2002年度企業論:第1回小テストの問題と正解

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2002年11月28日公表

川端 望

 

 ※2002年11月27日に実施した小テストの問題と正解は以下の通りです。公表が予告より1日遅れたことをお詫びします。この小テストの実施要領は、11月13-18日に掲示物(プリント版)で発表日を全受講者に予告した上で、11月18日の授業時間に発表し、メーリングリストにも流しました。

 

 

 以下の設問に解答せよ。解答に際しては、答案用紙に問題番号を記し、設問と解答の関係が明確になるように書くこと。

 

T. 次の文章は、いずれも授業の内容の一部である。空欄をそれぞれ15字以下で埋めよ(空欄一つにつき1点。計14点)。

 

1.マルクス経済学による工業経済学は、工業化が進展する経済の総体的な把握をめざしていた。近年における経済学の科目分類で言えば、(@開発経済学〈論〉。<[産業組織論][産業経済論]は不可>)と同じような役割を工業経済学が果たしていたと言えるだろう。

出典:「産業と企業の経済理論」スライド13。

 

2.産業経済論の対象は製造業と非製造業とを問わない「産業」である。「産業」は産業構造、産業連関、個別産業などのレベルでとらえることができる。個別産業の種別区分は、産業中分類では製品によってなされている。製品の同一性とは、おおまかには製品市場の同一性であるから、個別産業分析とは、製品市場での(A企業間関係[競争]、[競争と協調]、[競合と協調]、[競争と独占]<[取引]は0.5点>)の経済分析である。

出典:「産業と企業の経済理論」スライド17。

 

3.(B人間)と(C自然)との物質代謝活動における位置の違いに注目するならば、「工業経済学」「商業経済学」「サービス経済学」という区分の仕方にも意味がある。

出典:「産業と企業の経済理論」スライド20。

 

4.産業組織論の「S-C-Pパラダイム」とは、(D市場構造[産業構造]<[企業構造]は不可>)、(E市場行動[産業行動][企業行動])、市場成果の3局面から個別産業を分析する方法である。

出典:「工業経済学と産業分析」12頁ほか。「産業と企業の経済理論」スライド24。このほか、授業で繰り返し強調。

 

5.近代経済学においては、企業の経済分析が盛んになっている。その理論的前提は完全競争市場を想定しないことであり、基本的な視角は、市場と企業を、経済の基本問題である(Fコーディネーション)と(G動機づけ[インセンティブ])を解決するための代替的な方法とみなすことである。

出典:「工業経済学と産業分析」17頁。「産業と企業の経済理論」スライド36。

 

6.テキストにおいて自動車産業の市場成果は、生産の効率性、動態的効率性、(H社会的効率性<[環境効率性]は不可>)によって測られている。このうち最後のものは、業界が自動車の排気、安全性、燃料消費について、いかにより広範な公共の利害に貢献したか、に焦点をあてたものである。

出典:『現代アメリカ産業論』第4章、134-137頁。このほか授業で何度か強調。

 

7.規模に関する収穫逓増には五つのパターンがある。機械・装置の大規模化が技術的効率を向上させる場合、生産の大規模化とともに生産物単位当たりの(I固定費〈用〉<[減価償却費][長期平均費用]は0.5点、[限界費用][費用]は不可>)が低減する場合、範囲の経済が作用する場合、学習効果がはたらく場合、ネットワーク外部性(経済性)がはたらく場合である。

出典:「自動車産業:補足」スライド5。このほか授業で何度か強調。

 

8.次世代自動車の本命と言われる燃料電池搭載自動車は、技術標準をめぐる競争を引き起こす。特に、燃料電池搭載自動車、その整備サービス体制、(J燃料供給インフラストラクチュア<[燃料スタンド][燃料供給システム][次世代自動車向けサプライヤー]は可。[燃料][サプライヤー]は0.5点。[ガソリンスタンド][広告][ディーラー][インフラ]は不可。>)の間に補完性があるために、自社規格を先に普及させたものが有利になると言われている。

出典:「自動車産業:補足」スライド9。

 

9.マイクロソフトはMS-DOSのライセンスをOEM先のメーカーに供与する際に、(KCPUライセンス<[出荷台数ベースのライセンス]も可。[排他的ライセンス]は0.5点>)という方法をとった。例えば、1台当たりfと設定されたライセンス料を、最小出荷台数10万台について支払うことが合意された。OEM先メーカーは、出荷するコンピュータにMS-DOSが搭載されていようといまいと、また出荷台数が10万台未満の場合であっても、10万台分のライセンス料を支払った。この場合、OEM先にとっては、10万台まではMS-DOSをインストールする限界費用が(Lゼロ[無料])になった。

出典:『現代アメリカ産業論』第5章155-156頁。

 

10.マイクロソフト独占禁止法訴訟の一つの争点は、ウィンドウズとインターネット・エクスプローラーなどのミドルウェアを(Mバンドリング<[バンドル][抱き合わせ販売][セット販売]なども可。[インストール]は不可>)することが市場独占につながるということであった。

出典:『現代アメリカ産業論』第5章168-169頁、174-177頁、「コンピュータ産業トピック MS独占禁止法訴訟のその後」の全体。

 

U. 次の文章は、いずれも授業の内容の一部である。空欄をそれぞれ10-20字程度で埋めよ(空欄一つに付き2点。計6点)。

 

11.ローレンス・ホワイトによれば、ビッグスリーが1970年代まで小型車の商業化に無関心であったことは、寡占企業の行動という見地から説明される。GM、フォード、クライスラーの各々は、そのうちの1社による小型車への積極的参入が、(N他社によるその分野への参入の引き金を引く<[独占(寡占)の崩壊を招く][3社の利益を縮小させる]は1点>)ことを認識していたようである。ビッグスリーは、当該セグメントは3社全ての利益を支えるほど十分に大きくないと思いこみ、さらに小型車が入手可能となれば自社の大型車の高価格・高利益が浸食されると思いこんだ。

出典:『現代アメリカ産業論』第4章132-133頁。

 

12.カッツとシャピロによると、“ひとりのユーザーがある財の消費から得る効用が、(Oその財を消費する他の主体の数<[他のユーザーの数]も可。>)とともに増加する”ならばネットワーク外部性が存在する。

出典:『現代アメリカ産業論』第5章157頁。このほか、授業で繰り返し強調。

 

13.静態的、動態的効率に関して、コンピュータハードウェア産業は近年十分な成果をあげてきた。最も重要なことは、新技術の開発と市場化、継続的な価格の低下が起こっていることである。しかし、成果の構図はPCのOSではあまり明確ではない。この分野ではマイクロソフトが、技術的に(Pもっとも進んでいるかどうかわからない<[もっとも進んでいるかどうかわからないMS-DOS(ウィンドウズ)]など、意味はあっているが対象を限定してしまった場合は1点。[もっとも進んでいるわけではない][優位でない]は1点。 [独占的なOSで]等は不可。>)一つのシステムで市場を支配してきたからである。ここに公共政策が近い将来において重要な役割を果たしうる領域がある。

出典:『現代アメリカ産業論』第5章173頁。

 

(11−13は同趣旨ならば可。意味内容が不足している場合は、程度に応じて1点か0点とする)

 

以上

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