update:1999/01/11
川端 望
補足:工業経済の講義レジュメである。受講登録者26名だが、毎回3名程度しか出席しないという、すばらしい授業であった。テキストであった坂本清編著『日本企業の生産システム』に沿っているが、いくらか、私の解釈で変更している部分もある。テキストが発売になる前に講義が終了したので、講義全体の概要がわかるレジュメとなっている。また、『日本企業の生産システム』の1-6章の、私なりの要約にもなっている。なお、図表は省略している。
シラバスを修正した構成
・はじめに(0.3)
・生産システムの概念(0.7)
・アメリカにおける大量生産の成熟と変容(2)
・生産システムの日本的展開と現代企業(2)
・繊維産業の転換と新生産システムの模索(2)
・高炉メーカーの生産システムと競争戦略(2)
・自動車部品サプライヤとTQC(2)
・工作機械メーカーの製品開発システムと販売・サービス活動(2)
・半導体メーカーの開発・生産システム(2)
テキストの印刷が遅れたので、レジュメと図表で講義する。
講師紹介
川端 望(経済学部助教授・工業経済学)
1992年3月 東北大学大学院経済学研究科後期課程単位取得退学
1992年4月−1997年12月 大阪市立大学経済研究所(助手・講師・助教授)
1998年1月より現職
研究テーマ:世界鉄鋼業の再編成(さしあたりアメリカ、日本、東アジア)
E-
mail kawabata@econ.tohoku.ac.jp (メールでの問い合せ可)
HP http://www.econ.tohoku.ac.jp/~kawabata/index.htm
生産の概念
狭義の生産と広義の生産=再生産(生産と消費の反復)
資本主義経済における生産と再生産
労働過程と価値増殖過程
物的再生産と資本・賃労働関係の再生産
システムの概念
「ある目的達成のために、いくつもの構成要素がその環境との関連の中で相互に作用し合うひとつの全体」(井上義祐「情報化社会と経営情報システム」<井上・小池俊隆編著『経営情報処理概論』>)
経済主体
企業レベル
企業の生産目的に導かれた、生産工程に即しての労働手段、労働対象、労働の結合様式
資本循環を条件とする物的再生産
社会
要素的把握
技術・管理・労働/物的システムと労働システム
循環的把握
開発・受注・調達・製造・流通・販売(サプライ・チェーン)
構造的条件
市場構造――経済合理性
産業構造
労使関係
社会的諸制度
生産システムの経済学的把握の特質
構造的条件の重視――適用の普遍性の制限
技術的特質・社会的特質は、経済合理性というフィルターを介してのみ観察される。
経済学・経営学全般では、経営工学の文脈とは独立に浮上した。
きっかけとしての日本問題
高度成長→貿易摩擦→在外生産の展開
日本的生産システム論の盛衰
前近代的労使関係・低賃金説
日本的経営=「三種の神器」説(『OECD対日労働報告書』1972年)
「日本的生産システム=ポスト・フォーデイズム」論争
「日本的生産システムの終焉」論
この節は、鈴木良始「アメリカ大量生産システムの成熟と変容」(坂本清・貫隆夫・宗像正幸編著『現代生産システム論:再構築への新展開』ミネルヴァ書房、 1999年)に依拠する。
フォード・システム成立の背景とプロセス
製造のアメリカン・システムと大量需要(写真)
生産のライン化と専用機械(図・写真)
労務管理問題と労使妥協
高い労働移動率と日給5ドル制
大量消費
「柔軟な大量生産」への修正の核心=単一製品主義の放棄
A型車への転換とそれに伴う混乱
製品モデルと構成部品の設計変更の分離
モデル間での部品の共用
ニューディール型労使関係の衝撃
労働組合対策としての自動化
戦後労使関係システムと大量生産
経済成長の「好循環」
自動化・生産性成果配分・ビジネス・ユニオニズム
ジョブ・コントロールによるえこひいきの排除
職務分類・職務記述書・職務給
先任権制度
機械化志向の昂進による硬直化傾向
オートメーションの二つの帰結
専用工場化と償却負担
生産量確保の優先と品質・労働者関与の軽視
製品設計の硬直化
市場の飽和と生産システム
職場規律の弛緩と生産システムの悪循環現象
職場秩序の崩壊
品質問題と業績悪化
ローズタウン戦略の失敗
生産システム変化への客観的要請
経済危機と雇用不安
生産性・品質・製品多様性の同時追求の要請
大量生産システムの緩慢な変容
チーム・システム
核心としての権限委譲問題
労使関係による制約
サターンの労使共同経営
新しい諸制度の補完関係は形成されるか
※以下の講義は、主として坂本清(編者)・富澤修身・川端望・植田浩史・河邑肇・肥塚浩・十名直喜『日本企業の生産システム』中央経済社、1998年に基づく。
日本的生産システムの神話と現実
「日本的生産システム」といわれた内容
労働者の高度な技能
多品種小ロット生産を効率よく進める生産管理
すぐれた製品を数多く効率的に開発する製品開発システム
開発能力を持ったサプライヤー・システム
「日本的生産システム」のパフォーマンス
コスト・品質の両立(表・図)
納期・製品多様性の両立(表)
「神話」の崩壊と次世代システム像なき「リストラ」「大競争」。
1 戦後日本の生産構造の特質
戦後経済発展の次期区分(表)
1945-55年 戦後復興
1956-73年 高度経済成長
1974-79年 脱石油危機
1980-85年 ME技術革新
1986-90年 日本的生産システム全盛期
1991年以後 ?
