update:1998年7月22日
1998年度工業経済学ゼミナール(経済学部)
川端 望
参考になる論点やテキスト、一部は宿題を提示する。宿題の部分は必ず質問する。ただし、いくらでも論点が提示できるテキストなので、予め宿題とする論点は最小限にとどめた。各自、自分のわからないところや、問題を感じたところで疑問点・討論点を出すこと。ただし、宿題をより深めて、自分の意見を述べてもよい。
基礎概念や用語について質問することがあるので、レポーターはわからないところをすべて調べたり、自分なりに考えたりしておくこと。レポーター以外の人は、調べなくてもどんどん質問してよい。
文献・資料の入手方法については、1)購入する、2)学部図書室で借りる、3)図書館で借りる、4)他機関からとりよせる、5)川端に相談する、などの手段をつくすこと。これも勉強のうちである。
古典や参考文献の読み込み、データの古い部分の更新と、それによる評価の修正、新しい理論による修正・補足が相当必要になるので、報告の2週間以上前から予習することが望ましい。
■「はしがき」および全体に関わる文献について
工業経済学・工業経営学・産業経済学の類書については検索中だが、こうした学問領域の課題・方法・構成について立ち入って解明した邦語文献として、以下を参照。ただし、産業組織論・産業構造論に限った解明は無数にあるので、とりあえず除いた。
有沢広巳(有沢編), 産業論のはじめに(『現代日本産業講座T 総論T近代産業の発展』), 岩波書店, 1959/10
村田富二郎, 産業総論, 日本評論社,
1989/07
高橋哲雄, 産業論序説, 実教出版,
1978/12
宮沢健一, 産業の経済学第2版, 東洋経済新報社, 1987/10
富澤修身(金田重喜編著), 現代工業と工業経済論(『現代工業経済論』), 創風社, 1991/04
岡澤宏, 産業経済論序説, 啓文社,
1979/05
富山和夫, 現代産業論の構造, 新評論,
1973/07
坂本和一, 現代工業経済論, 有斐閣, 1988/04
鈴木幸毅(編集代表), 工業経営研究の方法と課題, 税務経理協会, 1997/11
著者は、経済学に「生産力の学」と「生産関係の学」の両面が含まれると考えているようである。この見解の意義や問題性について考えよ。
「生産力の学」としての「技術論」とはどのような学問か。この本とは別の課題だが、以下を参考に、この本を研究しながらあわせて考えよ。
中村静治, 新版・技術論論争史, 創風社,
1995/10
宗像正幸, 技術の理論:現代工業経営問題への技術論的接近, 同文舘, 1989/08
嶋啓, 技術論論争, ミネルヴァ書房,
1977/10
中村静治, 技術論入門, 有斐閣, 1977/11
中峯照悦, 労働の機械化史論, 渓水社,
1992/12
, テクノロジーの思想:岩波講座現代思想13, 岩波書店,
1994/07
本書はマルクス経済学の方法・理論をベースに書かれている。労働日・協業・分業・マニュファクチュア・機械・工場制度などに関して、以下の文献をくり返し参照。特に第1巻第3編・第4編
マルクス,カール(資本論翻訳委員会訳), 資本論, 新日本出版社,
統計データを収集する際の最新の手引きとして以下を勧める。
木下茂・土居英二・森博美(編), 統計ガイドブック(第2版), 大月書店, 1998/03
■第1章 生産力の発展と工業生産の諸形態
ビュヒャーは、どのような理由で工業生産形態を@家内仕事、A賃仕事、B手工業、C問屋制度(家内工業)、D工場工業、の5形態に区分したのか。また、これらの併存についてはどう考えているか。この点を踏まえた上で、改めて評価してみよ。以下の文献、特に「四 工業経営式の史的発展」。(宿題)
ビュヒャー,カール(権田保之助訳), 国民経済の成立:増補改訂1922年第16版, 栗田書店, 1942
レーニンのビュヒャー批判に関連して。批判点は中村のまとめたとおりでよいのか。また、そうだとしたら、レーニン自身は、@マニュファクチュアと工場の違い、A問屋制度が特定の工業形態ではないことを、どのように示しているのか。また、彼はなぜこの点にこだわったのか。以下の文献、特に「第7章 機械制大工業の発展」を参照して確認せよ。(宿題)
