update:1999/01/11
川端 望
補足:企業論第2部の追加レジュメである。テキストであった坂本清編著『日本企業の生産システム』に沿っているが、いくらか、私の解釈で変更している部分もある。途中でテキストが発売になったので、レジュメは途切れている。また、図表は省略している。
日本的生産システムの神話と現実
「日本的生産システム」といわれた内容
労働者の高度な技能
多品種小ロット生産を効率よく進める生産管理
すぐれた製品を数多く効率的に開発する製品開発システム
開発能力を持ったサプライヤー・システム
「日本的生産システム」のパフォーマンス
コスト・品質の両立(表・図)
納期・製品多様性の両立(表)
「神話」の崩壊と次世代システム像なき「リストラ」「大競争」。
1 戦後日本の生産構造の特質
戦後経済発展の次期区分(表)
1945-55年 戦後復興
1956-73年 高度経済成長
1974-79年 脱石油危機
1980-85年 ME技術革新
1986-90年 日本的生産システム全盛期
1991年以後 ?
鉱工業生産指数からみた持続的成長と90年代不況(表)
加工貿易から集中豪雨輸出、海外生産展開へ
産業構造の転換
製造業企業の経営動向(表)
石油危機・バブル崩壊という転換点
石油危機後の適応
バブル崩壊後の不適応
労働動向(表)
リストラ・減量経営と第3次産業への労働力移動
長い労働時間
労働運動の停滞と賃上げの鈍化
2 石油危機と生産システム再編の特質
石油危機が提起した三つの課題
脱石油型・省エネルギー型産業構造への転換
経営合理化
市場創造
生産システム再編の三つの潮流
合理化
脱石油、「減量経営」、脱大量生産
情報化
OA化とFA化・システム化
ME技術関連製品の生産と生産システムのME化
情報化による産業技術基盤の変化
広域化
国際化。輸出と在外生産。
地域化。技術先端部門の地域展開と東京一極集中。
1 日本的フレキシビリティの歴史的条件
欧米:経営側と労働側の要求の接点としてのフレキシビリティ
日本:経営による統合を前提とするフレキシビリティ
労働者統合
階層的下請システム
2 トヨタ生産システムの「原理の革新」について
ポスト・フォーディズム論における評価基準
プロダクティビティ/フレキシビリティ/ヒューマニティ
「トヨタ生産システム」=「リーン生産方式」論
生産性ジレンマの克服が中心論点=P優先
労働者の積極的参加は生産性の要件
トヨタ生産システムの革新性=フレキシブル同期化
ジャスト・イン・タイム(表)
日本的労働編成
トヨタと日産におけるヒューマニティ理解
グローバル競争と日本的生産システム
バブル崩壊のインパクト
1 繊維産業とは
生産の流れ
ファイバーの区別
短繊維と長繊維
天然繊維と化学繊維・合成繊維
紡績・撚糸(短繊維は紡績、長繊維は引き揃え、撚りかけ)、織編、染め、加工(シワ防止、縮み防止、つや出し、減量)、裁断、縫製、加工(洗い加工、形状記憶、形態安定)。
関連企業
川上――原糸メーカー
紡績企業(織り、無地染め、加工も)
合繊企業(ファイバーと仮撚糸生産。その後は系列企業が賃加工することも)
川中――織布専業企業、編立専業企業、染色専業企業、加工専業企業
川下――縫製企業(一貫、またはパーツ毎、種類毎)
産地における小零細企業間の分業
メーカー以外(糸商、服地商、商社、アパレル製造卸、小売)
→循環的把握中心に分析
2 分析の前提――他産業との情勢の違い
中国品とイタリア品の挟み撃ちにあう日本製アパレル
アパレルの輸出競争力の弱さ(表)
輸入急増、供給過剰、国内生産減
統括者不在の「生生連携」問題
3 構造調整の必要性とその困難性
バトンタッチ型長距離走から大規模二人三脚型短距離走への変化
アメリカのQRSとイタリア産地生産システム
4 地球環境対策の遅れ
1 戦後史の概観
二つの源流