鉱工業生産指数からみた持続的成長と90年代不況(表)
加工貿易から集中豪雨輸出、海外生産展開へ
産業構造の転換
製造業企業の経営動向(表)
石油危機・バブル崩壊という転換点
石油危機後の適応
バブル崩壊後の不適応
労働動向(表)
リストラ・減量経営と第3次産業への労働力移動
長い労働時間
労働運動の停滞と賃上げの鈍化
2 石油危機と生産システム再編の特質
石油危機が提起した三つの課題
脱石油型・省エネルギー型産業構造への転換
経営合理化
市場創造
生産システム再編の三つの潮流
合理化
脱石油、「減量経営」、脱大量生産
情報化
OA化とFA化・システム化
ME技術関連製品の生産と生産システムのME化
情報化による産業技術基盤の変化
広域化
国際化。輸出と在外生産。
地域化。技術先端部門の地域展開と東京一極集中。
1 日本的フレキシビリティの歴史的条件
欧米:経営側と労働側の要求の接点としてのフレキシビリティ
日本:経営による統合を前提とするフレキシビリティ
労働者統合
階層的下請システム
2 トヨタ生産システムの「原理の革新」について
ポスト・フォーディズム論における評価基準
プロダクティビティ/フレキシビリティ/ヒューマニティ
「トヨタ生産システム」=「リーン生産方式」論
生産性ジレンマの克服が中心論点=P優先
労働者の積極的参加は生産性の要件
トヨタ生産システムの革新性=フレキシブル同期化
ジャスト・イン・タイム(表)
日本的労働編成
トヨタと日産におけるヒューマニティ理解
グローバル競争と日本的生産システム
バブル崩壊のインパクト
1 繊維産業とは
生産の流れ
ファイバーの区別
短繊維と長繊維
天然繊維と化学繊維・合成繊維
紡績・撚糸(短繊維は紡績、長繊維は引き揃え、撚りかけ)、織編、染め、加工(シワ防止、縮み防止、つや出し、減量)、裁断、縫製、加工(洗い加工、形状記憶、形態安定)。
関連企業
川上――原糸メーカー
紡績企業(織り、無地染め、加工も)
合繊企業(ファイバーと仮撚糸生産。その後は系列企業が賃加工することも)
川中――織布専業企業、編立専業企業、染色専業企業、か鉱泉郷企業
川下――縫製企業(一貫、またはパーツ毎、種類毎)
産地における小零細企業間の分業
メーカー以外(糸商、服地商、商社、アパレル製造卸、小売)
→循環的把握中心に分析
2 分析の前提――他産業との情勢の違い
中国品とイタリア品の挟み撃ちにあう日本製アパレル
アパレルの輸出競争力の弱さ(表)
輸入急増、供給過剰、国内生産減
統括者不在の「生生連携」問題
3 構造調整の必要性とその困難性
バトンタッチ型長距離走から大規模二人三脚型短距離走への変化
アメリカのQRSとイタリア産地生産システム
4 地球環境対策の遅れ
1 戦後史の概観
二つの源流
石油危機後の不況とファッション産業としてのアパレル産業
インポートブランドブーム
生産拠点の中国進出
2 構造転換を模索するアパレル産業
繊維工業審議会・産業構造審議会『新繊維ビジョン』(1993年12月)
マーケットイン
QRS(クイック・レスポンス・システム)ないし標準EDI(電子データ交換)による小売り・アパレル・素材の企業間を連結。
問題:「契約が契約でない」取引慣行
クリエーション
デザイン機能の充実、素材加工開発
それだけでは経営が成立しない
グローバル戦略
生産機能の海外展開
国内に必要な企画開発生産機能を弱体化するケースあり
過渡期の辛苦を和らげる方策――繊維産業の模索の先駆的意義
中国とも欧米とも異なる土俵を日本の生活文化・技術・技能を踏まえてつくりあげる
企業・業界・関連産業・非営利機関の役割分担を明確にしたネットワーク
行政の新しい「適切な分割と結合」
1 DM毛糸QRシステム――最終製品を生産し情報共有が容易と思われるケース
T紡績の「DM毛糸QRグループ」(図)
代理店在庫なし。物流センターからペリカン便で直送。
物流センターはJANコードでの入出庫管理
物流センター在庫が一定水準を切ると生産依頼
流通面の問題
地方後回し、小口対応、小零細小売り対応
QRは市場創出にはとってかわれない
生産面の問題
稼働率・生産性確保と在庫削減要請・実需のシーズン変動性の対立
T紡績の統一意思のもとにない独立企業間の取引だったら?→Win-winルールを決めないとコストのおしつけあいに。
見込み生産と多品種による調整必要→中小零細企業の対応困難
2 生産システムと情報化(M紳士服)
M紳士服のシステム
全社システム(店頭・本社・工場を含む販売・製造・調達管理システム)
工場管理システム(各工場での工程管理システム)
縫製前の準備を行なうCAD・CAMシステム
企画だけでなく自家生産をおこない、新しい試みを導入
1960年代:レディーメイド(RM)とイージーオーダー(EO)の混流生産
1978年:「Mアポロ計画」。
生産期間短縮による在庫減
1点流し生産とオンライン工程管理
1981年:レディーメイド・オーダー・システム
ブランド戦略の展開
混流生産の平準化
1点流しによる生産性の低さを中高級紳士服生産(ジバンシーなら10-23万円)でカバー
中高級品受注生産なので、QRSはメリットなく、海外進出と「品質革命」が問題。
3 合繊メーカーの素材生産システム
(1)新繊維生産システムとLPU
T社ポリエステル事業の新繊維生産システム(図)
目的:後引生産方式、日単位の納期管理、計画情報の重視、予定情報の次工程への転送、モノの動きと情報の動きとの一致、オンライン伝送によるペーパーレス、データベースの拡充→見切りロス、機会ロスの低減。
在庫30%減少、納期遵守率約80%向上。
顧客連携システムの未完成
販売部の希望量に基づいた月単位の見込み生産であり、受注生産ではない。
特徴:高付加価値品の見込み生産
(2)企画開発システム
「一貫競争力強化」(図)
(3)技能
ファイバー・糸生産では熟練不要。
縫製の高次加工工程では熟練必要。合繊メーカーによる囲い込み
クリエーションは西欧追随。QRSは前提条件(手段の標準化と取引問題の解決)が未整備。
(株)ワコールのケース
標準化とQRS
小売り情報を在庫管理に利用
多くの取引先で異なるフォーマット
予測しやすい商品特性とブランド力に支えられた自社生産=QRに好条件
QRSとクリエーション連動の困難
販売情報・在庫情報・生産情報は、リピート・在庫削減・増産には利用できるが、新製品開発には使えない。
EDIによるQR対応でコストを浮かし、製品開発に投入、が現実。
1 生産システム論と日本鉄鋼業
労働組織と技能を重視した「日本的生産システム」論で理解できるか?
