2008年度「経済史入門」講義シラバス
今年度の経済史入門講義は小田中が担当します。じつは経済史入門を担当するのは久しぶりなので、ちょっと不安もありますが、せっかくなので色々とやってみながら、受講生諸君と一緒に勉強してゆきたいと思っています。基本ポリシーは「知らぬは一時の恥、聞かぬは一生の恥」、講義中に教師から質問されてわからないのは当然だけど、講義が全て終わったあとでも分からないのは残念、ということにしましょう。このシラバスでは、講義の基本的な形態、成績の評価方法、講義に対する皆さんの参加の方法、そして講義の進め方の概略について説明します。
【1】講義の基本的な形態
(1)進行方法
例年の傾向から予測して、200人程度が受講すると考えられます。それでも、なるべく双方向的な性格を持たせたい、継続的な学習を促したい、というぼくのわがままな願いから、次のような進行方法を採用します。
大体4回の講義からなるクール制を採ります。1クールは、第1回目と第2回目が講義(作業を含む)、第3回目が講義とミニットペーパー(講義終了時に提出してもらう意見、質問、要望、感想、批判、その他いいたいこと)作成提出、第4回目がミニットペーパーに対するコメントと復習、というサイクルになります。
また、掲示板を含むホームページを設けます。
(2)講義の履修
講義中に認められないことは、他の履修者に迷惑をかけるような講義に無関係な私語と電話の2点です。ともに、他の受講する皆さんに迷惑をかけるからです。この場合は即時に履修を放棄したとみなします。
逆に、欠席、遅刻、早退、飲食、着帽、メール、昼寝などは、周囲に迷惑をかけない限りかまいません。
また、講義中、オフィスアワー(12月までは文教研究棟7階727号室、1月からは経済学部棟5階508号室、水曜日12時〜13時)、掲示板、ミニットペーパーを利用した質問、批判、意見を歓迎します。
(3)講義の目的
この講義の基本的な目標は、次の3点です。
・経済史学とは何かを理解し、とりわけ隣接する経済学および歴史学ととりむすぶ関係を念頭におきつつ、それがどんな性格と背景を持っているかを学ぶこと。
・経済史を学ぶことに社会的な有用性はあるか、という問題を考えること。
・歴史上の出来事について学ぶことは本当に可能なのか、という問題を考えること。
(4)教科書
この講義の目的のうち「とりわけ隣接する経済学……ととりむすぶ関係を念頭におき」という部分以外をすべてカバーしていると(自分だけは思っている)教科書として、自分の本で恐縮ですが
・小田中直樹『歴史学ってなんだ?』(PHP研究所・PHP新書、2004)
を利用します。
残る「とりわけ隣接する経済学……ととりむすぶ関係を念頭におき」という部分については、参考書として
・岡崎哲二『経済史』(新世社、2005)
を挙げておきます。
大学生協文系書籍部にそろえておいてもらいますので、必要に応じて各自購入しておいてください。なお、前者は、授業中の作業で利用することがあるほか、最終試験に持ち込むことができます。
(5)その他
・シラバスをはじめとして、この講義に関する情報は、基本的にすべてウェブ上でも公表します。適宜チェックしておいてください。また、ウェブ上に講義用掲示板を設置します。休講その他の連絡には、基本的にこちらを利用しますので、こちらも適宜チェックしておいてください。
・質問がある場合は、遠慮なくメールや電話(022-795-6280)で寄せてください。なお12月末までは、経済学部棟耐震改修工事のため、研究室は文教研究棟727号室に仮住まいとなります。
・ミニットペーパー(記名式)を3回、授業評価アンケート(無記名式)を1回、提出してもらいます。これらの提出物の目標はぼくの授業の内容を改善することですから、いうまでもなく、内容は一切評価の対象にはしません。好きなことを書いてください。
【2】履修と成績評価
(1)履修要件
授業中の作業や、ミニットペーパーの提出など、それなりの参加を要する講義形態を採るため、ハードルが高いと感じられるかもしれませんから、予め履修要件を定めておきます。具体的には、
・第1クール第2回「経済史学と歴史学」(10月20日)終了時にレポート(内容は下記)を提出すること