石油危機後の不況とファッション産業としてのアパレル産業
インポートブランドブーム
生産拠点の中国進出
2 構造転換を模索するアパレル産業
繊維工業審議会・産業構造審議会『新繊維ビジョン』(1993年12月)
マーケットイン
QRS(クイック・レスポンス・システム)ないし標準EDI(電子データ交換)による小売り・アパレル・素材の企業間を連結。
問題:「契約が契約でない」取引慣行
クリエーション
デザイン機能の充実、素材加工開発
それだけでは経営が成立しない
グローバル戦略
生産機能の海外展開
国内に必要な企画開発生産機能を弱体化するケースあり
過渡期の辛苦を和らげる方策――繊維産業の模索の先駆的意義
中国とも欧米とも異なる土俵を日本の生活文化・技術・技能を踏まえてつくりあげる
企業・業界・関連産業・非営利機関の役割分担を明確にしたネットワーク
行政の新しい「適切な分割と結合」
1 DM毛糸QRシステム――最終製品を生産し情報共有が容易と思われるケース
T紡績の「DM毛糸QRグループ」(図)
代理店在庫なし。物流センターからペリカン便で直送。
物流センターはJANコードでの入出庫管理
物流センター在庫が一定水準を切ると生産依頼
流通面の問題
地方後回し、小口対応、小零細小売り対応
QRは市場創出にはとってかわれない
生産面の問題
稼働率・生産性確保と在庫削減要請・実需のシーズン変動性の対立
T紡績の統一意思のもとにない独立企業間の取引だったら?→Win-winルールを決めないとコストのおしつけあいに。
見込み生産と多品種による調整必要→中小零細企業の対応困難
2 生産システムと情報化(M紳士服)
M紳士服のシステム
全社システム(店頭・本社・工場を含む販売・製造・調達管理システム)
工場管理システム(各工場での工程管理システム)
縫製前の準備を行なうCAD・CAMシステム
企画だけでなく自家生産をおこない、新しい試みを導入
1960年代:レディーメイド(RM)とイージーオーダー(EO)の混流生産
1978年:「Mアポロ計画」。
生産期間短縮による在庫減
1点流し生産とオンライン工程管理
1981年:レディーメイド・オーダー・システム
ブランド戦略の展開
混流生産の平準化
1点流しによる生産性の低さを中高級紳士服生産(ジバンシーなら10-23万円)でカバー
中高級品受注生産なので、QRSはメリットなく、海外進出と「品質革命」が問題。
3 合繊メーカーの素材生産システム
(1)新繊維生産システムとLPU
T社ポリエステル事業の新繊維生産システム(図)
目的:後引生産方式、日単位の納期管理、計画情報の重視、予定情報の次工程への転送、モノの動きと情報の動きとの一致、オンライン伝送によるペーパーレス、データベースの拡充→見切りロス、機会ロスの低減。
在庫30%減少、納期遵守率約80%向上。
顧客連携システムの未完成
販売部の希望量に基づいた月単位の見込み生産であり、受注生産ではない。
特徴:高付加価値品の見込み生産
(2)企画開発システム
「一貫競争力強化」(図)
(3)技能
ファイバー・糸生産では熟練不要。
縫製の高次加工工程では熟練必要。合繊メーカーによる囲い込み
クリエーションは西欧追随。QRSは前提条件(手段の標準化と取引問題の解決)が未整備。
(株)ワコールのケース
標準化とQRS
小売り情報を在庫管理に利用
多くの取引先で異なるフォーマット
予測しやすい商品特性とブランド力に支えられた自社生産=QRに好条件
QRSとクリエーション連動の困難
販売情報・在庫情報・生産情報は、リピート・在庫削減・増産には利用できるが、新製品開発には使えない。
EDIによるQR対応でコストを浮かし、製品開発に投入、が現実。
1 生産システム論と日本鉄鋼業
労働組織と技能を重視した「日本的生産システム」論で理解できるか?
多品種・少量生産へ進むのか?