レーニン,ヴェ=イ(レーニン全集刊行委員会訳), ロシアにおける資本主義の発展:大工業のための国内市場の形成過程(『レーニン全集第3巻』), 大月書店, 1954/03(原著初版1899年、ビュヒャー批判のある第2版は1908年。岩波文庫もあり)
中峯照悦によれば、単純協業と並んで複雑協業という労働形態があり、それがマニュファクチュアの生成経路の二つのタイプに対応している。以下を参照。
中峯照悦, 労働の機械化史論, 渓水社,
1992/12
器械が、「道具と器械の中間形態の、いわば機械様の手工的道具」だというのは、具体的にどのようなものを指しているのか。
マニュファクチュアが、資本制的家内労働の大量的使用をもたらしたというのは、どういうことか。以下の文献、特に、第1巻第12章や、経済史・技術史の文献にあたって調べよ。
マルクス,カール(資本論翻訳委員会訳), 資本論, 新日本出版社,
■第2章 機械と大工業
以下の機械について、図版を探して配布し、その動作と歴史的意義について説明せよ(宿題)。技術史の本、図鑑、などを参照すること。
・ジェニー紡績機
・ミュール紡績機
・飛杼
・カートライトの力織機
・ワットの蒸気機関
著者の説明にもかかわらず、マルクスの言う「機械」、「本来の機械」、「発達した機械」のそれぞれの定義や相互関係がつかみにくいと私は思う。テキストを読み込んで交通整理をせよ(宿題)。更に進んで、以下の文献などを参照しながら考えよ。
マルクス,カール(資本論翻訳委員会訳), 資本論, 新日本出版社, (1巻4編13章)
中峯照悦, 労働の機械化史論, 渓水社,
1992/12
吉田文和, マルクス機械論の形成, 北海道大学図書刊行会, 1987/05
発達した機械、特に作業機の出現によって、「手労働のさいに必要とした制御機能のいくつかは無用となり、体力、エネルギーの一部も解放される」とあるが、「いくつか」「一部」に含まれるもの、含まれず、したがって人間の労働の側に残るものは何だろうか。
現在は、原動機・電動機・作業機の関係はどのようになっているケースが多いか。考えてみよ。
「このような連鎖体系は、原料が単一の液体、可塑物または柔軟な繊維などの場合、いちはやく工程間の接続そのものを機械化することでなしとげられた。しかし、こうして出来たものを集めて組立てを行うような業種、たとえば製靴、鉄製機械のような場合は、多能機、万能機の単純化、その特殊化されたものとしての専用機の製作まで俟たなければならなかった」(43頁)。この部分は、産業別の機械化の速度を制約する技術的条件を論じている。なぜ、ここに「多能機」「専用機」という問題が入り込むのだろうか。
著者自身の見解は以下を参照
中村静治, 現代資本主義論争:80年代の経済学のために, 青木書店, 1981/01(第3章)
アメリカにおける機械化と大量生産の成立過程を産業別に確かめるには、以下を参照。
チャンドラー,アルフレッド=D.(鳥羽欽一郎・小林袈裟治訳), 経営者の時代:アメリカ産業における近代企業の成立(上)(下), 東洋経済新報社, 1979
「自動化ないし自動操作」の諸側面を考えるとき、搬送の自動化はどう位置づけたらよいか。
「機械の資本主義的使用の限界」は、これでよいのか。あるいは、テキストの基準は、一定の抽象レベルでの議論なのか。
現代における設備投資の計算事例をとりあげ、どのような要因が考慮されているか確認せよ。例えば以下を参照。
山本潔, 日本における職場の技術・労働史:1854〜1990年, 東京大学出版会,
1994/02
久保田正純・戦略的設備投資研究会(編), 戦略的設備投資の実際:「意思決定」から「監査」まで, 日本経済新聞社, 1995/07
女性労働者の使用の論理はテキストの記述で妥当か。「年令や性による」区分は「自然的区分」か。あるいは、当時妥当したとしても現代まで延長できるか、できないか。実際の生計費計算との関係での問題を指摘した以下の論文を参照。
大沢真理, 企業中心社会を超えて:現代日本を<ジェンダー>で読む, 時事通信社, 1993/08
大沢真理, 家族労働の搾取・労働力の価値・家族賃金イデオロギー, 『社会科学研究』(東京大学)第46巻第3号, 1994