多品種・少量生産へ進むのか?
鉄鋼生産工程の中間的性格(図)
2 分析視角
設備投資行動(技術)、生産計画・管理システム(管理)、労働組織・技能(労働)
時期区分(図)
第一次石油危機−円高不況(1973-85年)
景気回復−バブル崩壊後不況(1986-93年)
1 高度成長期の達成と石油危機
(1)高度成長期の生産システム
新鋭製鉄所とフレキシブルな労働組織(能力主義管理、現場主義の問題解決、自主管理活動)
欧米に追いついていた国際競争力
(2)製鉄所建設競争の終焉と「減量経営」への転換
高度成長期の競争:新鋭製鉄所の建設、増産、シェア獲得
1970年代の転換
同質化競争、新日鉄成立(70年)、石油危機・74-5年恐慌、コスト競争力確立
協調的寡占の企業行動
「コスト・プラス」方式による利潤確保
既存設備の有効利用によるコスト削減
遊休設備の維持と再稼働
(3)生産システムの課題
設備と生産量を拡大せずにコストを削減
多品種・小ロット・高級化対応
2 製鉄所建設の終焉と合理化投資
(1)能力拡大投資の停滞と合理化投資への転換
設備投資の変遷(図)
能力拡張から維持・補修、合理化・省力化、省エネルギーへ。
(2)生産性向上・省エネ投資の展開
製銑工程:高炉建設の終了とともに投資停滞。
製鋼工程:造塊・分解法から連鋳法への転換(連鋳比率73年44.1%→85年91.1%。鋼材歩留まり73年86.4%→85年91.1%)。微細な成分調整のための取鍋精錬炉など。
圧延工程:ストリップ・ミル増強・リプレース。連続焼鈍装置設置など。
3 生産計画・管理システムの発展とME技術
(1)自動化・連続化と多品種・小ロット化
一貫大量生産と多品種・小ロット化の矛盾
工程を連続化・高速化する必要性と工程分割・段取り替えの必要性の矛盾
一貫管理の必要性とバッファの必要性の矛盾
在庫と納期のトレード・オフ
製鋼・熱延連続化の事例
スラブヤードでの調整とHCR/DHCR/HDR
技術と計画・管理システムによる解決
(2)生産計画・管理システムの発展とME技術
三つのレベル
工程レベル:プロセスコンピュータによる制御
一貫管理のレベル:計画値体系を基盤とした製鉄所の総合運営管理(図)
生産・販売インターフェース:オーダー・エントリー・システムの発展
不可欠の要件
総合的な計画・管理システムの設計思想
ME技術・情報技術
フレキシブルな労働組織との連動
工程間の連携
技術者とオペレーターの連携
(3)大規模システムの費用・効果
巨大システムの構築
主要産業中最大のコンピュータ要員
1分以内の1社1日当たり平均ジョブ数は第二次産業中最大
巨大システムの効果と費用
合理化効果(図)
売上高システム費用比率
|
1974年度 |
1986年度 |
鉄鋼業 |
0.658% |
1.049% |
第二次産業平均 |
0.356% |
0.53% |
4 自主管理(JK)活動への動員
(1)自主管理活動の性格
JK活動の二つの側面
「人間性」「生きがい」の強調
目標管理への組み込み
設備投資を伴わない改善
基本的性格:設備と労働組織を所与とした大衆動員的活動
(2)改善の成果と限界
JK活動による省エネルギーの成果(石油危機直後)
設備投資による省エネルギーへ(70年代末)
5 配置転換と労使関係
(1)生産構造調整と配置転換
7割操業に耐える稼働設備の集約
雇用調整
高炉メーカーの鉄鋼・鉄鋼加工部門従業員数
73年末18万3596人→85年末14万2816人
希望退職、指名解雇の回避
出向、配置転換、一時帰休、雇用調整給付金利用、自動車メーカーへの派遣。特に配置転換と転勤。
未解決な余剰人員問題
(2)労使関係における「雇用確保」規範
鉄鋼労連の「経済整合性」論
賃上げの自粛
雇用確保を優先した合理化への協力
経営参加の試みと限界
「中期生産構造」に対する新日鉄労連の対応
組合の規制力の限界
基本線:「終身雇用慣行」の確保を条件とした「減量経営」への協力
6 小括:生産システムの統合強化と変革への胎動
(1)「減量経営」の成果
不況の影響を相殺した「減量経営」。環境適応への成功(図)
物的生産性の停滞/原単位、歩留まりの向上
付加価値生産性の若干の上昇
(2)高度成長期との継続性
生産システムの統合強化という逆説
技術基盤としての新鋭製鉄所
生産計画・管理、JK活動の継続性
「終身雇用」慣行下での配置転換
継続性の理由
設備の継承性
課題の連続性(一貫管理、省エネルギー、生産性向上、多品種・小ロット生産)
競争相手の同一性(欧米鉄鋼メーカー)
(3)生産システム統合強化の限界
労働組織の限界
動員の限界と、ME化・システム化への対応の必要性
配置転換の限界と新たな人員対策の必要性
1 円高・バブル景気と「中期経営計画」
(1)国際競争激化とバブル経済
円高による価格競争力の変化(表)と収益性の悪化(図)
フル・コスト原則の放棄=不採算設備の廃棄へ
景気回復を受けた従来以上のファインスチール化と多品種・小ロット生産
多角化
(2)「中期経営計画」と生産システムの課題
