1999年12月15日現在
川端 望
Tel&Fax 022-217-6279
Mailto:kawabata@econ.tohoku.ac.jp
HP http://www.econ.tohoku.ac.jp/~kawabata/index.htm
■戦後経済発展の次期区分(表1-1)
1945-55年 戦後復興
1956-73年 高度経済成長
1974-79年 減量経営・ME技術革新
1986-90年 日本的生産システム全盛期
1991年以後 ?
製造業の経営動向からみた持続的成長と90年代不況(表1-3)
加工貿易から集中豪雨輸出、海外生産展開へ
石油危機・バブル崩壊という転換点
■産業構造の転換
<小報告>
基幹産業の交代
産業構造全体――製造業の比重の低下とその重要性
石油危機以降の特徴
製造業の構成
石油危機以降の特徴
■労働動向(表1-4)
第3次産業への労働力移動
労働時間の延長と短縮――過労死問題は何を表現しているか
協調的労使関係と賃上げの鈍化
◇参考
坂本清(坂本編著)_生産システムの日本的展開と現代企業(『日本企業の生産システム』)_中央経済社_1998/12(テキスト)
渡辺治_「豊かな社会」日本の構造_労働旬報社(現在は旬報社)_1990/04
■石油危機のインパクトと省エネルギーの追求
生産要素の相対価格の変化(追加図Y-1)
産業別に異なる影響(追加表Y-1、2)
重装置・素材産業
加工組立・機械工業
日用品産業
省エネルギー活動
重装置・素材産業におけるエネルギー原単位の低下(追加表Y-3)
■減量経営
生産能力拡張投資の削減と合理化投資の拡大
大手企業経営者と民間大手労働組合の妥協点
大幅賃上げの終焉
経営者による雇用確保と定期昇給の完全実施
労働組合が合理化に協力
出向、配置転換、一時帰休、新規採用抑制などによる雇用調整
移動に関する経営主導のフレキシビリティの形成
造船では希望退職、指名解雇実施
能力主義管理の普及(第4部で後述)
従業員間競争の濃密化
男子正社員への年功的運用と左翼・女性排除
■多品種・小ロット・大量生産システムの確立
歴史的前提――大量生産システムの形成史(略)
半導体産業の成長(]章で後述)
電卓戦争をきっかけとした量産体制の構築
多様な機器に装着され、性能向上、工数削減、工程短縮、資本財価格引き下げ(追加表Y-4)
ME(microelectronics)技術革新と多品種・小ロット生産システム
計画・管理システムの精緻化(鉄鋼。[章で後述)
NC(数値制御)工作機械と産業用ロボットの発達
中小工場でのNC化による専門加工企業の技術基盤強化(\章で後述)
大工場でのFMS(flexible manufacturing system)の形成
自動車では溶接がほぼ自動化され、組立は若干のロボット導入。
トヨタ生産方式の発展と普及(\章で後述)
異なる車種の混流生産による多品種・少ロット生産対応
部品メーカーへのトヨタ生産方式の展開
機械工業における国際競争力の確立と日本的生産システムの神話化
工程の複雑な加工組立産業(と鉄鋼業)における生産システムの優位
◇参考
坂本清(坂本編著)_生産システムの日本的展開と現代企業(『日本企業の生産システム』)_中央経済社_1998/12(テキスト)
橋元秀一_「雇用確保」の規範化と雇用慣行の変容(『現代日本の労務管理 社会政策学会年報第36集』)_御茶の水書房_1992
兵藤サ_労働の戦後史 下_東京大学出版会_1997
橋本寿朗_日本経済論_ミネルヴァ書房_1991
橋本寿朗・長谷川信・宮島英昭_現代日本経済_有斐閣_1998/08
佐武弘章_トヨタ生産方式の生成・発展・変容_東洋経済新報社_1998/11
鈴木良始_日本的生産システムと企業社会_北海道大学図書刊行会_1994/03
米倉誠一郎(森川英正・米倉編)_共通幻想としての日本型システムの出現と終焉(『日本経営史5高度成長を超えて』)_岩波書店_1995/12
■フレキシビリティと労使関係
日本における経営側の主導性
労働者統合
階層的下請システム
◇参考
坂本清(坂本編著)_生産システムの日本的展開と現代企業(『日本企業の生産システム』)_中央経済社_1998/12(テキスト)
(1)繊維産業とは
<小報告>
■関連企業
各工程の担い手
川上(ファイバー、糸生産)――原糸メーカー
紡績企業(織り、無地染め、加工も)
合繊企業(ファイバーと仮撚糸生産。その後は系列企業が賃加工することも)
川中(織編加工)――織布専業企業、編立専業企業、染色専業企業、加工専業企業
川下(アパレルの企画、縫製、小売)――縫製企業(一貫、またはパーツ毎、種類毎)
産地における小零細企業間の分業(特に川中)
メーカー以外の企業(糸商、服地商、商社、アパレル製造卸、小売)
循環的把握(狭義の生産を超えたプロセス全体におけるモノと情報の流れ)の重要性