中川スミ, 「家族賃金」イデオロギーの批判とマルクスの賃金論:現代資本主義と性別賃金格差論序説(『技術選択と社会・企業 社会政策学会年報第40集』), 御茶の水書房,
1996/05
中川スミ, 経済学とジェンダー:性別賃金格差論を手がかりに, 『賃金と社会保障』1188号・1996年10月下旬号, 1996/10
工場の労働編成は、より具体的にはどのようなものだったか。技術発展や管理思想の変化とともにどのようにかわってきたか。当時のイギリスの例について、さしあたり以下の文献を参照。より新しい研究は各自探索されたい。
堀江英一(編著), イギリス工場制度の成立, ミネルヴァ書房, 1971/10
堀江英一, 経済史入門(第3版), 有斐閣, 1979/03
日本の近現代について、以下の文献を参照。
山本潔, 日本における職場の技術・労働史:1854〜1990年, 東京大学出版会,
1994/02
特に、「(工場)労働を習い覚えるためにある特別の教育を必要とすることは少ない」「工場では生涯的に一つの部分機械に仕えさせられる」という点は、実際にはどうなっているか。
「労働者の間にある職業的偏見」が克服されるためには、労働者の間の分業関係が緩和されr、大多数の労働者が類似の条件に置かれねばならないのではないだろうか。「支配人」、「職工長」、「技師」、「特殊な技能者」、「事務員」などの分業関係は、そうした方向へ向かっているだろうか。
大工業では「(工場)労働を習い覚えるためにある特別の教育を必要とすることは少ない」とうことと、「ブルジョアジーは大工業の必要のために、労働者の子弟に読み書き、算術を学ばせねばならなくなって初等教育を普及させてゆくが、機械をつかいこなす能力を引き出すために、さらに技術教育をひろめ」以下は矛盾しないのか。
マルクスはどう言っていたか確認せよ。
マルクス,カール(資本論翻訳委員会訳), 資本論, 新日本出版社,
結局、機械制大工業が確立した後にも、労働者が必要とする技能とは何なのか。日本の「熟練」研究史について、以下をみよ。
野村正實, 熟練と分業:日本企業とテーラー主義, 御茶ノ水書房, 1993
■第3章 工業諸部門の分化と発展
以下の機械の図版を探して配布し、その動作と歴史的意義について説明せよ(宿題)
・ヘンリー・モーズレーのスライド・レスト付旋盤
・ウィルキンソンの中ぐり盤
・パドル炉
・ルブラン法
国民経済の工業化は「工作機械工業を中核とした機械器具工業の確立を内容としたもので、たんなる機械制工業の発展ではない」という著者の考えについて論評せよ。特に、後発国の工業化を念頭に置いて考えよ。なお、「工業化」と「産業革命」の概念は異なるが、日本の産業革命を分析しながら後発国の産業革命の理論問題にも立ち入ってる研究として、以下の文献の第4章を参照。
石井寛治, 日本経済史(第2版), 東京大学出版会, 1991/03
また、第二次大戦後の東アジア工業化についての理論的・歴史的考察として以下を参照。
金泳鎬, 東アジア工業化と世界資本主義:第4世代工業化論, 東洋経済新報社, 1988/05
原料転換の歴史的な意義と経済的推進力、大工業の「一つの弾力性、一つの突発的飛躍的な拡大能力」が分析されているが、環境問題を念頭に置くと、評価が変わってこないかどうか、考えよ。
生産部門の多様化の論理は、より現代的な条件を考慮して再構成しなくてよいか
・株式会社における所有と経営の分離(経営者報酬と企業利潤の分離)
・大衆消費社会の成立
■第4章 資本蓄積と技術進歩
著者は機械体系の発達、新機械の導入の契機をどのようにとらえているのか。またそれはどのような理論的根拠に基づくのか。特に、@82-83頁5行目の説明と、A83頁6行目-16行目の説明、B83頁17行目-85頁14行目の説明は、同じことなのか、異なるのか(A)。
83頁で例示されている自動ミュール紡績機の導入の動機、およびデトロイト・オートメーションの動機について、それぞれ以下の文献で確認せよ。
マルクス,カール(資本論翻訳委員会訳), 資本論, 新日本出版社,(1巻4編13章5節)
鈴木良始(坂本清・貫隆夫・宗像正幸編著), アメリカ大量生産システムの成熟と変容(『現代生産システム論:再構築への新展開』), ミネルヴァ書房, 1998(年末刊行予定。原稿は川端研にあるので閲覧希望者は申し出ること)
