意見を述べよ(A)。自動車の組立ラインについては以下を参照。
生産システム研究会, 工場見学記録第1集:生産システム研究会研究調査中間報告T, 『大阪市立大学経済研究所ワーキング・ペーパー・シリーズ』No.9502, 1995/04
坂本清(坂本・林正樹編著), 日本型生産システムの特徴と革新(『経営革新へのアプローチ』), 八千代出版, 1996/06
Ogasawara, Koichi/ Ueda, Hirofumi, The Changing
Nature of Japanese Production Systems in the 1990s and Issues for Labour Studies, Asia Pacific Business Review, Vol. 2
No. 4, 1996
電機・電子産業、特にライン生産からの大きな変化と言われるセル生産方式については、研究が少ない。さしあたり以下の論文、特に下を参照。
秋野晶二, 日本企業の国際化と生産システムの変容:電機・電子産業の海外進出とセル生産方式(上)(中)(下), 『立教経済学研究』(立教大学)第50巻第1号,第2号,第51巻第1号、 1996/07,1996/10,1997/07
日本的生産システムの肯定的側面と否定的側面、その変革の展望について意見を述べよ。全員に対する課題とする。
以上