鉄鋼生産工程の中間的性格(図)
2 分析視角
設備投資行動(技術)、生産計画・管理システム(管理)、労働組織・技能(労働)
時期区分(図)
第一次石油危機−円高不況(1973-85年)
景気回復−バブル崩壊後不況(1986-93年)
1 高度成長期の達成と石油危機
(1)高度成長期の生産システム
新鋭製鉄所とフレキシブルな労働組織(能力主義管理、現場主義の問題解決、自主管理活動)
欧米に追いついていた国際競争力
(2)製鉄所建設競争の終焉と「減量経営」への転換
高度成長期の競争:新鋭製鉄所の建設、増産、シェア獲得
1970年代の転換
同質化競争、新日鉄成立(70年)、石油危機・74-5年恐慌、コスト競争力確立
協調的寡占の企業行動
「コスト・プラス」方式による利潤確保
既存設備の有効利用によるコスト削減
遊休設備の維持と再稼働
(3)生産システムの課題
設備と生産量を拡大せずにコストを削減
多品種・小ロット・高級化対応
2 製鉄所建設の終焉と合理化投資
(1)能力拡大投資の停滞と合理化投資への転換
設備投資の変遷(図)
能力拡張から維持・補修、合理化・省力化、省エネルギーへ。
(2)生産性向上・省エネ投資の展開
製銑工程:高炉建設の終了とともに投資停滞。
製鋼工程:造塊・分解法から連鋳法への転換(連鋳比率73年44.1%→85年91.1%。鋼材歩留まり73年86.4%→85年91.1%)。微細な成分調整のための取鍋精錬炉など。
圧延工程:ストリップ・ミル増強・リプレース。連続焼鈍装置設置など。
3 生産計画・管理システムの発展とME技術
(1)自動化・連続化と多品種・小ロット化
一貫大量生産と多品種・小ロット化の矛盾
工程を連続化・高速化する必要性と工程分割・段取り替えの必要性の矛盾
一貫管理の必要性とバッファの必要性の矛盾
在庫と納期のトレード・オフ
製鋼・熱延連続化の事例
スラブヤードでの調整とHCR/DHCR/HDR
技術と計画・管理システムによる解決
(2)生産計画・管理システムの発展とME技術
三つのレベル
工程レベル:プロセスコンピュータによる制御
一貫管理のレベル:計画値体系を基盤とした製鉄所の総合運営管理(図)
生産・販売インターフェース:オーダー・エントリー・システムの発展
不可欠の要件
総合的な計画・管理システムの設計思想
ME技術・情報技術
フレキシブルな労働組織との連動
工程間の連携
技術者とオペレーターの連携
(3)大規模システムの費用・効果
巨大システムの構築
主要産業中最大のコンピュータ要員
1分以内の1社1日当たり平均ジョブ数は第二次産業中最大
巨大システムの効果と費用
合理化効果(図)
売上高システム費用比率
|
1974年度 |
1986年度 |
鉄鋼業 |
0.658% |
1.049% |
第二次産業平均 |
0.356% |
0.53% |
4 自主管理(JK)活動への動員
(1)自主管理活動の性格
JK活動の二つの側面
「人間性」「生きがい」の強調
目標管理への組み込み
設備投資を伴わない改善
基本的性格:設備と労働組織を所与とした大衆動員的活動
(2)改善の成果と限界
JK活動による省エネルギーの成果(石油危機直後)
設備投資による省エネルギーへ(70年代末)
5 配置転換と労使関係
(1)生産構造調整と配置転換
7割操業に耐える稼働設備の集約
雇用調整
高炉メーカーの鉄鋼・鉄鋼加工部門従業員数
73年末18万3596人→85年末14万2816人
希望退職、指名解雇の回避
出向、配置転換、一時帰休、雇用調整給付金利用、自動車メーカーへの派遣。特に配置転換と転勤。
未解決な余剰人員問題
(2)労使関係における「雇用確保」規範
鉄鋼労連の「経済整合性」論
賃上げの自粛
雇用確保を優先した合理化への協力
経営参加の試みと限界
「中期生産構造」に対する新日鉄労連の対応