銑鋼一貫体制の見直しを含む「中期経営計画」(表)
2 設備集約・選別投資の推進
(1)製鉄所間分業の再編
上位製鉄所への粗鋼生産の集中(表)
「減量経営」の成果の見直し
(2)多品種・小ロット高級化対応の設備投資
薄板のファインスチール化をめざした圧延・加工工程の拡張投資
3 ファインスチールの多品種・小ロット・大量生産
(1)計画・管理システムのさらなる精緻化
8000種類の自動車用鋼板
「オーロラシステム」の事例(図)
(2)多品種・小ロット・高級化による混乱
システム巨大化に伴う問題
汎用機上での開発と担当者の交替によるソフトウェアの不透明化
売上高システム費用比率の上昇
92年度鉄鋼業1.496%、第二次産業平均0.643%
多品種・小ロット生産と大量生産の矛盾の顕在化
工程レベル:エネルギー原単位の停滞・悪化
一貫管理レベル:工程連続化をロット集約のための調整時間が相殺
生産・販売インターフェースレベル:自動車メーカー向けの優先的手当
4 大量出向をめぐる労使関係
(1)人員削減の概要
高炉メーカー鉄鋼・鉄鋼加工部門従業員数
85年末14万1816人→92年末10万724人
新日鉄に見られる特徴(表)
技術職(ブルーカラー)の削減
生産縮小とME化・システム化による削減
人員削減が生産システムに引き起こす問題
「雇用確保」を規範とする労使関係の緊張
労働強化や技能の喪失によるパフォーマンスの低下
(2)大量出向の展開(表)
出向のタイプ
個々人の出向
「丸ごと」出向
分社化による出向
出向における賃金と労働コスト
出向先が給与を一部負担
基本給は変わらないが、超過勤務手当やその他労働条件が激変
玉突きの雇用調整
(3)「終身雇用」から「継続雇用」への転換
鉄鋼労連の「継続雇用」方針への転換
5 労働組織の再編成と技能の継承問題
(1)社外工比率の上昇(図)
(2)本工組織の少数精鋭化と技能継承
オペレーション・メンテナンスにまたがる組織のスリム化
オペレーションの多能工化
軽保全のオペレーションへの組み込み
技能の技術化と継承への取り組み
技能の継承の必要性
自動化・マニュアル化困難な作業の残存
微調整や非定常時対応
日常的活動の中での経験の客観化
AIの事例
(3)有力社外企業と一貫管理
社外企業の再編
「1業種1社制」に向けた再編
「丸ごと」移管
社外企業の「自主管理体制」
各種インセンティブ制度
一貫管理がもたらす相互依存と、有力社外企業の必要性
日鉄運輸の事例
6 小括:生産システム再編成の帰結と新たな課題
(1)リストラクチャリングの効果とバブル崩壊
生産性の向上と設備の有効利用の失敗(図)
物的生産性向上
付加価値生産性の上昇と低下
バブル崩壊による採算悪化
ファインスチール化の失敗
再び価格競争激化(表)
本社費・出向差額負担の格差
(2)統合強化から再編成へ
設備投資、計画・管理システムにおける継続性
労働組織の転換:技能への依存の最小化と必要な継承への努力
過渡的な雇用関係
労働組織・技能重視の「日本的生産システム」イメージは、高炉メーカーでは第1次石油危機直後のみに妥当。
雇用関係の不可逆的変化
生産現場、製鉄所単位での改善・合理化から全社レベルのトップ・ダウンの生産システム再編へ
フレキシブルな労働組織の機能の縮小と継承
高炉メーカーの生産システムは、いぜんとして大量生産であり、そこへの多品種・小ロット生産の組み込みが転機を迎えている。
生産技術・管理技術の継承
開発・生産・販売インターフェースの洗い直し
1 自動車産業とTQC
自動車部品メーカーの階層構造
TQC(総合的品質管理)についての通説的理解
アメリカ:設計から販売まで全部門に、品質管理の専門家が品質管理を行う
日本:トップから現業まで全階層と全部門で品質管理を行う
1960年代以降の自動車産業のTQC(表)
1960年代:自動車メーカー→70年代:一次サプライヤ→80年代:一部の二次サプライヤ
フレキシブル生産システムの導入と並行
2 本章の課題
部品サプライヤのTQCの活動を、@サプライヤと自動車メーカーとの関係、Aサプライヤ自身の生産システムの展開、との関わりで見る。
主要な資料:デミング賞『受賞講演報告要旨』
1 トヨタのTQC導入
(1)トヨタの品質管理活動
導入のきっかけ
60年新車の品質問題
貿易自由化への対応
61年TQC導入、65年デミング賞受賞
(2)サプライヤ管理と品質管理
無検査納入の実施→サプライヤの品質管理能力向上を図る必要性
1966年「オールトヨタで品質保証」
TQCのサプライヤ・販売店への展開
購買管理部による指導援助
生産拡大により、品質管理が追いつかない状況→70年トヨタ品質管理賞実施
2 サプライヤのTQC活動
60年代後半にデミング賞、中小企業賞をとった2社を事例に
(1)関東自動車工業(66年デミング賞受賞)
委託生産によるトヨタ社の組立を行う(サプライヤとは少々異なる)
品質管理の課題:初期生産時の品質の早期安定
トヨタより月産生産台数が少ない
生産管理全体を対象にしていたことに注意
QC教育(表)
原価企画の実施