糸から小売までのトータルとしての競争力が問われている
(2)分析の前提――他産業との情勢の違い
■価格決定力の喪失
中国品とイタリア品の挟み撃ちにあう日本製アパレル
輸入急増、供給過剰、国内生産減による体力低下
■企業間関係
アパレルの輸出競争力の弱さ
商社・アパレル企業による素材供給源のスイッチ(国内企業切り捨て)
統括者不在の「生生連携」問題
(3)構造調整の必要性とその困難性
■テキスト著者(富澤修身)の基本スタンス
日本繊維産業の弱体化は、自然の摂理によって生じているのではなく、かなりの程度が企業経営・産地システム・政策運営のまずさによって加速されている。適切な対応いかんによっては、新しい繊維産業のあり方がみえてくる。
■低価格量産品で途上国のキャッチ・アップにあった場合の戦略について
<小討論>
■QRS(クイック・レスポンス・システム)とクリエーション・システム
QRSとは何か(繊維産業構造改善事業協会による)
生産、流通関係の取引当事者の供給
適切な商品を、適切な場所に、適時に、適量を、適正な価格で提供することを目指す
情報処理技術の活用(追加図Z-1)
生産、流通期間の短縮、在庫の縮減などの合理化利益のシェア
→市場対応。モノと情報の流れに重点
クリエーション・システムとは何か
革新的な製品開発
アパレルの企画開発機能とこれに対応する素材生産・開発機能
→市場創造。モノと情報の創造に重点
■QRSとクリエーション・システムの性格対比
アメリカのQRSは相対的に量産によるコスト低減、リードタイム志向
ジーンズ、スポーツウエアなど。
相対的に大規模企業のリーダーシップによる
イタリアのクリエーションは相対的に小ロット・高級品、製品革新(追加図Z-2)
地元の多様な生産者
生産者を熟知したコンバータ(生産企画販売業者)によるフレキシブルな使い分け
高級品
QRS・クリエーション・グローバリゼーションを同時追求する日本(追加図Z-3)
トレード・オフの克服か、どっちつかずか(事例は後述)
■企業間関係の変化:バトンタッチ型長距離走から大規模二人三脚型短距離走への変化
部分最適化から全体最適化への転換の困難
情報の共有とコスト・利益のシェアの困難
リーダー不在の困難
最劣等者が全体を規定する困難
競争力低下
切り捨て(倒産・廃業)によるコミュニティ崩壊と雇用問題
(4)地球環境対策の遅れ
◇参考
富澤修身(坂本清編著)_繊維産業の転換と新生産システムの模索(『日本企業の生産システム』)_中央経済社_1998/12(テキスト)
富澤修身_構造調整の産業分析:大競争下の日本産業・企業の構造調整_創風社_1998/10
Porter, Michael E._Competitive Strategy_New York, The Free Press_1980(以下は邦訳)
ポーター,マイケル=E(土岐坤・中辻萬治・服部照夫訳)_新訂 競争の戦略_ダイヤモンド社_1995/03
(1)戦後史の概観――最終製品の立場からの概観
■アパレル産業の位置
弱い競争力
石油危機後の易きに流れる対応
インポートブランドブーム
生産拠点の中国進出
(2)構造転換を模索するアパレル産業
■マーケットイン
QRS(クイック・レスポンス・システム)ないし標準EDI(電子データ交換)による小売り・アパレル・素材の企業
間を連結。
問題:「契約が契約でない」取引慣行。情報処理技術だけではQRSやSCMはできないことに注意。
■クリエーション
デザイン機能の充実、素材加工開発
それだけでは経営が成立しない。定番・量産品も手がけないと稼働率は保てない。
■グローバル戦略
生産機能の海外展開
国内に必要な企画開発生産機能。
そこまで弱体化させると将来は暗い。
合弁企業。学習する中国側パートナーはやがてライバルに。
■過渡期の辛苦を和らげる方策――繊維産業の模索の先駆的意義
これから自動車、電機、機械も直面するであろう問題のテストケース
中国とも欧米とも異なる土俵を日本の生活文化・技術・技能を踏まえてつくりあげる
企業・業界・関連産業・非営利機関の役割分担を明確にしたネットワーク
市場にまかせてもうまれない。政策的対応必要。
(1)DM毛糸QRシステム――最終製品を生産し情報共有が容易と思われるケース
■T紡績の「DM毛糸QRグループ」(図2-1)
代理店在庫なし。物流センターからペリカン便で直送。
物流センターはJANコードでの入出庫管理
物流センター在庫が一定水準を切ると生産依頼
■流通面の問題
地方対応、小口対応、小零細小売りの対応
QRは市場創出にはとってかわれない
■生産面の問題
稼働率・生産性確保と在庫削減要請・実需のシーズン変動性の対立
注意:ここでいう平準化は総生産量の平準化。V2(2)で説明したのは品種別数量の平準化。
■企業間関係の視点から
T紡績の統一意思のもとにない独立企業間の取引だったら?→Win-winルールを決めないとコストのおし