Hounshell, David A.( Shiomi, Haruhito and Wada, Kazuo
eds.), Planning and Executing ‘Automation' at Ford Motor Company,
1945-65: The Cleveland Engine Plant and Its Consequences( Fordism Transformed:
The Development of Production Methods in the Automobile Industry), Oxford Unversity Press, 1995
著者は説明Bでマルクスの特別剰余価値論を援用している。近代経済学のイノベーション論では、同一の現象はどのようにとらえられているか。さしあたり、古典理論として以下を参照。
シュムペーター,J=A(塩野谷祐一・中山伊知郎・東畑精一訳), 経済発展の理論:企業者利潤・資本・信用・利子および景気の回転に関する一研究(上)(下), 岩波書店, 1977
より具体的な場面での機械導入の契機をどのように考えるべきか。特にME技術導入の経営的動機はどのように捉えるべきか。以下の研究、特に第6章を参照せよ。
宗像正幸, 技術の理論:現代工業経営問題への技術論的接近, 同文舘, 1989/08
マルクスが「原資本は、その新たな形態のなかに、その古い形態の背後で行われた社会的進歩を、ただで取り入れる」と述べているのはどういうことか。この命題は、どのような前提のもとで妥当し、また妥当しないか。総じて、この章の第1節は、どのような抽象レベルで論じられているか。
「各個別資本の超過利潤の追求が、結果的には逆に平均利潤率の低下をもたらす」のはどのようなメカニズムによるのか、意見を述べよ(A)。なお、これが市場との関係、具体的には過剰生産と産業循環に媒介されるとする以下の理論を参照。
大友伸, 利潤率傾向的低下法則と全般的過剰生産恐慌:『資本論』と恐慌論の関係についての考察(3),
研究年報『経済学』(東北大学)第50巻第4号, 1989/03
大友伸, 恐慌および産業循環の理論的構造, 研究年報『経済学』第51巻第2号, 1989/11
独占体の出現と資本主義の独占段階については、以下の文献が古典であり、いまなお読む価値がある。
ヒルファディング,ルードルフ(岡崎次郎訳), 金融資本論:資本主義の最近の発展に関する一研究, 岩波書店, 1982
レーニン,ヴェ=イ(副島種典訳), 帝国主義論, 大月書店, 1961/03
以下の装置について図版を探し出して配布した上で、その動作のしくみと技術史的意義について説明せよ(A)
・ベッセマー転炉
・ジーメンス、マルチンの平炉
・トーマス転炉
さしあたり以下を参照。
中沢護人, 鋼の時代, 岩波書店, 1964
「あとから進んでいる国々は、まさにおくれているというそのことによって、前者よりも新しい、優れた技術水準の機械をもって装備することが可能である。逆にいって、イギリスよりも数十年もおくれて産業革命をはじめた国々は、イギリス商品の国際競争力に打ち勝つには、先進国イギリスの最新技術をとりいれ、いきなりイギリス企業に匹敵する大規模経営として発足しないかぎり成功はできないのである」(99頁)という意見について。
著者の上記の見解と、低賃金の後発国で技術進歩に阻止的影響が出ることを論じた47-48頁の見解の関係はどうなるのか。
後発国の工業化と企業者活動について経営史的にリファインした以下の見解も参照。
中川敬一郎, 比較経営史序説, 東京大学出版会, 1981/03
■第5章 合理化
ドイツ合理化運動の動機と特徴については、私も勉強が足りないので詳しくない。さしあたり、以下の新しい研究を参照せよ。
前川恭一・山崎敏夫, ドイツ合理化運動の研究, 森山書店,
1995/04
著者によれば、テーラー自身が科学的管理法の発生の基礎はアメリカ資本主義の「トラスト時代」であった。テーラーの著作にあたって確認せよ。
テーラー,フレデリック=W(上野陽一訳・編), 科学的管理法, 産能大学出版部,