ラインオフ後改善→ラインオフ前→生産準備以前
(2)小島プレス工業(67年デミング賞中小企業賞受賞。当時従業員490人)
1)TQCの背景
トヨタの量産体制確立にあわせて品質管理体制整備(品質問題、無検査納入)
社内独自の事情(新技術、製品分野への展開、若年労働者の訓練)
2)TQCの展開
QC教育、QCサークルの活発化
品質保証:「製造工程で品質を作り込む」
原価低減活動:技術化によるVA、IE+創意工夫提案制
納入ロット不合格率の低下:64年4月0.5%→65年中頃0.1%
3 小括
高度成長期のサプライヤの生産システム
量産の実現
生産の流れづくりによる品質向上、コスト低減
企業規模の拡大により、一度つくった体制が弛緩することも
1 高度成長期末期から石油危機期のサプライヤ
70年前後にトヨタのサプライヤが抱えた課題
年産300万台体制にあわせた量産体制の拡充
かんばん方式の納入への利用(生産はロット生産など)
73年第1次石油危機による環境の一変=生産量の停滞
サプライヤの新方針
トヨタ生産方式の導入(設備は拡張せずに生産性向上)
環境規制、FF化、ME化に対応した製品開発
以下、70年代のデミング賞、日本品質管理賞受賞企業の事例
2 サプライヤのTQC
(1)アイシン精機(表)(72年デミング賞、77年日本品質管理賞受賞)
1)石油危機以前
60年代終わりから新製品開発が品質保証の課題に
70年「50V計画」:年間売上目標の30%以上の新規拡販に寄与する商品開発
開発に関して客先から評価されるケースが増え、開発が競争の焦点に
2)石油危機以後
石油危機の影響(表)
売上高は減少しないが、売上原価率が上昇して経常利益が減少
「大鑑巨砲主義」からトヨタ生産方式へ
75年度までの実施事項
省資源活動の徹底
かんばん方式の推進
原価企画活動の強化
潜在的品質問題撲滅活動の強化
76年度以降の実施事項
商品企画機能の強化
計画段階に重点をおいた品質保証体制
人材ローテーションの推進と管理者教育の強化
3)1970年代のTQC
72年と77年の異同
連続――製品開発力の強化
追加――かんばん方式(トヨタ生産方式)の導入
(2)東海理化電機(78年度デミング賞受賞)
1)TQCの背景
TQCの課題
第1次石油危機によって露呈した社内の諸問題の解決
生産、納入に多忙で近代経営管理技術の導入、活用が不十分
70年代の新製品増加に対応(製品はスイッチ、ロック等)
新規立ち上げ件数:74年度約700件→77年度1523件
2)TQCの展開
企画・設計から量産に至るまでの品質保証(図)
75年トヨタ生産方式の導入とこれに対応した品質保証体制
購買管理
購入価格の見直し、購買仕様の明確化、QC基礎教育
協力会の結成
原価管理:量産までに目標原価達成
(3)浜名湖電装(79年デミング賞受賞)
1)TQCの背景
最大の取引先は日本電装で、2次サプライヤのケース。
日本電装からの生産移管の拡大に対応したTQC
2)TQCの展開
製品開発への参画(図):設計段階からの品質保証
QCサークルの重視
トヨタ生産方式はそれほど重視されず
3 小括
TQCが石油危機後の新たな環境に対応する手段として用いられている
開発力が問われてきたことに伴い、企画・設計段階での品質保証が焦点になっている
1次サプライヤではトヨタ生産方式の導入・定着が重視されている
1次サプライヤでは2次サプライヤへの展開が強調されている
1 1980年代のサプライヤ
自動車産業のサプライやシステム、製品開発システムが注目される
2 サプライヤのTQC
(1)高丘工業(現アイシン高丘)(80年デミング賞受賞、85年日本品質管理賞受賞)
自動車用銑鉄鋳物部品専門メーカーとしての困難
小型化の中で鋳物減少
80年代初頭の売上・利益・生産の低下(図)
80年代のTQC
営業戦略の重視
顧客ニーズの先取り
吸排気系部品を中心に新分野開拓
新製品開発を、製品企画以前の商品企画段階から位置付け
日本品質管理賞とデミング賞の違い:@源流指向、Aニーズ指向、B戦略指向
(2)アスモ
日本電装の関連会社、トヨタの2次サプライヤ
ワイパシステム、モータ類、ウォッシャシステムなどの生産
生産委託から開発設計、事業企画の譲度へ
86年TQC導入
長期的な視野に立った開発テーマの設定
幅広くより高度な技術力の強化
販売企画の充実
品質保証:源流からの各ステップでの品質のつくりこみ(図)
開発まで機能を拡張した2次サプライヤが、従来の製造主体の体質を転換し、開発・生産・販売の一貫した機能を持って競争力を確保するために、必要な活動
3 小括
80年代のサプライヤのTQCの特徴は、すでに70年代に現れていた
企画・開発面での競争力発揮がより重要に
営業戦略の重視
TQCの課題は時代によって異なっており、それはサプライヤの抱えていた問題が異なっていたことによる
QCサークルの位置づけの相対的低下
1970年代以降、より源流にさかのぼった段階で活動がおこなわれるようになり、そのことがTQCの中身に影響を与えた
上記の傾向は、1次サプライヤから2次サプライヤへと拡大した