つけあいに。
見込み生産と多品種による調整必要→中小零細企業の対応困難
(2)生産システムと情報化(M紳士服)
■M紳士服の特徴(追加図Z-4)
情報化によるコスト・在庫削減が進んでいるが、QRSではなく、クリエーション重点である。
ただし企画・開発特化でなく、クリエーションを高い製造能力、生産管理能力が支えている。その意味では
QRS的方向とクリエーション的方向を、後者に重点をかけながら両立させている例。
■自家生産の特徴
1960年代:レディーメイド(RM)とイージーオーダー(EO)の混流生産
1978年:「Mアポロ計画」。
生産期間短縮による在庫減
1点流し生産とオンライン工程管理
1981年:レディーメイド・オーダー・システム
ブランド戦略の展開。製造能力に支えられていることに注意。
総量の平準化生産
■クリエーションのメリットと課題
1点流しによる生産性の低さを中高級紳士服生産(ジバンシーなら10-23万円)でカバー
中高級品受注生産なので、QRSはメリットなく、海外進出と「品質革命」が問題。
(3)合繊メーカーの素材生産システム
■新繊維生産システムとLPU
T社ポリエステル事業の新繊維生産システム(図2-2)
目的:後引生産方式、日単位の納期管理、計画情報の重視、予定情報の次工程への転送、モノの動きと
情報の動きとの一致、オンライン伝送によるペーパーレス、データベースの拡充→見切りロス、機会ロス
の低減。
在庫30%減少、納期遵守率約80%向上。
顧客連携システムは未完成
産地のプロダクション・チームとの企業間関係(図2-3)
石川産地で合繊メーカーのPTに入っている織布企業は2-4%
一貫競争力強化のための囲い込みと、産地の生産力基盤の維持・発展の必要性の矛盾
量の確保と技能の継承
産地における商社依存構造の問題点(追加図Z-5)
■高付加価値品の見込み生産
販売部の希望量に基づいた月単位の見込み生産であり、受注生産ではない。
クリエーションとQRの中間だが、QRよりか。
■企画開発システム(追加図Z-6)
ニーズ、シーズ双方への対応
営業からも研究からも情報収集→「一貫競争力強化」
■技能
■一挙両得か虻蜂とらずか
クリエーションは西欧追随。
QRSは前提条件(手段の標準化と取引問題の解決)が未整備。コンピュータソフトが万能視されている
■(株)ワコールのケース:QRの側から
標準化とQRS
小売り情報を在庫管理に利用
多くの取引先で異なるフォーマット
予測しやすい商品特性とブランド力に支えられた自社生産=QRに好条件
QRSとクリエーション連動の困難
販売情報・在庫情報・生産情報は、リピート・在庫削減・増産には利用できるが、新製品開発には使えな
い。EDIによるQR対応でコストを浮かし、製品開発に投入、が現実。
◇2、3、4の参考
富澤修身(坂本清編著)_繊維産業の転換と新生産システムの模索(『日本企業の生産システム』)_中央経済社_1998/12(テキスト)
富澤修身_構造調整の産業分析:大競争下の日本産業・企業の構造調整_創風社_1998/10
(1)生産システム論と日本鉄鋼業
■日本的生産システム論の四つの論点との関わり
労働者の高い技能と柔軟な労働組織→これで鉄鋼業の競争力と盛衰を説明できるか?
多品種・少ロット生産の効率的管理生産管理→多品種・小ロット化が一路進むのか?
■鉄鋼業の生産構造
<小報告>
(2)分析視角
(1)高度成長期の達成と石油危機
■高度成長期の生産システム
新鋭製鉄所とフレキシブルな労働組織(能力主義管理、現場主義の問題解決、自主管理活動)
欧米に追いついていた国際競争力(追加表[-1)
■製鉄所建設競争の終焉と「減量経営」への転換
高度成長期の競争:新鋭製鉄所の建設、増産、シェア獲得→1970年代の転換
同質化競争、新日鉄成立(70年)、石油危機・74-5年恐慌、コスト競争力確立
協調的寡占の企業行動(追加図[-1)
<質問>
■生産システムの課題
設備と生産量を拡大せずにコストを削減
多品種・小ロット・高級化対応
製品開発については別稿参照
◇参考(テキスト引用文献以外)
川端望(明石芳彦・植田浩史編)_日本高炉メーカーにおける製品開発:競争・生産システムとの関わりで(『日本企業の研究開発システム:戦略と競争』)_東京大学出版会_1995/04
(2)製鉄所建設の終焉と合理化投資
■能力拡大投資の停滞と合理化投資への転換
設備投資の変遷(図3-3)
能力拡張から維持・補修、合理化・省力化、省エネルギーへ。
■生産性向上・省エネ投資の展開
製銑工程:高炉建設の終了とともに投資停滞。
製鋼工程:造塊・分解法から連鋳法への転換(連鋳比率73年44.1%→85年91.1%。鋼材歩留まり73年
86.4%→85年91.1%)。微細な成分調整のための取鍋精錬炉など。
圧延工程:ストリップ・ミル増強・リプレース。連続焼鈍装置設置など。