組合の規制力の限界
基本線:「終身雇用慣行」の確保を条件とした「減量経営」への協力
6 小括:生産システムの統合強化と変革への胎動
(1)「減量経営」の成果
不況の影響を相殺した「減量経営」。環境適応への成功(図)
物的生産性の停滞/原単位、歩留まりの向上
付加価値生産性の若干の上昇
(2)高度成長期との継続性
生産システムの統合強化という逆説
技術基盤としての新鋭製鉄所
生産計画・管理、JK活動の継続性
「終身雇用」慣行下での配置転換
継続性の理由
設備の継承性
課題の連続性(一貫管理、省エネルギー、生産性向上、多品種・小ロット生産)
競争相手の同一性(欧米鉄鋼メーカー)
(3)生産システム統合強化の限界
労働組織の限界
動員の限界と、ME化・システム化への対応の必要性
配置転換の限界と新たな人員対策の必要性
1 円高・バブル景気と「中期経営計画」
(1)国際競争激化とバブル経済
円高による価格競争力の変化(表)と収益性の悪化(図)
フル・コスト原則の放棄=不採算設備の廃棄へ
景気回復を受けた従来以上のファインスチール化と多品種・小ロット生産
多角化
(2)「中期経営計画」と生産システムの課題
銑鋼一貫体制の見直しを含む「中期経営計画」(表)
2 設備集約・選別投資の推進
(1)製鉄所間分業の再編
上位製鉄所への粗鋼生産の集中(表)
「減量経営」の成果の見直し
(2)多品種・小ロット高級化対応の設備投資
薄板のファインスチール化をめざした圧延・加工工程の拡張投資
3 ファインスチールの多品種・小ロット・大量生産
(1)計画・管理システムのさらなる精緻化
8000種類の自動車用鋼板
「オーロラシステム」の事例(図)
(2)多品種・小ロット・高級化による混乱
システム巨大化に伴う問題
汎用機上での開発と担当者の交替によるソフトウェアの不透明化
売上高システム費用比率の上昇
92年度鉄鋼業1.496%、第二次産業平均0.643%
多品種・小ロット生産と大量生産の矛盾の顕在化
工程レベル:エネルギー原単位の停滞・悪化
一貫管理レベル:工程連続化をロット集約のための調整時間が相殺
生産・販売インターフェースレベル:自動車メーカー向けの優先的手当
4 大量出向をめぐる労使関係
(1)人員削減の概要
高炉メーカー鉄鋼・鉄鋼加工部門従業員数
85年末14万1816人→92年末10万724人
新日鉄に見られる特徴(表)
技術職(ブルーカラー)の削減
生産縮小とME化・システム化による削減
人員削減が生産システムに引き起こす問題
「雇用確保」を規範とする労使関係の緊張
労働強化や技能の喪失によるパフォーマンスの低下
(2)大量出向の展開(表)
出向のタイプ
個々人の出向
「丸ごと」出向
分社化による出向
出向における賃金と労働コスト
出向先が給与を一部負担
基本給は変わらないが、超過勤務手当やその他労働条件が激変
玉突きの雇用調整
(3)「終身雇用」から「継続雇用」への転換
鉄鋼労連の「継続雇用」方針への転換
5 労働組織の再編成と技能の継承問題
(1)社外工比率の上昇(図)
(2)本工組織の少数精鋭化と技能継承
オペレーション・メンテナンスにまたがる組織のスリム化
オペレーションの多能工化
軽保全のオペレーションへの組み込み
技能の技術化と継承への取り組み
技能の継承の必要性
自動化・マニュアル化困難な作業の残存
微調整や非定常時対応
日常的活動の中での経験の客観化
AIの事例
(3)有力社外企業と一貫管理
社外企業の再編
「1業種1社制」に向けた再編
「丸ごと」移管
社外企業の「自主管理体制」
各種インセンティブ制度
一貫管理がもたらす相互依存と、有力社外企業の必要性
日鉄運輸の事例
6 小括:生産システム再編成の帰結と新たな課題
(1)リストラクチャリングの効果とバブル崩壊
生産性の向上と設備の有効利用の失敗(図)
物的生産性向上
