2001年(平成/3年)8月9目木曜日 朝日新聞
中国・山西省の製鉄所のばい煙による大気汚染対策を研究している東北大学学際科学研究センターは7月下旬、訪中田(団長・大村泉東北大教授)を派遣し、公害対策について、中国の山西省政府や太原理工大学と共同研究することで合意した。交口の製鉄所で公害対策の技術指導をしている元岩手製鉄顧問の川原業三氏(72)も協力する予定で、宮学民が一体となった日中の共同プロジェクトとして注目されている。(朝日新聞アジアネットワーク高木和男)
訪中団は、東北大の高橋礼二郎助教授(冶金学)、伊藤豊彰助教授(土壌学)、川端整助教授(工業経済学)、明日香寿川助教授(国際政治学)、山形大の柳沢文孝助教授(環境化学)ら13人。
日本海側の各県で測定されている雨や粉じんに含まれている鉛や硫酸は、山西省など中国北部地域が汚染源と言われている。
共同会見した山西省榊政府の杜五安・副省長は「わが省は石炭や鉄鉱石などの地下資源が豊富で、製鉄業が盛んだが、大気汚染の主原因となっている小型高炉を廃止する方針を打ち出した。今後とも環境保全に努力したい。研究センターの皆さんからは先進技術の助言を受けたい」と話した。
大村団長は、公害対策について、「製鉄所で銑鉄とクリーンエネルギー(ガス)を同時に生産する溶融還元炉の導入が不可欠だ」と具体案を示した。また、明日香助教授は「学術交流を通じて、環境保全プロジェクトを推進すべきだ」と述べた。
会見に先立ち、訪中団は同省政府の環境保護局のメンバーと会談した。
東北大側が高炉やコークス炉の環境対策を尋ねたところ、同省側は「大気汚染が問題になっている旧式の小型高炉やコークス炉は廃止するよう指導しているが、地方の実情からまだ稼働申のものもある」と答えた。地方での公害対策は不十分で、ぜんそくなどの公害患者数も把握されていなかった。
高橋助教授は「豊當な地下資源を有効に使うことで、山西省をクリーンエネルギーの基地に発展させたい」と述べた。
地元の有力大学の太原理工大学とも、協力していくことになった。
高橋助教授が中心になって、溶融還元炉の導入に関する専門的な技術について、意見交換する。
酸性雨の汚染源について詳細な検討をするには測定データの拡充が必要になる。柳沢助教授は中国の成都に滞在し、太原理工大学と緊密に連絡を取り合いながら、測定データ収集を行う考えだ。
また、同大の研究者を来春から、東北大に招き、研究活動を進めていく予定だ。