(3)生産計画・管理システムの発展とME技術
■自動化・連続化と多品種・小ロット化
一貫大量生産と多品種・小ロット化の矛盾
工程を連続化・高速化する必要性と工程分割・段取り替えの必要性の矛盾
一貫管理の必要性とバッファの必要性の矛盾
在庫と納期のトレード・オフ
製鋼・熱延連続化の事例
スラブヤードでの調整とHCR/DHCR/HDR
個々の技術の計画・管理システムへのとりこみ
■生産計画・管理システムの発展とME技術
三つのレベル
工程レベル:プロセスコンピュータによる制御
一貫管理のレベル:計画値体系を基盤とした製鉄所の総合運営管理
トップから現場までの計画遵守
原価管理、生産管理、技術間などの連動
生産・販売インターフェース:オーダー・エントリー・システムの発展
生産技術・管理技術・労働組織の補完性
総合的な計画・管理システムの設計思想
ME技術・情報技術
フレキシブルな労働組織との連動――ME・情報技術の不完全性
細かな条件の変化を吸収
学習と改善の機能
工程間の連携――どうやって保証したかはまだ明らかでない
技術者とオペレーターの連携
■巨大規模システムの費用・効果
巨大システムの構築
主要産業中最大のコンピュータ要員
1分以内の1社1日当たり平均ジョブ数は第二次産業中最大
巨大システムの効果と費用
合理化効果(図3-5)
売上高システム費用比率の高さ
◇参考
李捷生_書評:井上義祐著『生産経営管理と情報システム−日本鉄鋼業における展開』(同文舘、1998年)_『季刊経済研究』(大阪市立大学)第22巻第1号_1999/06
(4)自主管理(JK)活動への動員
■自主管理活動の性格
JK活動の二つの側面
「人間性」「生きがい」の強調――自発性、モラール・アップ
目標管理への組み込み――強制性、経営への具体的貢献
設備投資を伴わない改善
基本的性格:設備と労働編成を所与とした大衆動員的活動
■改善の成果と限界
石油危機直後:JK活動による省エネルギーの成果
70年代末:設備投資による省エネルギーへ
(5)配置転換と労使関係
■生産構造調整と配置転換
協調的寡占の行動:7割操業に耐える稼働設備の集約
雇用調整
高炉メーカーの鉄鋼・鉄鋼加工部門従業員数:73年末18万3596人→85年末14万2816人
希望退職、指名解雇の回避
出向、配置転換、一時帰休、雇用調整給付金利用、自動車メーカーへの派遣。特に配置転換と転勤。
未解決な余剰人員問題
■労使関係における「雇用確保」規範
鉄鋼労連の「経済整合性」論
労使協力によるインフレ沈静化をはかったが、賃上げの自粛に終わる
雇用確保を優先した合理化への協力
経営参加の試みと限界――仁田道夫説への留保点
「中期生産構造」に対する新日鉄労連の対応
組合の規制力の限界
基本線:「終身雇用慣行」の確保を条件とした「減量経営」への協力
(6)小括:生産システムの統合強化と変革への胎動
■「減量経営」の成果
不況の影響を相殺した「減量経営」。環境適応への成功(図3-7)
物的生産性の停滞/原単位、歩留まりの向上
付加価値生産性の若干の上昇
■高度成長期との継続性
環境の激変→生産システムの統合強化という逆説
技術基盤としての新鋭製鉄所
生産計画・管理、JK活動の継続性
「終身雇用」慣行下での配置転換
継続性の理由
設備の継承性
課題の連続性(一貫管理、省エネルギー、多品種・小ロット生産)
競争相手の同一性(欧米鉄鋼メーカー)
■労働面からの生産システム統合強化の限界
動員の限界と、ME化・システム化への対応の必要性
配置転換の限界と新たな人員対策の必要性
(1)円高・バブル景気と「中期経営計画」
■国際競争激化とバブル経済
円高による価格競争力の変化(表3-1)と収益性の悪化(図3-2)
フル・コスト原則の放棄=不採算設備の廃棄へ
景気回復を受けた従来以上のファインスチール化と多品種・小ロット生産
多角化
■「中期経営計画」と生産システムの課題
銑鋼一貫体制の見直しを含む「中期経営計画」(表3-2)
(2)設備集約・選別投資の推進
■製鉄所間分業の再編
上位製鉄所への粗鋼生産の集中(表3-3)
「減量経営」の成果の見直し
■多品種・小ロット高級化対応の設備投資
薄板のファインスチール化をめざした圧延・加工工程の拡張投資(追加表[-2)
(3)ファインスチールの多品種・小ロット・大量生産
■計画・管理システムのさらなる精緻化
8000種類の自動車用鋼板
「オーロラシステム」の事例(図3-4)
■多品種・小ロット・高級化による混乱
システム巨大化に伴う問題
汎用機上での開発と担当者の交替によるソフトウェアの不透明化
売上高システム費用比率の上昇
多品種・小ロット生産と大量生産の矛盾の顕在化
工程レベル:エネルギー原単位の停滞・悪化
一貫管理レベル:工程連続化をロット集約のための調整時間が相殺
生産・販売インターフェースレベル:自動車メーカー向けの優先的手当