付加価値生産性の上昇と低下
バブル崩壊による採算悪化
ファインスチール化の失敗
再び価格競争激化(表)
本社費・出向差額負担の格差
(2)統合強化から再編成へ
設備投資、計画・管理システムにおける継続性
労働組織の転換:技能への依存の最小化と必要な継承への努力
過渡的な雇用関係
労働組織・技能重視の「日本的生産システム」イメージは、高炉メーカーでは第1次石油危機直後のみに妥当。
雇用関係の不可逆的変化
生産現場、製鉄所単位での改善・合理化から全社レベルのトップ・ダウンの生産システム再編へ
フレキシブルな労働組織の機能の縮小と継承
高炉メーカーの生産システムは、いぜんとして大量生産であり、そこへの多品種・小ロット生産の組み込みが転機を迎えている。
生産技術・管理技術の継承
開発・生産・販売インターフェースの洗い直し
1 自動車産業とTQC
自動車部品メーカーの階層構造
TQC(総合的品質管理)についての通説的理解
アメリカ:設計から販売まで全部門に、品質管理の専門家が品質管理を行う
日本:トップから現業まで全階層と全部門で品質管理を行う
1960年代以降の自動車産業のTQC(表)
1960年代:自動車メーカー→70年代:一次サプライヤ→80年代:一部の二次サプライヤ
フレキシブル生産システムの導入と並行
2 本章の課題
部品サプライヤのTQCの活動を、@サプライヤと自動車メーカーとの関係、Aサプライヤ自身の生産システムの展開、との関わりで見る。
主要な資料:デミング賞『受賞講演報告要旨』
1 トヨタのTQC導入
(1)トヨタの品質管理活動
導入のきっかけ
60年新車の品質問題
貿易自由化への対応
61年TQC導入、65年デミング賞受賞
(2)サプライヤ管理と品質管理
無検査納入の実施→サプライヤの品質管理能力向上を図る必要性
1966年「オールトヨタで品質保証」
TQCのサプライヤ・販売店への展開
購買管理部による指導援助
生産拡大により、品質管理が追いつかない状況→70年トヨタ品質管理賞実施
2 サプライヤのTQC活動
60年代後半にデミング賞、中小企業賞をとった2社を事例に
(1)関東自動車工業(66年デミング賞受賞)
委託生産によるトヨタ社の組立を行う(サプライヤとは少々異なる)
品質管理の課題:初期生産時の品質の早期安定
トヨタより月産生産台数が少ない
生産管理全体を対象にしていたことに注意
QC教育(表)
原価企画の実施
ラインオフ後改善→ラインオフ前→生産準備以前
(2)小島プレス工業(67年デミング賞中小企業賞受賞。当時従業員490人)
1)TQCの背景
トヨタの量産体制確立にあわせて品質管理体制整備(品質問題、無検査納入)
社内独自の事情(新技術、製品分野への展開、若年労働者の訓練)
2)TQCの展開
QC教育、QCサークルの活発化
品質保証:「製造工程で品質を作り込む」
原価低減活動:技術化によるVA、IE+創意工夫提案制
納入ロット不合格率の低下:64年4月0.5%→65年中頃0.1%
3 小括
高度成長期のサプライヤの生産システム
量産の実現
生産の流れづくりによる品質向上、コスト低減
企業規模の拡大により、一度つくった体制が弛緩することも
1 高度成長期末期から石油危機期のサプライヤ
70年前後にトヨタのサプライヤが抱えた課題
年産300万台体制にあわせた量産体制の拡充
かんばん方式の納入への利用(生産はロット生産など)
73年第1次石油危機による環境の一変=生産量の停滞
サプライヤの新方針
トヨタ生産方式の導入(設備は拡張せずに生産性向上)
環境規制、FF化、ME化に対応した製品開発
以下、70年代のデミング賞、日本品質管理賞受賞企業の事例
2 サプライヤのTQC
(1)アイシン精機(表)(72年デミング賞、77年日本品質管理賞受賞)
1)石油危機以前
60年代終わりから新製品開発が品質保証の課題に