バブル期における目先を変えた車づくりへの傾斜→バブル崩壊
TQC(現在はTQM)の方向や位置づけはさらに異なるものとなるだろう
バブル崩壊後も、工作機械産業は受注、利益を伸ばし続けている
本章は工作機械メーカーの販売・サービス活動をとりあげ、それがNC工作機械開発システムの一貫としての性格を持つことを明らかにする
工作機械メーカーの生産システムは考察しない(他章との違い)
工作機械を使用する製造業全体の生産システム高度化
工作機械産業の競争力分析
分析方法:新しい技術の普及は、新しい技術的知識の普及を前提としており、その担い手を必要としている
1 在来技術と新技術の不連続性
NC工作機械に対応した新しい労働と従来の労働の関係
機械の操作あるいは加工にかかわる労働
ハンドルやレバーの操作が消滅→NC装置が代替
NC装置を機能させるための新たな労働の必要性
パートプログラムの作成、座標計算、NCテープの作成
加工上の知識やノウハウを、NC言語によるプログラム作成というプロセスを経て実現する必要
2 市場の特質
中小零細規模の部品メーカーを中心とするユーザー
パートプログラム作成、座標計算などに不慣れな熟練工
自力で技術教育をおこなえず
1 技術教育
1970年代における工作機械産業の技術教育
集中講義方式(「NC教室」など)
技術者派遣と試作請負サービスによる技術教育
(1)派遣・請負サービス
サービスの内容(表)
派遣サービス
ユーザーに1ヶ月間M社の社員を派遣し、NC旋盤の技術指導を行なう
特徴
現場のすべての従業員に技術教育を行なえる
従業員派遣によってユーザーの労働力が不足することがない
試作請負サービス
依頼のあった仕事についてM社の社員がM社製旋盤1台だけを使用してすべて加工できるようなプログラムを作成してみせる
ターゲット
NC機の有用性に疑念を抱く潜在的ユーザー層
NC機を導入したが使いこなせない他社製品のユーザー層
技術教育活動としての三つの側面
新規ユーザーに対する本来の意味での技術教育
潜在的ユーザーに対する啓蒙的な技術教育
既存ユーザーに対する技術コンサルティング的活動
(2)集中講義方式
集中講義の内容(表)
中高年の熟練工にとっての辛さ
OJTからOff JTへ
(3)機電一体のメンテナンス
M社製品に対する従来の製品保証
NC装置部分――NC装置メーカー
機械本体部分――M社
M社によるNC装置のメンテナンス体制の整備
M社開発ソフトの組み込み、NC装置の完全なOEMへの移行
2 営業所の新しい機能
(1)技術センターとしての営業所
A社の「ビフォアサービス」
「A社・マシン・ツール・プラザ」における展示、実演加工、技術コンサルティング
A社の「アフターサービス」
サービス要員が全国40ヶ所の営業所を拠点にユーザーの現場におもむく
M社の営業所=「テクニカルセンター」
加工試削室、研修会議室、和室、浴室の整備
M社の社員がユーザーといっしょにプログラムをつくり、ワークを加工
(2)新たな営業所に必要な人材
O社による営業所への「切削員」の配置:生産部門の従業員
3 技術教育とメンテナンスのための人材養成
(1)新入社員に対する技術教育
O社の場合
入社後1年間は特定の部署に配属しない
実習工場で在来型の工作機械、NC工作機械の操作、プログラミング、ヤスリがけなどを2ヶ月間実習
組立を6ヵ月間実習
(2)選抜社員に対する技術教育
M社の当初の教育システム
OJT中心:「ブルーカラーが他社のブルーカラーに売り込む」
1975年以後の教育システム
技能教育課の設置
あらゆる部門から訓練生を選抜し、NC旋盤の生産技術を習得させる
電機関係を特別にマスターするための制御班編制
(3)社内技術教育における技術部門の役割
技術部門のスペシャリストが社内全部門に新たな技術的知識と技能を伝播した
技術的知識の伝播経路
NC工作機械メーカー技術部門→(企業内教育)→メーカー内部の全部門→(ユーザーへの技術教育)→国内の機械加工業者
4 販売・サービス活動の変化にともなう流通経路の短縮化
販売と、技術教育・技術コンサルティング・メンテナンスの一体化
工作機械商社の存立基盤の動揺
1 開発と販売の統合
(1)市場志向の製品開発システム
製品開発における情報の流れ(図)
ユーザーの現場における要求の吸い上げ
営業と技術の連携
SL、TL、BBシリーズなどヒット商品を生み出す
(2)開発・販売機能の分社化
1968年設立のZ技研のケース
Y社の系列会社A工業を母体とし、これにY社技術開発センタを吸収して資本金1600万円で立ち上げ
製品開発部門と販売部門を統合した独立企業
小零細企業を含む広範な市場に受容されるNC機を開発する手段
ユーザーと製品開発をリンクさせる開発は、NC機の本格販売以前からおこなわれていた
2 汎用旋盤市場における競争の重心とNC化
モーズリーのスライドレスト付き旋盤以来、汎用旋盤は基本構造が大きく変化せず
多品種少量生産を熟練工に依拠しておこなう
熟練工の使用実績に支えられた老舗メーカーのブランドイメージ