(4)大量出向をめぐる労使関係
■人員削減の概要
高炉メーカー鉄鋼・鉄鋼加工部門従業員数:85年末14万1816人→92年末10万724人
新日鉄に見られる特徴(表3-4)
技術職(ブルーカラー)の削減
生産縮小とME化・システム化による削減
人員削減が生産システムに引き起こす問題
「雇用確保」を規範としてきた労使関係の緊張
労働強化や技能の喪失によるパフォーマンスの低下
■大量出向の展開(表3-4)(追加図[-2)
出向のタイプ
個々人の出向/「丸ごと」出向/分社化による出向
出向における賃金と労働コスト
出向先が給与を一部負担
基本給は変わらないが、超過勤務手当やその他労働条件が激変
玉突きの雇用調整
■「終身雇用」から「継続雇用」への転換
鉄鋼労連の「継続雇用」方針への転換
「雇用確保」規範の弱体化
(5)労働組織の再編成と技能の継承問題
■社外工比率の上昇(図3-8)
■本工組織の少数精鋭化と技能継承
オペレーション・メンテナンスにまたがる組織のスリム化
オペレーションの多能工化
軽保全のオペレーションへの組み込み(追加図[-3)
技能の技術化と継承への取り組み
技能の継承の必要性(追加表[-3)
自動化・マニュアル化困難な作業の残存
微調整や非定常時対応
日常的活動の中での経験の客観化
AIの事例
■有力社外企業と一貫管理
社外企業の再編
一貫管理がもたらす相互依存と、有力社外企業の必要性
日鉄運輸の事例
(6)小括:生産システム再編成の帰結と新たな課題
■リストラクチャリングの効果とバブル崩壊
生産性の向上と設備の有効利用の失敗(図3-7)
物的生産性向上
付加価値生産性の上昇と低下
バブル崩壊による採算悪化
ファインスチール化の失敗(追加表[-4)(追加図[-4)
再び価格競争激化(表3-1)
本社費・出向差額負担の格差
■統合強化から再編成へ
設備投資、計画・管理システムにおける継続性
労働組織の転換:技能への依存の最小化と必要な継承への努力
過渡的な雇用関係→転籍の強化へ
・労働組織・技能重視の「日本的生産システム」イメージは、高炉メーカーでは第1次石油危機直後には妥
当するが、その後は妥当しない。
雇用関係の不可逆的変化――「雇用確保」規範と合理化を交換条件とすることの有効性の低下
生産現場、製鉄所単位での改善・合理化から全社レベルのトップ・ダウンの生産システム再編へ
ME化。フレキシブルな労働組織の機能の縮小と継承
・高炉メーカーの生産システムは、いぜんとして大量生産であり、そこへの多品種・小ロット生産の組み込み
が転機を迎えている
情報技術でシステム化された大量生産へ?
新たな製品開発と市場創造?
・開発/購買・生産・販売を統合したビジネス・プロセスの洗い直しが課題に
取引慣行の改善と流通業界の再編
同質化競争の克服(集中・特化、国際化など)
問題
単なるホワイト・カラーの人減らしに終わる危険
事業と設備の「選択と集中」だけでは一時しのぎに過ぎない
◇参考
素材産業構造問題研究会_中間報告_『鉄鋼新聞』1999年6月15日、17日、18日、21日、22日、24日、28日_1999/06
■自動車部品メーカーの階層構造
第1部V章4節を参照
■何を問題にするか
TQC(総合的品質管理)についての通説的理解
アメリカ:設計から販売まで全部門に、品質管理の専門家が品質管理を行う
日本:トップから現業まで全階層と全部門で品質管理を行う
TQCのレベル自体ではなく、TQCを通して見たサプライヤの歴史
トヨタの1次サプライヤーを中心とした見取り図(テキスト注7の文献を参考に川端が解釈)
戦時期 |
政府は下請けシステムの整備を図るが、実現できず |
戦後期 |
新たなサプライヤ参入。分業体制に混乱続く。朝鮮戦争特需と系列診断。 |
1950年代後半〜60年代前半 |
設備投資・技術革新。自動車メーカーと1次サプライヤがともに成長する継続的関係の形成 |
1960年代後半〜石油危機 |
1次サプライヤにおける流れ作業と量産体制の形成。生産管理体制の整備。 |
石油危機後の1970年代 |
トヨタ生産方式。設備投資を節約しながら生産性向上。開発問題の台頭。2次サプライヤの管理重視。 |
1980年代 |
企画・開発と営業戦略の重視。浅沼理論の背景となった時代。 |
企画・開発を重視する「源流管理」の意義
製品開発をスタッフ機能でなく、開発→製造→販売のオペレーショナル・ワークとみる。第1部V章3節
(1)を参照。
販売→開発のフィード・バックも本来は重要。これも模索されるが、1990年代に系列を超えた取引のため
に一段と飛躍が要求される
デミング賞『受賞講演報告要旨』を資料に
著者が歴史観・仮説と資料の執拗な往復をしていることに注意
メーカーの自己認識であることのメリットとデメリットをどうみるか。
(1)トヨタのTQC導入
■トヨタの品質管理活動
導入のきっかけ