1969
テーラーが科学的管理法によって「出来高払い制度の欠点をなくそうとした」というのはどういうことか。
なぜ機械製作工場が大工業に転化した場合については、工作機械が万能、多能機であり、単能、専用機ではなかったのか。以下の文献の3章2節で著者の見解を確認して評価せよ。
中村静治, 現代資本主義論争:80年代の経済学のために, 青木書店, 1981/01
小銃、ピストル、時計、ミシン、収穫期など大量市場向け既製品の量産と結びついた、アメリカにおける工作機械の専用化、単能化、作業標準化と互換式生産方式の生成について、新しい研究として以下を参照。また、そのことが経済史・経営史研究に投げかける問題にも注意。
森杲, アメリカ職人の仕事史, 中公新書,
1996/10
著者が示している、フォード・システムを、「製品の標準化こそが基本であり、それを基軸に」諸モメントが統一され、結びつけられているとする見方、また「『個々の独立した機械に代わる本来の機械体系』が、自動車という機械生産のなかに現れた」と位置づける見方について、考えよ。フォード・システムの専門的研究は多く、私の勉強も足りないが、日本で有名なものをいくつかあげておく。
藻利重隆, 経営管理総論(第2新訂版), 千倉書房, 1965
塩見治人, 現代大量生産体制論:その成立史的研究, 森山書店, 1978/11
Hounshell/ David A., From the
American System to Mass Production/ 1800-1932: The Development of Manufacturing
Technology in the United States, Baltimore and London: The Johns Hopkins
University Press, 1984
中峯照悦, 労働の機械化史論, 渓水社, 1992/12
フォード・システムとフォーディズムでは、意味はどのように異なるか。さしあたり以下を参照。
宗像正幸, 「フォーディズム」論の再興とその意味連関について, 『経済研究論集』(広島経済大学)第14巻第2号, 1991/06
生産性向上運動は、具体的にはどこで、何をきっかけとして、どのような個人・団体を提唱者として開始されたのか。また、それは日本においてどのような役割を果たしたのか。実はまだよくわかっていないので、さしあたり以下を参照。
藤村大時郎・四宮俊之, 第30回大会統一論題「戦後経営史とアメリカナイゼーション 生産性向上運動の国際比較」討議報告, 『経営史学』第30巻第1号、東京大学出版会, 1995/04
オートメーションの性格をめぐる論争、およびME技術・メカトロニクスの性格をめぐる論争について、さしあたり以下を参照。「オートメーション」と「ME技術」「メカトロニクス」ではどのように含意が異なるかも考えよ。
渋井康弘, 労働手段の発展段階に関する一考察, 『三田学会雑誌』(慶応義塾大学)第81巻第2号, 1988/07
渋井康弘, 装置的労働手段の現段階:「制御」を基軸にすえて, 『三田学会雑誌』(慶応義塾大学)第82巻第4号, 1990/01
中峯照悦, 労働の機械化史論, 渓水社,
1992/12
坂本清, ME(マイクロ・エレクトロニクス)の技術的機能の本質について, 『経営研究』(大阪市立大学)第45巻第2号, 1994/07
「第?の産業革命」、あるいは現代的なものでは「……がもたらす情報化社会」という思考法の問題について考えよ。最近の社会学的研究として以下がユニークな視点を提起している。
佐藤俊樹, ノイマンの夢・近代の欲望, 講談社,
1996
「完全なオートメーションあるいは無人工場」について、著者は本書以後見解を変えている。以下の文献の第13章にあたり、変更後の見解を確認し、意見を述べよ(宿題)。
中村静治, 新版・技術論論争史, 創風社,
1995/10
現代の合理化であるリストラクチャリングやリエンジニアリングは、どのような性格をもつものか、考えてみよ。
■第6章 独占資本主義と技術進歩
寡占・独占が技術進歩に及ぼす影響に関して、古典的見解を二つと、産業組織論における最近の動向を紹介した文献を一つあげておく。