をもとめます。
(2)成績評価
レポート提出(10点)、講義参加(30点)、最終試験(60点)を組み合わせて評価します。
(3)レポート(10点)
教科書『歴史学ってなんだ?』を課題文献とし、それを対象とする読書感想文を書いてください。書評はワープロで作成し、A4サイズの用紙に印刷してください。長さは1000字程度にし、冒頭に学籍番号と氏名を明記してください。これを提出することが履修の条件になります。また、提出した人全員に各10点を与えます。
読書感想文の提出の締切りは10月20日です。締切り日の講義の終了後に、その場でぼくが回収します。締切りを過ぎて提出されたものは受け付けないので、ご注意ください。
レポートの内容としては、課題文献の内容の要約、メリットの指摘、デメリットや疑問点の指摘、大切なポイントに関する自分なりの考察、まとめ、の5点が含まれていることを期待します。
なお、他人の文章を一行以上鍵カッコなしで引き写す「剽窃」は、発見したときは自動的に履修放棄とみなします。ぼくの経験では、これまで、大体2パーセント程度のレポートに剽窃がありました。剽窃はネット検索などの方法をもちいれば結構わかるものなので、厳に慎んでください。また、他の文献を鍵カッコ付きで引き写す「引用」は、全体の4分の1以内としてください。これをこえた場合は不合格にします。
(4)講義参加(30点)
参加点であって「出席点」でないことにご留意ください。先に「欠席、遅刻、早退は……構いません」と書いたように、出席は取りません。参加したか否かは、ミニットペーパーの提出で判断することにします。ミニットペーパーを提出する機会は3回あるので、一回提出すれば10点ということにします。なお、参加の確認に使用するため、ミニットペーパーには記名してもらわざるをえません。
(5)最終試験(60点)
最終試験は1月19日の講義時間中におこないます。試験時間は60分で、問題はその場で発表します。自筆ノートと教科書のみ、持込を認めます。なお、他人のノートのコピーはダメです。
試験は速攻で採点し、1月26日に返却してクレイムを受け付けます……が、履修者数が多かったら、ちょっと無理かもしれません。
【4】スケジュール概略
第1クール 経済史学とはなにか
第1回 オリエンテーション(10月6日)
はじめに/経済史学とはなにか/「バベルの塔」を読みとく(作業)/資料は読みとくものだ/シラバスの配布(講義のすすめかた)
第2回 経済史学と歴史学(10月20日)
はじめに/経済史学とはなにか(作業)/「経済史学務の定義・その1/経済史学と歴史学/おわりに/レポート(履修要件)提出
第3回 経済史学と経済学(10月27日)
はじめに/経済史学の定義・その2/経済史学と経済学/経済史学とはなにか/おわりに/第1回ミニットペーパー提出
第4回 反省会(11月10日)
ミニットペーパーに対する回答/復習
第2クール 経済史学の存在意義
第5回 経済史学はなにを問題にしてきたか(11月17日)
はじめに/近代人の形成//近代化/市民革命/おわりに
第6回 経済史学は役に立ってきたか(12月1日)
はじめに/産業革命の歴史を知ることは役に立つか(作業)/経済史学は役に立ってきたか/おわりに
第7回 経済史学は現実の役に立つか(12月8日)
はじめに/一般論/現在/おわりに/第2回ミニットペーパー提出
第8回 反省会(12月15日)
ミニットペーパーに対する回答/復習
第3クール:経済史学の存在可能性
第9回 経済史学は事実を明らかにできるか(12月22日)
はじめに/明治維新が存在したことを、どうやって証明するか(作業)/過去の事実は明らかにできるか/おわりに
第10回 事実を明らかにする手続きとは何か(1月5日)
はじめに/「ヒストリー」と「ストーリー」/過去の「真実」に接近することは集団的な作業である/おわりに/第3回ミニットペーパー提出
第11回 最終試験(1月19日)
・試験時間は60分
・直筆ノート(コピーはダメ)と教科書のみ持ち込み可
第12回 反省会(1月26日)
ミニットペーパーに対する回答/テストの返却/授業評価アンケート