60年新車の品質問題
貿易自由化への対応
■サプライヤ管理と品質管理
無検査納入の実施→サプライヤの品質管理能力向上を図る必要性
1966年「オールトヨタで品質保証」
TQCのサプライヤ・販売店への展開
購買管理部による指導援助――購買担当部門の重要性に注意(例:原価企画)
生産拡大により、品質管理が追いつかない状況→70年トヨタ品質管理賞実施
(2)サプライヤのTQC活動
■関東自動車工業(66年デミング賞実施賞受賞)
品質管理の課題:初期生産時の品質の早期安定
生産管理全体を対象にしていたことに注意
原価企画の実施。ラインオフ後改善→ラインオフ前→生産準備以前
■小島プレス工業(67年デミング賞中小企業賞受賞。当時従業員490人)
TQCの背景
トヨタの量産体制確立にあわせて品質管理体制整備(品質問題、無検査納入)
社内独自の事情(新技術、製品分野への展開、若年労働者の訓練)
TQCの展開
QC教育、QCサークルの活発化
品質保証:「製造工程で品質を作り込む」
原価低減活動:技術化によるVA、IE+創意工夫提案制
(3)小括
■高度成長期のサプライヤの生産システム
量産の実現
生産の流れづくりによる品質向上、コスト低減
企業規模の拡大により、一度つくった体制が弛緩することも
(1)高度成長期末期から石油危機期のサプライヤ
■70年前後にトヨタのサプライヤが抱えた課題
年産300万台体制にあわせた量産体制の拡充
かんばん方式の納入への利用(生産はロット生産などで納入のみJIT)
■73年第1次石油危機による環境の一変=生産量の停滞
トヨタ生産方式の導入(生産もJIT。設備は拡張せずに生産性向上)
環境規制、FF化、ME化に対応した製品開発
(2)サプライヤのTQC
■アイシン精機(72年デミング賞実施賞受賞、77年日本品質管理賞受賞)
石油危機以前
60年代終わりから新製品開発が品質保証の課題に。開発に関して客先から評価されるケースが増え、開
発が競争の焦点に(注:競争場面拡大説)
石油危機以後:「大鑑巨砲主義」からトヨタ生産方式へ
75年度までの実施事項
省資源活動の徹底
かんばん方式の推進
原価企画活動の強化
潜在的品質問題撲滅活動の強化
76年度以降の実施事項
商品企画機能の強化
計画段階に重点をおいた品質保証体制
人材ローテーションの推進と管理者教育の強化
72年と77年の異同
連続――製品開発力の強化
追加――かんばん方式(トヨタ生産方式)の導入
■東海理化電機(78年度デミング賞実施賞受賞)
TQCの課題
生産、納入に多忙で近代経営管理技術の導入、活用が不十分
70年代の新製品増加に対応
新規立ち上げ件数:74年度約700件→77年度1523件
TQCの展開
企画・設計から量産に至るまでの品質保証(図)
75年トヨタ生産方式の導入とこれに対応した品質保証体制
購買管理
購入価格の見直し、購買仕様の明確化、QC基礎教育
協力会の結成
原価管理:量産までに目標原価達成
■浜名湖電装(79年デミング賞中小企業賞受賞)(2次サプライヤ)
製品開発への参画:設計段階からの品質保証
QCサークルの重視
トヨタ生産方式はそれほど重視されず
(3)小括
■石油危機後の新たな環境に対応する手段としてのTQC
開発力が問われてきたことに伴い、企画・設計段階での品質保証が焦点になっている
1次サプライヤではトヨタ生産方式の導入・定着が重視されている
1次サプライヤでは2次サプライヤへの展開が強調されている
(1)1980年代のサプライヤ
自動車産業のサプライヤシステム、製品開発システムが注目される
(2)サプライヤのTQC
■高丘工業(現アイシン高丘)(80年デミング賞実施賞受賞、85年日本品質管理賞受賞)
自動車用銑鉄鋳物部品専門メーカーとしての困難
80年代のTQC
営業戦略の重視。顧客ニーズの先取り
新製品開発を、製品企画以前の商品企画段階から位置付け
70年代と80年代の違い:@源流指向、Aニーズ指向、B戦略指向
■アスモ(88年度デミング賞実施賞受賞)(2次サプライヤ)
生産委託から開発設計、事業企画の譲度へ
86年TQC導入
長期的な視野に立った開発テーマの設定
幅広くより高度な技術力の強化
販売企画の充実
品質保証:源流からの各ステップでの品質のつくりこみ
開発まで機能を拡張した2次サプライヤには何が必要だったかを示すケース
(3)小括
■70年代に現れていた特徴のいっそうの顕在化
企画・開発面での競争力発揮がより重要に
営業戦略の重視
■TQC、QCの抽象的理解でなく歴史的理解を
TQCの課題は時代によって異なっており、それはサプライヤの抱えていた問題が異なっていたことによる
QCサークルの位置づけは相対的に低下
■1970年代以降、より源流にさかのぼった段階で活動がおこなわれるようになった
1次サプライヤから2次サプライヤへと拡大
■バブルとその崩壊。TQMの方向は?