70年「50V計画」:年間売上目標の30%以上の新規拡販に寄与する商品開発
開発に関して客先から評価されるケースが増え、開発が競争の焦点に
2)石油危機以後
石油危機の影響(表)
売上高は減少しないが、売上原価率が上昇して経常利益が減少
「大鑑巨砲主義」からトヨタ生産方式へ
75年度までの実施事項
省資源活動の徹底
かんばん方式の推進
原価企画活動の強化
潜在的品質問題撲滅活動の強化
76年度以降の実施事項
商品企画機能の強化
計画段階に重点をおいた品質保証体制
人材ローテーションの推進と管理者教育の強化
3)1970年代のTQC
72年と77年の異同
連続――製品開発力の強化
追加――かんばん方式(トヨタ生産方式)の導入
(2)東海理化電機(78年度デミング賞受賞)
1)TQCの背景
TQCの課題
第1次石油危機によって露呈した社内の諸問題の解決
生産、納入に多忙で近代経営管理技術の導入、活用が不十分
70年代の新製品増加に対応(製品はスイッチ、ロック等)
新規立ち上げ件数:74年度約700件→77年度1523件
2)TQCの展開
企画・設計から量産に至るまでの品質保証(図)
75年トヨタ生産方式の導入とこれに対応した品質保証体制
購買管理
購入価格の見直し、購買仕様の明確化、QC基礎教育
協力会の結成
原価管理:量産までに目標原価達成
(3)浜名湖電装(79年デミング賞受賞)
1)TQCの背景
最大の取引先は日本電装で、2次サプライヤのケース。
日本電装からの生産移管の拡大に対応したTQC
2)TQCの展開
製品開発への参画(図):設計段階からの品質保証
QCサークルの重視
トヨタ生産方式はそれほど重視されず
3 小括
TQCが石油危機後の新たな環境に対応する手段として用いられている
開発力が問われてきたことに伴い、企画・設計段階での品質保証が焦点になっている
1次サプライヤではトヨタ生産方式の導入・定着が重視されている
1次サプライヤでは2次サプライヤへの展開が強調されている
1 1980年代のサプライヤ
自動車産業のサプライやシステム、製品開発システムが注目される
2 サプライヤのTQC
(1)高丘工業(現アイシン高丘)(80年デミング賞受賞、85年日本品質管理賞受賞)
自動車用銑鉄鋳物部品専門メーカーとしての困難
小型化の中で鋳物減少
80年代初頭の売上・利益・生産の低下(図)
80年代のTQC
営業戦略の重視
顧客ニーズの先取り
吸排気系部品を中心に新分野開拓
新製品開発を、製品企画以前の商品企画段階から位置付け
日本品質管理賞とデミング賞の違い:@源流指向、Aニーズ指向、B戦略指向
(2)アスモ
日本電装の関連会社、トヨタの2次サプライヤ
ワイパシステム、モータ類、ウォッシャシステムなどの生産
生産委託から開発設計、事業企画の譲度へ
86年TQC導入
長期的な視野に立った開発テーマの設定
幅広くより高度な技術力の強化
販売企画の充実
品質保証:源流からの各ステップでの品質のつくりこみ(図)
開発まで機能を拡張した2次サプライヤが、従来の製造主体の体質を転換し、開発・生産・販売の一貫した機能を持って競争力を確保するために、必要な活動
3 小括
80年代のサプライヤのTQCの特徴は、すでに70年代に現れていた
企画・開発面での競争力発揮がより重要に
営業戦略の重視
TQCの課題は時代によって異なっており、それはサプライヤの抱えていた問題が異なっていたことによる
QCサークルの位置づけの相対的低下
1970年代以降、より源流にさかのぼった段階で活動がおこなわれるようになり、そのことがTQCの中身に影響を与えた
上記の傾向は、1次サプライヤから2次サプライヤへと拡大した
バブル期における目先を変えた車づくりへの傾斜→バブル崩壊
TQC(現在はTQM)の方向や位置づけはさらに異なるものとなるだろう