経済学入門Aの最終成績について


掲載日:2002/7/31
改訂:2002/8/2(追試験申請者についての説明補足)

 

 

 経済学入門Aの最終成績について、以下の情報を公開する。なおこの情報公開は私の授業方針によるものであり、他の授業には適用されない。

 

■採点方法について

 採点は、まず当初予定通り小レポート25%、期末試験75%の配点で素点をつけた。しかし、期末試験の採点を行う中で、授業内容が量的に多すぎたのではないかと考えるに至った。というのは、素点のままでは合格率が極めて低い一方で、期末試験の正答率が50-59%の答案の中に、授業には常時出席していたことがうかがえる答案や、ある程度勉強していることがうかがえる答案が多数見られたからである。

 後述するように、明らかに勉強不足という答案も多いし、それは当人の責任である。しかし、授業内容が多すぎたことによる学生諸君の困難は私の側にも責任があるだろう。そこで一定の救済措置をとることにした。具体的には、各人の素点の20%を平常点として与えることにした。したがって、最終点数は素点の1.2倍となっている。平常点を加えた結果100点を超えた者の最終点数は100点とした。平常点の水準を素点の20%としたのは、期末試験の正答率50%の者までが救済に値すると判断したからである。また、期末試験点数でなく小レポートを含む素点をベースに平常点を算出したのは、小レポートと期末試験の配点の相対的比重を変更しないためである。

 この救済措置はきわめて単純であるが、以下の特徴を持っているので、公平さの観点から望ましいと判断した。

・この措置により、0点の者を除いて採点対象者全員の点数が素点より向上する。
・採点対象者間の相対的な関係は基本的に変わらないし、上下の逆転はまったくない。ただし、上記の100点に関する調整や四捨五入の結果、点数のわずかな差がなくなって同点となることはある。
・小レポートと期末試験の点数の相対的な比重は変わっていない。

 端的に言えば、「点数が上がって救済された者はいるが、点数が下がったり順位が落ちたりした者はいない」ということである。

 

■最終成績について

 以下は、最終点数による最終成績である。

 

受講者数

採点対象者数

履修放棄者数

追試験申請者

A80点以上)

B70-79点)

C60-69点)

D59点以下)

合格者(C以上)

人数

287

274

11

2

77

60

50

87

187

対受講者比率

100.0%

95.5%

3.8%

0.7%

26.8%

20.9%

17.4%

30.3%

65.2%

対採点対象者比率

 

100.0%

 

 

28.1%

21.9%

18.2%

31.8%

68.2%

 

最高点

最低点

平均点(採点対象者)

100

5

66.1

 

・履修放棄者とは、小レポートを提出せず、かつ期末試験を受験しなかったか放棄したものである。
・追試験申請者とは、『学生便覧』記載の「東北大学経済学部規程」第19条、および「専門科目履修上の注意」3-3.1-(4)にしたがい、やむを得ない理由で試験を受けられなかったことを理由に、試験終了後3日以内に教務掛に追試験を願い出た者である。追試験実施が認められるかどうかは、9月に決定する。(8/2改訂)
・受講者から履修放棄者と追試験申請者を除いた者が採点対象者である。(8/2改訂)
・小レポートを病欠した1名は、期末試験点数の比重を100%として採点している。

■教官の立場からのコメント

 小レポートについては以前コメントしたので、以下、期末試験を中心にコメントする。

 最終採点結果の特徴は、AとDの比重が高く、成績に二極分解の傾向が見られることである。

 Aの比重が高いのは救済措置の効果でもあるが、実際に高いレベルの小レポートや試験解答を提出している者も少なくない。これらの諸君には、今後のさらなる活躍を大いに期待したい。A評価を得た者の多くは、期末試験の成績がよかった者でもある。そして、期末試験の優秀答案を読むと、高得点の理由について二つの可能性が感じられる。一つは、徹底した受験準備の努力である。試験監督の際に教室内を巡回した結果、テキストにレジュメやノートの内容を徹底的に書き込んできている学生がある程度見られた。これが高得点につながっているのだと思う。また、A評価者の多くは、レジュメには書いていないが講義では強調したことを出題しても見事に正解している。よくノートを取っていたのであろう。これらは復習と受験準備を徹底したことを示唆している。もう一つは、授業の理論的内容を体系として理解しているということである。単なる暗記を超えて、講義で繰り返し強調した首相とアドバイザーの対立点や、市場経済の機能とその限界について、全体として整合性の採れるような形で頭に入れていると思われる答案がいくつか見られた。問題V−4やV−5の論述が優れていることからこれが読みとれるのである。いずれの理由によるものにせよ、優れた成果を前にすると、私としても授業のやりがいがあったというものである。

 Dの比重が高いことは深刻である。D評価をとった原因は、ほとんどの場合、期末試験の点の低さである。そして、D評価の者の期末試験の答案は、いくつかの例外を除き、勉強していないことがはっきりとわかる答案である。例えば、レジュメをテキストに書き込んでさえいれば解答できる問題や、テキストの該当部分を発見すれば解答できる問題にも答えられなかった者が少なからずいた。「テキスト持ち込み可、書き込み可」という条件を事前に知らされておきながらこれでは、やる気そのものを疑わざるを得ない。何らかの理由でこの科目を重視せずに他の科目の試験に全力を注いだという諸君は別として、合格するつもりで受験してD評価をとった諸君は、自らの勉強の姿勢や方法について考え直して欲しい。

 合格者の数についてもコメントが必要であろう。レジュメ配布の経験から言うと、授業には毎回200人以上が出席していた。これ自体はたいへん喜ばしく、私にとっても励みになった。しかし、合格者が187ということは、授業に出ていながら合格できなかった学生が少なからずいるということを予想させる。その理由は、私の授業技術水準の低さを別にすれば(これは救済措置で相殺したつもりである)、授業の受け方にあるのではないかと思う。いま思えば、「面白そうに話を聞いてはいるが、ノートを取っていない」という学生が少なからず見受けられた。私はその表情に、テレビ番組を眺めている視聴者のようなものを感じた。私としても、入学早々諸君をがっかりさせては申し訳ないと思い、そこそこ工夫したつもりなので、面白がっていただけること自体はたいへんありがたい。しかし、そこで止まってしまい、語られた内容を身につけなければ勉強ではない。授業はバラエティ番組やトークショーとは違うのである。
 ただし、この推測がどのくらいの学生にあてはまるかはわからない。もっと異なるところに理由があるのかもしれない。

 授業評価アンケート結果がまだ集計中で読めていないのだが、これを読めば、私の認識も改まるかもしれない。結果がまとまり次第、集計値を報告すると同時に、寄せられた意見についてリプライする予定である。

 いずれにせよ、この入門科目の結果を今後の教訓としていただきたい。

 

※このコメントに関する意見があれば送ってください。個別に回答します。なお、匿名でホームページに内容を公表することがあるのでご了解ください。

 


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