バブル期における目先を変えた車づくりへの傾斜→バブル崩壊
部品点数の削減、サプライヤの絞込み→80年代のような利益確保パターンが困難に
系列を超えた取引への対応→販売および、販売から開発へのフィードバックの問題
◇参考(\章全体)
徳丸壮也_日本的経営の興亡:TQCはわれわれに何をもたらしたのか_ダイヤモンド社_1999/08
植田浩史(明石芳彦・植田浩史編)_自動車部品メーカーと開発システム(『日本企業の研究開発システム:戦略と競争』)_東京大学出版会_1995/04
岡野浩_日本的管理会計の展開:「原価企画」への歴史的視座_中央経済社_1995/05
■本章の課題
工作機械メーカーの販売・サービス活動をとりあげ、それがNC工作機械開発システムの一貫としての性格
を持つことを明らかにする
工作機械メーカーの生産システムは考察しない(他章との違い)が、生産システム論としても意味がある
工作機械を使用する製造業全体の生産システム高度化
分析上の仮説:新しい技術の普及は、新しい技術的知識の普及を前提としており、その担い手を必要として
いる
(1)在来技術と新技術の不連続性
■NC工作機械に対応した新しい労働と従来の労働の関係
機械の操作あるいは加工にかかわる労働
ハンドルやレバーの操作が消滅→NC装置が代替
NC装置を機能させるための新たな労働の必要性
パートプログラムの作成、座標計算、NCテープの作成
■知識の技術的実践過程の変化
加工上の知識やノウハウを、NC言語によるプログラム作成というプロセスを経て実現する必要
(2)市場の特質
■ユーザーの中心が中小零細規模の部品メーカーであることの意味
パートプログラム作成、座標計算などに不慣れな熟練工
自力で技術教育をおこなえず
(1)1970年代の技術教育(表5-1、表5-2)
■派遣・請負サービス
派遣サービス:ユーザーに1ヶ月間M社の社員を派遣し、NC旋盤の技術指導を行なう
現場のすべての従業員に技術教育を行なえる
従業員派遣によってユーザーの労働力が不足することがない
試作請負サービス:依頼のあった仕事についてM社の社員がM社製旋盤1台だけを使用してすべて加
工できるようなプログラムを作成してみせる
技術教育活動としての三つの側面
新規ユーザーに対する本来の意味での技術教育
潜在的ユーザーに対する啓蒙的な技術教育
既存ユーザーに対する技術コンサルティング的活動
■集中講義方式
■中高年の熟練工にとっての辛さ(表5-3)
OJTからOff JTへ
技能の変容の具体的過程:小関智弘氏のエッセイを参照
■機電一体のメンテナンス
M社によるNC装置のメンテナンス体制の整備→M社開発ソフトの組み込み、NC装置の完全なOEMへ
の移行
(2)営業所の新しい機能
■技術センターとしての営業所
A社のサービス
「ビフォアサービス」:「A社・マシン・ツール・プラザ」における展示、実演加工、技術コンサルティング
「アフターサービス」:サービス要員が全国40ヶ所の営業所を拠点にユーザーの現場におもむく
M社の営業所=「テクニカルセンター」
加工試削室、研修会議室、和室、浴室の整備
M社の社員がユーザーといっしょにプログラムをつくり、ワークを加工
■新たな営業所に必要な人材
O社による営業所への「切削員」の配置
(3)技術教育とメンテナンスのための人材養成
■新入社員に対する技術教育
O社の場合:在来型の工作機械、NC工作機械の操作、プログラミング、ヤスリがけ、組立
■選抜社員に対する技術教育
M社の教育システム
1968年以来OJT中心→1975年技能教育課の設置
NC旋盤の生産技術、電気技術を訓練
■社内技術教育における技術部門の役割
技術的知識の伝播経路:価格メカニズムや押し込み営業では伝播しないことに注意
NC工作機械メーカー技術部門→(企業内教育)→メーカー内部の全部門→(ユーザーへの技術教育)→
国内の機械加工業者
(4)販売・サービス活動の変化にともなう流通経路の短縮化
■販売と技術サービスの一体化
販売、技術教育、技術コンサルティング、メンテナンス
「売るだけ」の工作機械商社の存立基盤の動揺(表5-5、表5-6)
(1)開発と販売の統合
■市場志向の製品開発システム
製品開発における情報の流れ(図5-1)
ユーザーの現場における要求の吸い上げ
営業と技術の連携
■開発・販売機能の分社化
Z技研のケースの意味
小零細企業を含む広範な市場に受容されるNC機を開発する手段
ユーザーと製品開発をリンクさせる開発は、NC機の本格販売以前からおこなわれていた
(2)汎用旋盤市場における競争の重心とNC化
■従来の汎用旋盤市場の競争の重心
モーズリーのスライドレスト付き旋盤以来、汎用旋盤は基本構造が大きく変化せず
多品種少量生産を熟練工に依拠しておこなう
熟練工の使用実績に支えられた老舗メーカーのブランドイメージ
■新興工作機械メーカーの企業行動
ユーザーの現場に足を運んで、使い勝手のよい製品を開発→製品開発のノウハウ蓄積
価格の引下げ
■NC機の登場による競争の重心の変化
品質・ブランドから新しい機械機能の開発へ
新興メーカーが蓄積したノウハウが生きる
■工作機械メーカーによるNC技術教育と結合した販売・サービス活動の役割
NC機の操作や保守に関わる新しい知識や、NC機の有効な利用方法に関するノウハウを普させた
とりわけ中小零細企業ユーザーへのNC機普及を促進→社会的分業構造の底辺を支えた
NC機開発システムの一環としても機能
■販売・サービスは「市場にまかせる」のでも「体力勝負」でもない
価格シグナルでは伝わらない技術的知識、ノウハウの交流。
対話としての営業。シミュレーションとしての開発へのフィードバック。
(1)半導体産業の基本構造
<小報告>
(2)半導体産業の新動向
■製品構成の変化
ロジック
DSPなどマルチメディア分野の新製品の登場
携帯情報端末、情報家電、自動車用のマイクロプロセッサの標準規格をめぐる競争