シュムペーター=J=A(中山伊知郎・東畑精一訳), 資本主義・社会主義・民主主義, 東洋経済新報社, 1995/06(第1部)
レーニン,ヴェ=イ(副島種典訳), 帝国主義論, 大月書店, 1961/03
小西唯雄編, 産業組織論の新潮流と競争政策, 晃洋書房, 1994/04
「技術進歩」、「技術革新」、「イノベーション」のそれぞれの意味について考えよ(宿題)。
独占体の形成が技術進歩に及ぼす影響についての著者の見解は、かなり錯綜している。第1節、第2節の論旨を整理せよ。
1)競争の刺激による技術進歩と独占の関係。著者の見解をどう整理し、どう評価するか。
「主要産業部門に独占が形成され、とくに生産財の生産が独占体の支配下におかれるようになると、技術進歩の成果の全般的な伝播は妨げられ、生産拡大効果は抑制されるようになる」ことを一般論として言ってよいか。
「とくに華やかな消費財の氾濫が、『豊かな社会』の幻想をつくりだし、独占体こそが技術進歩の担い手、主たる推進者であるとの想念をみちびいているが、これが技術進歩の本道でないのは明かである。それはむしろ頽廃である」と断定しよいか。
「独占体は、投下資本の回収を困難にするような新技術に対してははなはだ保守的であるが、他方ではいっそうの膨張政策を進めるためにも、また国内・国外の競争相手に打ち勝ってより多くの利潤を確保するためにも、新機械・新材料の採用や研究投資に向かわざるをえない」というのは、これまでの記述と整合するか。。
2)研究・発明・開発の主体について。
研究・開発への資源投入をあらわすデータを、戦後の日本企業について収集し、表とグラフで示せ。原資料は、以下のものがオーソドックスであり、1972年版から本学に所蔵している。そして、このデータを使って、テキストに書かれている研究・発明・開発の主体の問題を考えよ。特に、以下の問題を判断する基礎となるデータを提示しながら考えよ。データは詳しいほどよいが、最低限、1975年から5年毎に時系列化してとること(宿題)。
総務庁統計局, 科学技術研究調査報告, 日本統計協会,
・研究・開発の主体は、企業か、大学か、研究機関か。それぞれの人員や資金投入と構成比はどう変化しているか。
・企業、大学、研究機関の研究費は、どこから支出されているか。
・大企業と中小企業のどちらが研究・開発に人員や資金を投入しているか(規模の指標は色々あるので、従業員数でみよ)。
大企業内部で独創的な研究・開発ができるかどうかは、研究開発管理のあり方にもかかっているのではないか。社内ベンチャーなどはどう見たらよいか(ゼミの日に見たビデオでの富士通の例を参照)。
3)国家による研究・開発費の負担を、主として軍事研究・軍事技術開発との関わりでとらえること、またこれを「停滞性、腐朽性」ととらえることをどう見るか。さしあたり、アメリカ、旧ソ連、中国についての代表的な、また最新の研究を参照。
ディグラス,R.(藤岡惇訳), アメリカ経済と軍拡:産業荒廃の構図, ミネルヴァ書房, 1987/04
藤岡惇, 核冷戦は米国地域経済をどう変えたか, 『立命館経済学』(立命館大学)第45巻第5号, 1996/12
藤岡惇, 米国における冷戦経済の形成, 『立命館経済学』(立命館大学)第46巻第4号, 1997/10
西川純子(編), 冷戦後のアメリカ軍需産業:転換と多様化への模索, 日本経済評論社, 1997/06
市川浩, 科学技術大国ソ連の興亡:環境破壊・経済停滞と技術展開, 勁草書房, 1996/10
橋田坦, 中国の「軍転民」:軍需産業の民需転換, 『東北大学大学院国際文化研究科論集』第4号(東北大学), 1997
著者の見解を評価する際に、事例を念頭に置いて考えよ。文献は数多くあるが、さしあたり以下を勧める。上記のビデオも参照。
・半導体産業における寡占・競争と研究開発。および同書への拙評
肥塚浩, 現代の半導体企業, ミネルヴァ書房,
1996/11
川端望, 書評 肥塚浩著『現代の半導体企業』, 『立命館経営学』(立命館大学)第36巻第2号, 1997/07
・日本の大企業におけるイノベーションについて。大企業内部の技術蓄積、開発戦略、研究開発管理、異分野からの新技術、成熟した寡占体制のもとでの製品開発などの論点に関わって興味深い事例が多い。