新興工作機械メーカーの企業行動
ユーザーの現場に足を運んで、使い勝手のよい製品を開発
価格の引下げ
→製品開発のノウハウ蓄積
NC機の登場による競争の重心の変化
品質・ブランドから新しい機械機能の開発へ
新興メーカーが蓄積したノウハウが生きる
工作機械メーカーによるNC技術教育と結合した販売・サービス活動の役割
NC機の操作や保守に関わる新しい知識や、NC機の有効な利用方法に関するノウハウを普させた
とりわけ中小零細企業ユーザーへのNC機普及を促進
NC機開発システムの一環としても機能
日本製NC機の輸出先においても展開される
半導体産業における製品構成の変化
ロジック
DSPなどマルチメディア分野の新製品の登場
携帯情報端末、情報家電、自動車用のマイクロプロセッサの標準規格をめぐる競争
メモリ
ASIC化の進展
日本企業の製品選択:システムLSI
半導体産業における競争
ユーザーニーズに応えた迅速かつ連続的な新製品開発
半導体産業の生産システムの形成プロセス
1970年代:自動化された生産システムの原型が形成される
1980年代終わり:フレキシビリティ、歩留まり率問題の重大性低下
生産システム構築の条件
海外から半導体製造装置メーカーを購入し、それを適切に運用できるノウハウと人材があれば、比較的簡単
「日本的」、「アメリカ的」システムを摘出できない
課題
開発プロセスと生産プロセスの統合的理解
半導体生産に必要とされる技術・技能
1 半導体技術の開発課題
(1)開発期間の短縮とコストの抑制
開発期間の短縮
試作期間の短縮
1-2ヶ月→10日弱-15日になっている企業あり
開発テーマの重点化
すべての製品を先進的に開発することは大手企業にも不可能
開発分野の絞り込み、製品分野間の開発上の相乗効果
企業間提携関係の構築
顧客の多種多様なニーズに対応するため、製品ラインナップは多様にする必要
技術提携、製品提携契約を結ぶ
(2)生産工程イノベーション
半導体製造装置の低コスト化と生産工程の簡素化の課題
半導体市場の拡大→設備投資コストの膨張
製品高度化→生産工程の複雑化
製造装置の低コスト化
マルチプロセス化
装置の多世代使用
生産ラインのフレキシブル化
クラスタ・ツール化とマルチプロセス化による需要へのフレキシブルな対応
2 半導体企業の並行開発システム
(1)DRAMの世代交代と各世代製品の研究開発の段階
研究開発の多面的分野
基礎的研究/製品開発/製造装置開発
DRAMの技術トレンド:3-4年で集積度の高い新製品に置き換わる
10年先の世代の開発につながる基礎的研究
例:4G(2008年頃の市場の中心)は基礎的研究。1G(2005-2006年の市場の中心)は量産化に向けた露光光源や回路構成の研究開発
(2)並行開発システム
時差並行開発システム
インテルでは1チームが次世代マイクロプロセッサを開発、もう1チームが次々世代を開発
2チームを持つ負担があっても、他に研究開発上先んじることが競争優位につながる
同一世代に二つの開発チームをつくり、社内で競争させる方式(図)
(3)開発、試作、量産化のハーモナイゼーション
開発、試作、量産化の期間短縮
試作ラインの早期立ち上げ:シミュレータ、検査環境の整備
設計ミスの減少:シミュレータ、CADの開発
製品開発組織の整備
階層の簡素化
顧客ニーズに応えて、マイナーなカスタム化だけを行うデザインセンターの設置
(4)コンカレント・エンジニアリング手法
コンカレント・エンジニアリングの定義
「先端チップの実現に必要な複数のプロセス・デバイスの要素技術を、システム、回路などの設計技術と同時並行的に、かつ十分な相互作用を持たせながら確立していく」手法(西義雄)
インテルのケース(図)
二つのねらい
製品の早期開発、早期市場投入
開発コストの抑制
1 半導体生産工程の特徴(図)
(1)設計工程
商品企画で決められた機能をICとして実現するために、論理図、回路図、及びマスクデータに変換する
(2)マスク製造工程
ウェハにさまざまな回路パターンを焼き付ける際に使う精密写真原板を作成する
レティクル、フォトマスクの作成
(3)ウェハ製造工程
多結晶シリコンの製造
単結晶シリコンの製造
単結晶インゴットのシリコンウェハへの加工
(4)ウェハ処理工程
シリコンウェハ上にフォトマスクを使用して多数のICを同時に作り込む
酸化、フォトレジスト処理、露光・現像、エッチング、洗浄、不純物注入、CVD、スパッタリングなどの工程を繰り返す。
クリーンルーム内部で1-2ヶ月を要する
(5)組立工程および検査工程
組立工程は後工程ともいい、通常1週間程度を要する
組立工程と検査工程をあわせて、従来は9日程度を要したが、5日間に短縮している工場もある
2 半導体生産工程の全体的特徴
生産工程が複雑な上に、製品高度化にともなってますます高度化、精密化、複雑化するので、プロセス・イノベーションが重要である
微細加工技術高度化のため、製造装置を頻繁に置き換え
温度・濃度・圧力などの設定条件に関するノウハウの獲得の重要性
半導体製造装置の進化
枚葉化