メモリ
ASIC化の進展
■半導体産業における開発競争の意義
迅速かつ連続的であること→開発の本質的意味、開発と生産の機能的一体性
■半導体産業における生産技術・生産システムの確立
1970年代:自動化された生産システムの原型が形成される
1980年代終わり:フレキシビリティ、歩留まり率問題の重大性低下
海外から半導体製造装置メーカーを購入し、それを適切に運用できればよい
普遍的なプロセス――ただし、未解明な部分あり。本章の課題。
開発プロセスと生産プロセスがどう統合されているか
半導体生産に必要な技術・技能
プロセスをどのような企業間分業で担うかは、国/地域の技術や市場の条件、企業の戦略で異なる
垂直統合、ファブレス、ファウンドリ、ネットワーク分業……
■半導体企業の類型(追加表]T-1)
■フルライン・垂直統合型日本メーカーの直面する課題
システムLSIの開発と市場開拓
ゲーム機の例(追加表]T-2)
メモリ事業の新たな戦略――まだ明確には見えず
戦略提携による経営資源節約(日立とNECなど)
ファウンドリ企業への生産委託
分業構造の再検討
(1)半導体技術の開発課題
■開発期間の短縮とコストの抑制
試作期間の短縮
開発テーマの重点化
企業間提携関係の構築
■生産工程イノベーション
半導体製造装置の低コスト化と生産工程の簡素化の課題
半導体市場の拡大→設備投資コストの膨張
製品高度化→生産工程の複雑化
製造装置の低コスト化のための工夫(図6-1)
(2)半導体企業の並行開発システム
■DRAMの世代交代と各世代製品の研究開発の段階
DRAMの技術トレンド:3-4年で集積度の高い新製品に置き換わる
10年先の世代の開発につながる基礎的研究が必要
■並行開発システム(図6-2)
時差並行開発システム
同一世代に二つの開発チームをつくり、社内で競争させる方式
■開発、試作、量産化のハーモナイゼーション
開発、試作、量産化の期間短縮(速さと確実さ)
試作ラインの早期立ち上げ:シミュレータ、検査環境の整備
設計ミスの減少:シミュレータ、CADの開発
■コンカレント・エンジニアリング手法
インテルのケース(図6-3)
二つのねらい
(1)半導体生産工程の特徴(図6-4)
■設計工程
商品企画で決められた機能をICとして実現するために、論理図、回路図、及びマスクデータに変換する
■マスク製造工程
ウェハにさまざまな回路パターンを焼き付ける際に使う精密写真原板を作成する
■ウェハ製造工程
多結晶シリコンの製造→単結晶シリコンの製造→シリコンウェハへの加工
■ウェハ処理工程
シリコンウェハ上にフォトマスクを使用して多数のICを同時に作り込む
酸化、フォトレジスト処理、露光・現像、エッチング、洗浄、不純物注入、CVD、スパッタリングなどの工程を
繰り返す。
クリーンルーム内部で1-2ヶ月を要する
■組立工程および検査工程
組立工程は後工程ともいい、通常1週間程度を要する
(2)半導体生産工程の全体的特徴
■プロセス・イノベーションの重要性
生産工程が複雑な上に、製品高度化にともなってますます高度化、精密化、複雑化するので、プロセス・イ
ノベーションが重要である
半導体製造装置の進化
枚葉化、マルチプロセス化、クラスタツール化、ダウンサイジング、多世代化、標準モジュール化
■生産リードタイムが長い(平均1-2ヶ月)
設計不要の場合は、メモリ2ヶ月、ロジック4週間
パソコンが3ヶ月で世代交代することと比較すれば、かなり長い
新工場におけるラインの立ち上げには半年必要
(3)生産システムの特徴 −多品種、変量、フレキシブル性−
単品種大量型生産工程から多品種混合生産ラインへ
(1)半導体開発システムと生産システムの関連
■半導体開発と生産工程の相互連関
従来は歩留まり率向上が課題であったが、80年代末より変化。トータル・プロセスとしての問題。
開発プロセスを考慮しない生産システムでは、新製品の生産を順調に増大させることは難しい
■試作ラインと工場パイロット制
試作ラインの強化
工場パイロット制
製品開発に使用する試作ラインを量産工場につくる→試作終了後に装置を増やして量産立ち上げ
東芝大分工場の例:工場の技術部隊がプロセス開発
■ファンドリ・ビジネスの影響
ファンドリ・ビジネスとファブレス企業の出現:開発と生産を異なった企業がおこなう
台湾の半導体産業
プロセス間の分業(追加図]T-1)
製品の補完性(追加図]-2)
地理的集積
研究・開発・人づくり機能の共通性(追加図]T-3)
ファウンドリ−・ビジネス(追加表]T-3)(追加図]T-4)
開発・生産システムにおける機能的統合性は変わらないが、それを担う企業間分業関係は変化する
■開発・生産システムと製造装置メーカー
製造装置メーカーの課題
プロセス開発もおこなっている
ユーザーと密接な関係を持つか、多様な製品群をそろえるか
新ライン立ち上げと製造装置メーカー
(2)半導体生産システムにおいて必要とされる技術と技能
■半導体工場において必要とされる技術と技能
プロセス重視の小集団活動(図6-5)
従来はTQC、現在はTPMを重視
日本電気:マネジメントとしてのTPM。故障、チョコ停対策重視。
関西日本電気によるTPM理解
■作業者の技能の向上
社内資格の設置による技能の向上
研修施設における技能者再教育
■開発システムと生産システムの深い相互関係
日本メーカー:開発システムと生産システムを一体として構築
アメリカメーカー
インテル、モトローラ、TI:日本メーカーと同じ
ファブレス企業:開発に経営資源を集中
アジアのファンドリ企業:生産に集中
◇参考(]T全体)
肥塚浩_現代企業の戦略と組織構造:半導体企業研究のために_『経済科学論集』(島根大学)第20号_1994/03
青山修二_ハイテク・ネットワーク分業:台湾半導体産業はなぜ強いのか_白桃書房_1999/09