伊丹敬之・加護野忠男・宮本又郎・米倉誠一郎(編), イノベーションと技術蓄積:ケースブック日本企業の経営行動3, 有斐閣, 1998/05
特に、ケース1(沢井実:ブロック建造法)、ケース5(椙山泰生・新宅純二郎:ソニーの家庭用VTR)、ケース12(福嶋路:花王「アタック」)、ケース14(青島矢一・福島英史:カシオのデジタルカメラ)を参照。
・中小企業の製品開発の例
研究室に問い合わせよ。
■第7章 技術進歩と産業循環
日本で景気判断に主として用いられるデータ、および国際的な景気動向の判断のためのデータを、最低限、以下のとおりに収集し、パソコンで表とグラフにして配布せよ(宿題)。原則として、できるだけ以前から時系列的にそろえることが望ましい。自力での計算が困難なものや、適切な表・グラフが図示されているものに限り、そのコピーでも可とする。データの性質についてもおさえておくこと。その上で、データからどのようなことが言えるか考え、発表せよ(宿題)。
・景気のもっとも一般的な指標である経済企画庁のDIとCIを以下から調べよ。
経済企画庁調査局, 経済月報, 大蔵省印刷局,
・日本の鉱工業生産指数の時系列データ。鉱工業、工業の下位分類、特殊分類(資本財、耐久消費財、などの分類)のそれぞれについて、デフレーターをそろえて実質値を作成し、実数と前年比の成長率を求めよ。データは何種類かの統計書に載っているが、例えば以下を参照。
日本銀行調査統計局, 経済統計年報, 日本銀行,
・世界各国の鉱工業生産指数について、1970年頃からの一覧表・グラフにせよ。可能なら実質値にせよ。また、対前年比の成長率を求めよ。例えば以下の統計を参照。あるいは、図書館2号館の国連コーナーなどを見よ。
, 日本経済を中心とする国際比較統計, 日本銀行国際局,
・日本の設備投資の時系列データ。全産業、業種別データ、企業規模別データをそろえよ。ただし、「法人企業統計季報」から自力で計算すると途方もない時間がかかるので、今回は以下を参照してよい。景気と設備投資の関係についてもっとも詳しいのは平成7年度版である。
経済企画庁, 平成7年度年次経済報告, 『エコノミスト』8月21日臨時増刊号、毎日新聞社,
1995/8
経済企画庁, 平成9年度年次経済報告, 『エコノミスト』8月4日臨時増刊号、毎日新聞社,
1997/08
経済企画庁, 平成8年度年次経済報告, 『エコノミスト』8月19日臨時増刊号、毎日新聞社,
1996/08
また雇用の最新動向と鉱工業指数の基準変更について、以下を参照。
, 産業連関表で予測する就業構造変化 "専門化"がもたらす大量失業, 『東洋経済統計月報』1998年7月号、東洋経済新報社, 1998/07
, 1995年基準の鉱工業指数, 『東洋経済統計月報』1998年7月号、東洋経済新報社,
1998/07
前章で、独占資本主義の下での技術進歩の主要な方向が、製品開発と軍事研究・開発に求められていると思うが、1)そのことと本章での戦後日本の技術進歩に関する記述の関係はどう整合するのか。同じ著者の実証分析を参照して確認した上で、各自評価せよ。
中村静治, 戦後日本の技術革新, 大月書店,
1979/09
また2)新製品・新産業の創出は景気循環にどのような影響を与えると考えればよいか。さしあたり以下の理論と事例を参照。
大友伸, 企業者行動と景気循環についての一考察:シュムペーターの「新結合」を手がかりとして, 研究年報『経済学』(東北大学)第56巻第1号, 1994/06
大友伸, 電子技術を基礎とする日本企業の商品開発とバブル経済, 研究年報『経済学』(東北大学)第56巻第2号, 1994
景気循環は、技術進歩のみに影響されるわけではない。日本の景気循環について、さしあたり以下を参照。この本は、データの整理の仕方や読み方についても参考になる。
篠原三代平, 戦後50年の景気循環:日本経済のダイナミズムを探る, 日本経済新聞社, 1994/08
1990年代の不況は不良債権問題に見られるように、金融的な要因によっても大きく左右されている。この不況について、さしあたり以下を参照。
宮崎義一, 複合不況:ポスト・バブルの処方箋を求めて, 中公新書, 1992/06