マルチプロセス化
クラスタツール化
ダウンサイジング
多世代化、標準モジュール化
生産リードタイムが長い(平均1-2ヶ月)
設計不要の場合は、メモリ2ヶ月、ロジック4週間
パソコンが3ヶ月で世代交代することと比較すれば、かなり長い
新工場におけるラインの立ち上げには半年必要
3 生産システムの特徴 −多品種、変量、フレキシブル性−
単品種大量型生産工程から多品種混合生産ラインへ
枚葉化、クラスタ・ツール、多世代共通利用
1 半導体開発システムと生産システムの関連
(1)半導体開発と生産工程の相互連関
開発された次世代製品の量産化
従来は歩留まり率工場が課題であったが、80年代末より変化。デジタル製品では問題なし
開発プロセスを考慮しない生産システムでは、新製品の生産を順調に増大させることは難しい
(2)試作ラインと工場パイロット制
試作ラインの強化
90年代に各社が事業所内に試作棟建設
工場パイロット制
製品開発に使用する試作ラインを量産工場につくる→試作終了後に装置を増やして量産立ち上げ
前の世代の試作ラインはなくなる
東芝大分工場の例:工場の技術部隊がプロセス開発
(3)ファンドリ・ビジネスとシステムLSIが開発・生産システムに与える影響
ファンドリ・ビジネスとファブレス企業の出現:開発と生産を異なった企業がおこなう
システムLSIとIP
システムLSI:ワンチップ上にロジックもメモリも搭載
IP(Intellectual Property):システムLSIなどを設計する際に必要になる電子回路の機能ブロックの設計データ
開発・生産システムにおける分業関係は変化する可能性があるが、両者を一体的に理解する必要性は変わらない
(4)開発・生産システムと製造装置メーカー
製造装置メーカーの課題
プロセス開発もおこなっている
ユーザーと密接な関係を持つか、多様な製品群をそろえるか
新ライン立ち上げと製造装置メーカー
搬入、立ち上げ、研修まで責任をもっておこなう。
2 半導体生産システムにおいて必要とされる技術と技能
(1)半導体工場において必要とされる技術と技能
技術者、作業者の分業と移動
メンテナンスとオーバーホールは技術者が
生産は作業者が
作業者の移動は組立→拡散が基本。海外への組立工程移管に伴う措置。
技術者の移動は全国レベル。
小集団活動(図)
従来はTQC、現在はTPMを重視
日本電気:マネジメントとしてのTPM。故障、チョコ停対策重視。
関西日本電気によるTPM理解
Total Productive Maintenance→Total
Productive Management→Total Perfect Manufacturing
(2)作業者の技能の向上
社内資格の設置による技能の向上
国家資格よりも高い水準であり、作業内容を反映
研修施設における技能者再教育
東芝大分工場の半導体技術教育センター(1991年4月開講)(図)
センターの必要性
半導体技術・技能の高度化対応
技能者・技術者の早期育成志向
全技能者対象のプログラムと、選抜者対象プログラム
1年程度の時間をかけた教育
A社の半導体技術教育研修所(1996年)
若干名だが専任講師体制
班長一歩手前の10年程度の経験年数の人が入所
技術者は別の研修所
開発システムと生産システムの深い相互関係
日本メーカー:開発システムと生産システムを一体として構築
アメリカメーカー
インテル、モトローラ、TI:日本メーカーと同じ
ファブレス企業:開発に経営資源を集中
アジアのファンドリ企業:生産に集中
※各章の重点について(私見)
章 |
要素的把握 |
循環的把握 |
社会構造的・歴史的条件 |
現場労働者の技能と労働組織 |
多品種小ロット生産の生産管理 |
優れた製品を効率的に開発 |
開発能力を持ったサプライヤーのシステム |
繊維・アパレル産業 |
○ |
◎ |
◎ |
|
◎ |
○ |
○ |
鉄鋼メーカー(高炉) |
◎ |
|
◎ |
◎ |
◎ |
|
|
自動車部品サプライヤ |
|
◎ |
◎ |
|
◎ |
◎ |
◎ |
工作機械メーカー(販売・サービス) |
○ |
◎ |
○ |
◎ |
|
◎ |
|
半導体メーカー |
○ |
◎ |
|
○ |
○ |
◎ |
|
※生産システムの評価とバブル崩壊後への展望
システムと技術の継承
システムの継承・発展:工作機械、半導体
生産技術・管理技術を継承:鉄鋼、自動車部品、工作機械、半導体
崩壊する旧システムと新システム構築:繊維・アパレル
多品種・小ロット対応
多品種・小ロット化と量産の調整:繊維・アパレル、鉄鋼、半導体
多品種・小ロット生産対応の見直し:鉄鋼、自動車部品
企業間の長期継続取引
長期継続取引の重要性:自動車部品、工作機械
取引問題の深刻さ:繊維・アパレル、自動車部品
生産システムのパフォーマンスを左右する能力の所在
もとから現場重視でない:繊維・アパレル、鉄鋼、半導体
現場重視から他へシフト:繊維・アパレル、鉄鋼、自動車部品
現場での技能の内容の変貌:鉄鋼、工作機械
雇用問題
先鋭化:繊維・アパレル、鉄鋼